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 自分の部屋がこんなにも寂しいと感じたことは、きっと今までなかった。

 勇次の宣言があったからだろうか、家に帰ってからもずっとさとりのことを考えている。

さとりには打算が確かにあっただろう。さとりが夏生に恋心を抱いてはいないことはわかっていた。自分はさとりにとって都合がいいところにいたことも知っているし、春が言った通り心のどこかでさとりの言葉や行動を苦しく思っていたことも事実だ。

 でもそれだけでないこともまた確かで、事実、こうして部屋に一人でいると寂しさを覚える。誰かと過ごした時間を心地良く感じていた。

 恐怖や罪悪感で否定していても、夏生も求めていたのだ、家族というものを。

 だからこんなにも一人の部屋が寂しく感じる。

 ずっと家族への想いを押し殺して、気づかないフリをして生きてきた。

 一人でも平気だと、自分は一人でいるべきだと。

 でもその押し殺してきた気持ちはさとりと接することで少しずつ崩れた。

 さとりは確かに夏生に恋心を抱いていたわけではないし、恋心から家族になりたいと言っていたわけではない。でも彼女の家族を求める気持ちは本物で、その気持ちが本物だからこそ夏生も自分で押し殺してきた気持ちを認めざるを得なくなった。

 ・・・・・・いや、そうじゃない。

 自分が本当に求めていたものに気づいたのだ。

 そして気づかせたのはさとりだ。

「・・・・・・崎森」

 ベッドの上に放り投げてあったスマホを手に取り、夏生は教えられていた番号へとコールした。

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