4話

「あっ」


「えっ」


 次の日。シルバさんと一回だけ琥竜の雄叫びを潜った後、メリィちゃんといつものように狩りをしていたら、なんと明鏡さんがいた。


 いったいなぜこんな所にいるのだろうか。そんな疑問が思い浮かぶが、一瞬で理解した。多分、修理用アイテムの確保かな。


 現在、俺たちがいるマップは『龍骨の墓場』というスケルトンドラゴンという不死性アンデッドモンスターを狩っていた。理由は真祖の剣の耐久値を回復させるためである。


 スティックヒューマン・オンラインは珍しく、武器の耐久値というものが設定されており、それが無くなると装備できなくなるというデメリットが発生する。まぁ無くならないだけマシである。


 真祖の剣はユニークアイテム故に、耐久値も高く設定されているが、この前のなんか使徒の虐殺カタストロフという大層な名前が付けられたユグドラシル強襲イベントにて、かなりの敵を斬ったため、耐久値がごっそりと無くなっていた。昨日のダンジョン後に通知で真祖の剣が壊れましたって出てきた時にはビビった。


 なので、メリィちゃんにもそれを手伝ってもらっていたのだが、そこでハナミさんと出会ってしまった。


[ハナミ]『やぁみぃくん。メリィちゃん。この前ぶりだな』

[みぃ]『はい。そうですね、お久しぶりですハナミさん』

[メリィ]『お久しぶりです』


 ぺこりとついつい頭を下げてしまう。仕方なく無い?


[ハナミ]『君たちも修理用アイテムの確保かい?』

[みぃ]『はい。今回はメリィちゃんに手伝ってもらってます』

[メリィ]『結婚による効果でストレージ共通になったので効率二倍です!』


 いやぁこれホント便利。ユニークアイテム故にたくさんのアイテムが必要になるけど、この効果で倍の時間短縮が見込める。


 このままのペースで狩り続ければ、後10分ほどで終わるだろう。


[ハナミ]『もし良ければだが、私も君達のパーティーに入れてくれないかい?一人だと若干寂しくてね……』


「えっ」


 ついついリアルの方で素の反応が出てしまった。まじ?あの明鏡が寂しい……?


[みぃ]『もちろん!大歓迎です!』

[メリィ]『はい!断る理由なんてないです!』

[ハナミ]『そうか。ありがとう、二人とも』


 ピッと、パーティー申請が送られてきたので受諾。メリィちゃんのHPバーの上に、1つ追加されそこには『ハナミ』と表示されていた。


「……ねぇねぇみぃくん。これって夢?憧れのハナミさんと一緒のパーティー……」


「……いや、夢じゃないと思う。だってほっぺたほんなにほいふぁいんふぁから」


「………えっ?今なんて言ったのみぃくん……」


「ふぅ。やっぱり痛いな。現実だよここは」


「え?いったい何をしたのみぃくん?」


 そりゃあちょっくら全力でほっぺた伸ばしましたけど?


[ハナミ]『ところで、君たちは確かボイチャをしているのだろう?今もしているのかい?』

[みぃ]『はい、してますよ』


 ……?いったいなんのために聞いたのだろうか。


[ハナミ]『それはゲーム内ボイチャ?』

[メリィ]『今はゲーム内ですね。偶にはL○NEでもしますけど』

[ハナミ]『ふむ………』


 意図が全く読めないのだが。いったい何を目的にそんなことを聞くのだろーーーーー


[ハナミ]『君たちさえ良ければ、私も会話に混ぜてもらっていいかな』


 ーーーーうか………ん?


「「ええええええええ!?」」


 俺とメリィちゃんが同タイミングで立ち上がる(雰囲気)がした。


 え?ハナミさんが俺たちのボイチャに?


「どっどどどどうしよう!みぃくん!」


「もももももももちつけ!とにかく!返信を………」


 チャット欄では暫く反応がない俺たちを不審がって『ふむ、もしかしてダメなのかな……』と、心做しか何やら残念そうな感じを出している。


 ……え?なんか可愛い…じゃなくて!


[みぃ]『すいません。ちょっと取り乱してました』

[ハナミ]『取り乱し……何故?』

[メリィ]『憧れのハナミさんと通話できると思うとドキがムネムネしてくるからです』

[ハナミ]『ドキがムネムネ……?逆ではないか?普通』


 ハナミさん。ネタというものがあるのですよ。てかなんでこんな慌ててるのにネタぶっこむ余裕があるの。


[ハナミ]『とりあえず、OKということでいいのかな?』

[みぃ]『OKです!』

[メリィ]『ぜひぜひ!私達の会話で良ければ!』

[ハナミ]『フフ……ならお邪魔しようか』


 そして、ハナミさんのとこにあるスピーカーにバツが着いているアイコンから、バツが消え、少しばかり色が白くなりーーーー


「……あー…あー……もしもし、聞こえるかな?」


 ーーーーハナミさんの可愛らしい声が聞こえてきた。


 ……そっか。ハナミさん女の人だったんだな。名前からしてそうかな?と思ってはいたけど。


「き、聞こえます!大丈夫です!」


「おや……この声はみぃくんかな?」


「は、はい!みぃです!」


 やば!なんか名前呼ばれるのめちゃくちゃ嬉しい!


「フフ……中々みぃくんはカッコイイ声をしているな。実に私好みだ」


「~~~~~~っっ!!」←声にならない叫び


「きゃっ……大丈夫か?何か物が倒れる音がしたが………」


 大丈夫です。俺の心は大丈夫じゃないですけど。


「こ、こんにちは!ハナミさん!メリィです!」


「お、君がメリィちゃんか。名前の通りに中々可愛らしい声をしているな」


「~~~~~~っ!!」←声にならない叫び


「きゃっ………大丈夫?また何か倒れる音がしたけど」


 多分大丈夫です。メリィちゃんも今、俺と似たような状況に陥ってますから。


 あれだな。推しに名前を呼ばれた時と同じだよな、うん。え?名前呼ばれると嬉しくない?


 ふぅ……だいぶ落ち着いた。とりあえず、俺も褒めとこ。


「ハナミさんも。名前からしてわかる通りに、綺麗な声をしていますね」


「……そ、そうか?……ふふっ……ありがとう、みぃくん」


 どうやらハナミさんの可愛さが天元突破していたようだ。


 無事、俺は2回目の死亡を確認した。ハナミさん……メリィちゃんと同じくらい可愛いのだが……。


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