3話

「左!」


「了解!」


 現在、白鯨の居城第四面ボスである『エコードルフィン』という、ポ○モンのバ○オングみたいな戦い方をしてくるイルカと戦っている。


 イルカって肺呼吸だから口から音の衝撃が飛んでくるからやりにくい。しかもここ水中ステージだから魔法が飛びにくい!


 ほんと、シルバさんがいて良かった。まともに機能してるのあの人だけだから。


 コマンドを入力して魔法『ショックウェーブ』を繰り出す。衝撃波が水を伝ってイルカへ当たるがそんなにダメージは喰らってない。


「あぁ!剣使いたい!」


「だめだめ!みぃくん!補助ないと私死んじゃう!」


「分かってる!メリィちゃんだけは死なせない!」


 在原が犠牲になるかもしれんが許せ!後で『レイズデッド』で生き返らせてやるから。


「「あ」」


 とか思ってる間にウレのHPバーがゼロになって瀕死になった。


[ウレ]『すまん!みぃ、蘇生!』

[みぃ]『ごめん今無理』

[ウレ]『ダニィ!』


 あいつ意外と余裕だな。レベル足りねぇから死ぬんだよ。


 エコードルフィンのレベルは350。シルバさんが164で、俺とメリィちゃんが160にこの前なったばかり。ウレは130だった。


[シルバ]『俺が20秒稼ぐ。みぃはその間に弟子の蘇生を!』


 そして、シルバさんがムラマサを抜いて突貫していった。ユニークアイテムである『妖刀ムラマサ』の特殊能力は斬撃を喰らわせる度にデバフ効果が沢山つくことだな。効果時間は短いが、それでも充分に強力だ。


 その間にエーテルを使って魔力を回復させてからレイズデッド。選択対象をウレに設定してから発動。体力が満タンとなったウレが復活した。


[ウレ]『俺、復活!やってやるぜ!』


 パリィィィン!


[シルバ]『あ』


「あっ」


「あ」


[ウレ]『……あれぇ?』


 ……ん?エコードルフィンのHP残り半分くらいあったよね?


 俺が何故?どうして?と頭に浮かべていると


「あはは……ごめんね、みぃくん」


 と、耳元から聞こえる。チャット欄では『弟子、すまん』とシルバさんが謝っていた。


 一体なぜーーーーあ。


 よく見ると、メリィちゃんの腕には盾ではなく、槍が装備されていた。


「………そっかぁ」


 メリィちゃんが装備していたのはユニークアイテムの『異界の槍』。デバフ攻撃大好き星人の巨大グレイ星人が持っていた槍。特殊能力は相手がデバフ時に攻撃力二倍………相性完璧じゃん。そりゃあHP削りきれるよ。


 なんだか変な雰囲気のまま最終面の白鯨の元へ向かう。


 特殊ギミックで弱体化などは一切無し。海底洞窟から陸地に上がると、白鯨の居城が姿を現し、空を飛んでいる白鯨が吠えて戦闘に移る。


 今回は俺も真祖の剣を持って全力攻撃。この剣はダメージを与える度に攻撃力が高くなり、最終的にどのユニークアイテムよりも攻撃力が高くなる代物だ。


 シルバさんが切り込み、デバフを付ける。その間に俺とメリィちゃんが攻撃を仕掛けていく。ウレは俺の代わりに後衛職をやってくれている。さっき死んだから交替!とのシルバさんの指示だった。


[ウレ]『ちくしょーー!!俺は後衛は苦手だー!!』


 とか何とか言いつつしっかりとバフ魔法をかけていく。なんだったらあいつは後衛の方が向いてるからな。本人がやりたがらないからやらせてないけど。


 シルバさんが思いっきり斬りあげて残りHPが残り5割を切った。今の白鯨になら俺とメリィちゃんの連携でも削りきれる。


「3!」


「っ!了解!」


 シルバさんの横を通り抜けユニークアイテム限定スキル『ブラッディクロス』というエックス型に赤の血が付着するというちょっとグロい技を出す。


「みぃくんごめん、6!」


「……!」


 この指示は削りきれないから何とかして!というアレだった。ということなので、折角なので奥義を使うことにします。


 真祖の剣がさらに紅く、血のように煌めき出す。そしてカットイン!邪魔!


 棒人間のカットインとか別にカッコよくないから!多分カッコつけてると思うけど、君!何も描かれてないよ!


『ブラッディストライク』。単発技だが、威力がクソ高い。この連携で白鯨のHPは3割程度だ。この技なら削りきれる!


 紅い閃光が煌めき、突きの一閃。


「「……あっ」」


 俺とメリィちゃんが同時に声を出す。俺が攻撃を出す前に、なんとシルバさんのデバフが切れてしまい、微妙に残ってしまった。


 俺とメリィちゃんは硬直で動けない。このままだと白鯨にぶっ飛ばされてそのまま死亡ーーーーー


[シルバ]『見とれている場合ではなかったな!』


 あ、そうだった。今回四人パーティーだったな。熱くなりすぎてあと二人いること忘れていた。


 居合切り。シンプル故に最強の一太刀。高速で放たれた斬撃は、見事に白鯨のHPを散らし、白鯨はポリゴンの塊となって、0と1の波に消える。


[シルバ]『みんな、お疲れ様』


 とチャットでシルバさんが言い、エモートでグッ!とサムズアップする。棒人間だから立てる指ないけど。


 普通のゲーマーならここで喜ぶ筈なのだが、俺とメリィちゃんは素直に喜べないでいた。なぜならーーーー


((………ラ、ラストアタック持ってかれたー!!))


 ラストアタックボーナスと言い、ボスに最後トドメを刺したプレイヤーに与えられるドロップボーナスというレアドロップが普段1パーセントとかいう確率を80パーセントまで引き上げてくれるものがある。


 ……ま、いっか。そもそもシルバさん達いなかったらここにそもそも潜れてないしな。


「あーあ。持ってかれちゃったね」


「ま、仕方ないさ。俺達が状況を見誤ったのが原因だ」


 ここ、今後の課題にしよう。これで、俺たちの連携はさらにレベルアップするな。


 ログを整理しながら、入口に転移したのだった。


[シルバ]『今更気づいたが、ラストアタックもらって済まなかったな』

[みぃ]『気にしないでください。状況を見誤った俺のせいです』

[メリィ]『そうです。みぃくんのせいうんぬんは抜きにして気にしないでください』

[ウレ]『師匠!流石でした!』

[シルバ]『あぁ、三人ともありがとう』


 そして、今日はこれで解散した。後ほどツイッテーを見たらシルバさんにフォローされていたので、フォロー返しておいた。


 シルバさん、ツイッテーしていたのか。

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