第12話
「……さて、メリィくん。今日はいよいよ『棒の花嫁』のラストクエストだ」
「はっ。みぃくん大佐」
日曜日。
………いやぁ……うん、凄かったなぁ。
パーティー事に貢献度的なものがあって、どのパーティーが敵全体の何割倒しましたよ的なものがあるんだけど……。
参加パーティー数は12、計96人のスティックゲーマーがイベントへ参加したーーーはずなんだが。
ハナミさんが「じゃあ全員ユニークね」という一言がきっかけで、やばいことが起きた。
『明鏡 ハナミ』の持つ千本桜、『一刀 シルバ』の持つ妖刀ムラマサ、『流星 スピカ』の持つ神龍の細剣、『要塞 ゴラン』の持つアイギスの盾、『聖剣 カリン』の持つエクスカリバー、『賢者 アラン』の持つケーリュケイオン、『双棒 メリィ』の持つ異界の槍、そして最後に俺の真祖の剣。
……うん、地獄絵図。ユニークアイテムはただでさえ強力なのに、それが全部合わさったらとんでもないことになるに決まっているだろう?
結果、終わった頃には貢献度70パーセントとか訳分からん数字になってました。
して、気を取り直して『棒の花嫁』のクエストに戻ろうか。
これが終わったら……俺、メリィちゃんにプロポーズするんだ………あ、死亡フラグとかじゃないから。死んでも死ぬのは棒人間だから。
後、プロポーズもゲーム内だからな!そりゃ……まぁ将来的に?そうなる関係になりたいなぁとは思う訳でして……。
……うん、まぁいい!とにかく俺は!クエストをクリアすればいいんです!
『おお!冒険者様!花嫁の衣装、出来上がっておりますぞ!』
アイテム名、花嫁の衣装をゲットした。これで、残りは誓約の指輪のみだな。
『……最後の指輪なのですが、冒険者様、この教会、実は地下にダンジョンがあるのは知っていましたでしょうか』
「…………なに?」
「え、ダンジョン……」
あ、ちなみにメリィちゃんは今俺のプレイ画面見てる。簡単に言ったらとあるFPSゲーで死んだら相手の目線見れるでしょ?あれ。我ながらわかりやすい説明をしたものだ。
しかし……教会にダンジョン?そんなの今までアプデ報告でそんなのはなかったはずなのだが。
『厳密に言えば、ダンジョンでは無いのですが、この地下にとても厄介なものが潜んでいまして』
『それがどうも、なにやら貴金属が大好物らしく、この街の宝石商が狙われる事件が起きているのです』
『それを倒し、また、盗まれたものを奪還すればなんでも1つ欲しいものが貰えるみたいです』
そしてラストクエスト。地下に潜むものが開始された。
『準備が出来たら私にお声かけください。案内致します』
「……ふぅむ」
一旦コントローラーから手を離して考え込む。貴金属を好んで集めるボスに一体心当たりがある。
「……ねぇみぃくん。多分ボスって……」
「分かってる。だが確証がない」
もし、思い浮かべているあいつなら、きっと俺にとっては超不利になるかもしれん。
第2弾アップデート『神話の幕開け』のラストコンテンツボス『ファフニール』。金属、特に光るものが大好きで、確か奴はねぐらに沢山宝石や金属を溜め込んでいた。
奴は金属を盗む際に、ドワーフという身長が小さくて力が強い種族に化けて盗みを働くため、確か、あの時は指名手配されてたっけ。
そして、1度倒してから奴は姿を消したことになっているが、偶にレイドイベントで出る。消えたのはストーリー上ではってことね。
そんなファフニールだが、奴は防御力がめちゃくそ硬い。今の俺には真祖の剣があるが、琥竜の杖の方はあんまし役に立たないだろう。
……とりあえずやるか。そう心に決めて、俺は司祭に話しかけた。
結果から言うと、楽勝だった。確かに教会の地下深くにいたのはファフニールで、見た時は結構な長期戦を予測していたのだが、なんか思ってたより弱体化されててスパンスパン削れたため、戦闘時間3分程度だった。
戻ると、司祭と宝石商の人がいて、めちゃくちゃ感謝されて、司祭の人が結婚のことについて話すと、お礼に我が商会1の指輪をお渡ししましょう!とか流れになって誓約の指輪を貰った。
『冒険者様。是非結婚式をあげることになれば、教会をお使いくださいませ。特別に無料で式を開きます』
『Congratulations!!』の文字がドデカく映り、新コンテンツ結婚が利用できるようになりましたの知らせが届いた。
これでクエストクリア。晴れて俺は結婚のコンテンツを利用できるようになったのだが………。
「「………………」」
き、気まずい……!!プレイヤーホームにまで戻ってきたのはいいものの、なんて言って渡そうか……!
始まる前はあんなに意気込んでたのに、この場面でなんでひよるんだ俺ぇぇぇぇ!!
静寂すぎてヘッドホン越しからカチカチと時計の音が聞こえる気がする。
勇気を出せ……メリィちゃんは待ってくれてるんだ!ここで男を見せなきゃいつ見せるって言うんだ!
大きく息を吸う。
「……メリィちゃん!」
「……はい」
「俺と………結婚してください!!」
独特な言い回しとか、ただの高校二年生になんて思いつかない。ただただ愚直で、ストレートに想いを告げる。
「……はい、みぃくん!」
「……いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
椅子から勢いよく立ち上がってガッツポーズ。座ってたイスが後ろへ倒れた。
「あの………プロポーズしてくれてありがとうございます……旦那様」
「グハァ!!」
吐血した。
プレイヤー全員に、システムメッセージが届く。
『この後16時00分よりプレイヤーみぃとプレイヤーメリィの結婚式を開始します。ご興味のある方は是非ご参列ください』
参列者には
そして、口々に言った。
『感動したけど棒人間だからイマイチだったと』
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これにて第一章『声しか知らないお嫁さん』は終わりです。
次からは第二章『声も知ってるお嫁さん』になります。お楽しみに!
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