第5話

『みぃ様。いつもスティックヒューマン・オンラインをプレイしていただきありがとうございます。今回、連絡をさせて頂いた旨は、この度、初の公式イベントのゲスト枠としてみぃ様他7名をお呼びしたいと考えております。もし、参加されるのであれば、当日泊まるホテルのチケットや、新幹線、又は飛行機代などの交通費などの打ち合わせなどをしたいと思っております。ぜひ、片割れのメリィ様とも相談した上で参加される旨と下記のURLから色々と入力してください。担当、神崎』


「あ、あわわわわ………」


 予想とは180°真逆……っていうより俺ゲスト枠!?


 スマホを持つ手がガタガタと震える。


「み、みぃくん!?大丈夫!?」


「お、おい!充!?そんなに震えて大丈夫ーーーーなにぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 俺のスマホを見た在原も俺と同じように声を上げる。だって信じられるか?俺がゲスト枠だぜ?


「……お、おおおおおう。大丈夫じゃないけど大丈夫だぜい……」


「矛盾!?すごい言葉が矛盾してるよ!」


 現実を受け止めることが出来ずにあわあわあわ……と呆けた口から何かが抜け出ていく感じがする。在原も同じ様子である。


「………もう!旦那様!しっかりして!」


「……!は、はい!しっかりしました!」


 ビシっ!と背筋を正してメリィちゃんの言葉の敬礼をして返す。


「……もう、学校で旦那様とか言うの、普通に恥ずかしいんだよ?周りに誰も居ないからいいけど……」


「はい。その……さーせん」


 ぺこりと、メリィちゃんはその場にいないが、スマホに向かって頭を下げる。ふぅ、たしかに、あまりにもびっくりしすぎて少し自分を見失いかけてたが、何とか戻ってこれた。


「それより、みぃくん。これ、どうするの?」


 これ、とは言わずもがなイベント出場のことについてだろう。


 そんなのもちろんーーーーー


「面白そうだから参加で」


「さすがみぃくん!」


 いやいや………こんの面白そうなイベント誰が見逃すかっての。しかも?これ俺チケット払わずに参加出来るわけでしょ?出場者としてだけど。


 その日の俺は、学校を早退した……ってか勝手に帰った。明日先生に怒られるかもしれないが、まぁこの学校は基本的にそこまで厳しくないので、在原に全て丸投げしてから帰宅した。


「充!お前ずりーぞ!」とか言ってたけどシルバさんの実写写真と引き換えに見逃してもらった。ここは俺に任せて先にいけだって。それ死亡フラグやん。


 と、言うことなので、在原がどんな言い訳をしたか知らんが、誰にも見つからないように裏門からササッと抜け出して帰宅。父さんと母さんは夕方まで帰ってこないので、俺が何時に帰ってこようがバレはしない。少し心が痛いが。


「………はいはい。いま帰宅しましたよー」


「私も、久々に全力疾走したからちょっと暑い……エアコンつけよ」


 メリィちゃんの方も今日は早退する……というより、今から早退しよう!との案はぶっちゃけメリィちゃんから出てきた。


「それじゃ、パソコンで顔写しながらやろっか」


「おっけー」


 一旦スマホの通話を切って、パソコンを立ちあげる。そしてパソコンのカメラ通話ができるアプリでメリィちゃんと繋げて………よし。


「わわっ……急に映るんだね、ちょっとびっくりしちゃった……」


 画面にはいつも通り綺麗なメリィちゃんが写っている。


「メリィちゃん」


「みぃくん………うぅ、なんか顔みたら現実で会いたくなってきたかも………」


 うっ……そう言われると俺もなんか会いたくなってきたんだが………。


 なんか悶々とした気持ちを抱えていると、メリィちゃんがちらりと横を見た。


「……まだ時間は1時過ぎ……うん、行ける……かな?」


「………え」


 ………まじ?メリィさんマジですか?


「……よし、みぃくん!今からそっち行くから!」


 と、一方的な宣言をしてからカメラ通話を切ってしまったメリィちゃん。そして、そのままコンマ1秒ほど泊を置いてから、体を自然と動き出した。


 ーーーと、とりあえず部屋の片付け!


 と、自分でもびっくりするほどの素晴らしいスピードで部屋を片付けていく。


 パパパッと片付けて制服を脱いで私服に着替える。メリィちゃんを迎えに行く準備だ。千葉から家の最寄り駅までにかかる時間は大体1時間程度。制服をシワにならなように丁寧にハンガーにかけてから、軽く髪をセットしてから家を出る。


 今、会いに行くぜマイスウィートハニー!!!


「みぃくん!」


「メリィちゃん!」


 目と目が合う瞬間にメリィちゃんが俺に引き寄せられるのように抱きついてくるので当然のように抱き返す。


 あぁこれこれ。なんかこのサイズ一番落ち着く。


「えへへ……来ちゃった」


「うん、俺もメリィちゃんと会えて嬉しいよ」


 と、今すぐにここでキスとかしたいけど、今はぐっと我慢。どうせ、家に行けばいくらでもイチャイチャできるからな。


「……なんか、学校ズル休みしてデートって……どこかのギャルゲーみたいだね」


「やめてあげなさい」


 あれそっちの界隈ではネタ扱いされてるんだから。まぁ俺は好きだけどね。


 後、あっちは朝から学校行ったけどその後なんも授業受けないでデートしてるから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る