第10話

「北にある洞窟……まぁ時期とタイミング考えれば鋼の雪原のダンジョンであることは間違いなし」


「うーん……でもみぃくん。洞窟たくさんあるよ?」


「そうなんだよなぁ……まぁ近づけばクエストマーク出てるから分かるんだけど」


 それでも外れたら無駄足なのでめんどくさい。せめて少しでも情報とか欲しいし。


 鋼の雪原にあるダンジョンは全部で五つ。『精霊の住処』『雪人の洞穴』『氷塊の奥底』『氷の迷宮』『古代龍の祭壇』である。


 その中で洞窟系のダンジョンは『精霊の住処』と『雪人の洞穴』のどっちか。場所が正反対にあるので、ある程度の目星を付けたい、


 さてさて、困った時の頼むぞ2○ゃん!


 252.そこら辺の棒人間

 新ダンジョン五つ攻略完了したけど情報いる?


 253.そこら辺の棒人間

 252<<はい有能


 254.そこら辺の棒人間

 252<<教えてくれると助かる


 255.そこら辺の棒人間

 分かった。なら簡潔に示すな


 256.そこら辺の棒人間

 おい、情報書くやつ以外書き込み禁止な



 はや。既に全てのダンジョン攻略か。かなりの実力者だなコレ。『古代龍の祭壇』の攻略適正レベルは運営発表で確かレベル95だったはずだ。


 264.そこら辺の棒人間

 そういえば、精霊の住処奥にたくさん花咲いてたけど、誰か使い道知らん?


 ビンゴ。


 精霊の住処。難易度ノーマル、攻略適正レベルは30。ソロで行く場合は50。精霊と名につくだけあって、敵のほとんどは精神系スピリットの精霊達。アイスエレメンタルは既存敵だが、環境で強化されているらしい。


「メリィちゃん、場所分かったよ」


「ほんと?」


「うん、精霊の住処だって。簡単そうだからちょっとサクッと燃やしてくる」


「手伝いは?」


「大丈夫。ソロクエって書いてあるぐらいだから、多分一人で行かないとドロップか採取できない。メリィちゃんは応援してくれるだけでいいよ」


 俺、それだけで元気100倍棒人間だから。


「……うん、分かった!なら応援してるね!みぃくん!」


「うん、ありがとうメリィちゃん」


 まぁ殆ど一撃で沈むと思いますが。





 20分後。ダンジョンボスである氷の精霊の親玉である『セルシウス』を倒す。やはりパワーでゴリ押しだったな。品の欠けらも無い。


 本来なら、ログが消えたあとは、自動的に入口に戻されるのだが、システムメッセージで『おや……何か奥にあるようだ』と出てきて、暫くすると、『目的の花を見つけた!』と出てきて、アイテム名が表示された。


『アルストロの花』。クエストのキーアイテムだった。


 それを手に入れたら、ダンジョン入口に転移した。


「……いやぁ今回も見事な大虐殺ジェノサイド……見てるこっちが可哀想になってきた」


「……まぁ1番弱い火炎ファイアでも死ぬし……」


 弱点をしっかりとついているため、ほぼ一撃。セルシウスも吹き上がるマグマイラプションで一発退場でしたし。


「……しかし、アルストロの花か……元の花は絶対にアルストロメリアだろうな」


 名前からして絶対そうだし。


「みぃくん、お花詳しいの?」


「一時期花言葉にハマってた時期があって……」


 まぁもちろん理由は言えませんけどね。


「アルストロメリアの花言葉は『未来への憧れ』、『エキゾチック』、『幸せな日々』。まぁマイナーだけど、現実世界の方でも十分プロポーズに使われる花だね」


 ちなみに、1番『は?』って思った花言葉はゼブリナっていうツユクサの仲間で、ゼブラ模様の薄紫色の小さな花を咲かせる植物があるんだけど、『尊敬しているが恋愛ではない』というのだが……まじで訳分からんかった。


「へぇ……みぃくん物知りだね」


「昔とった杵柄ってやつだよ」


 理由は言えないですけどね!


 転移のコマンドでユグドラシルへ転移し、教会へ向かって、クエスト完了の報告をする。


『おお……!正しくアルストロの花!冒険者様、ありがとうございます!準備にまた一日ほどかかるので、また明日お越しください!』


 司祭との話が終わると同時に、ユグドラシルの街中にどデカい警報が流れると同時に、『WARNING!!』という文字でとてつもない危険色が画面を埋めつくした。


「え!なになに!?」


 耳元でメリィちゃんの慌てた声が聞こえるが、俺もめちゃくちゃ慌てた。


『街強襲イベント、ユグドラシルを襲う影』


 ……いや、なになに?街強襲イベントってなに!?チャット欄もものすごい『!?』と『え?』で素晴らしい速度で下から上へと流れていく。


 警告が消えると、チュートリアルが画面に出てきた。


 内容はこうだった。


 第五弾大型アップデート新コンテンツ、『街強襲イベント』。不定期で街に大量のモンスターとボスモンスターが街を襲いに来るという、運営が俺たちをびっくりさせたいがために、情報を伏せていた隠し新コンテンツ。


 初である八人パーティを組んで街を守ろう!というミッションだった。


 画面の右下にごめんね?と棒人間が頭を下げている絵があった。若干イラついた。


 10秒後、強制転移します。のシステムメッセージが出てきた。


「え!?ほんとになに!?私まだ状況理解できないんだけど!」


「俺も若干困惑してるが………なんかすげぇ!面白そう!」


「それは分かるー!」


 流石エンターテインメント性に溢れた運営!俺たちを期待させる天才か!




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 アルストロの花

 スティックヒューマン・オンラインオリジナルアイテム。元花はアルストロメリア。

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