3-6
「・・・・・・ただいま、真一郎さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」
一日ぶりの会話は、たったそれだけで終わりを迎えた。
一晩外泊したことについて、説教もなければ心配もなく、まるで関心がない義父の言葉を聞いてさとりは部屋に戻った。
こうなることはわかっていたことだ。
義父は、真一郎はさとりのことを心配したりなどしない。ただ同じ屋根の下で生活するだけの他人。この関係は、たった一晩、外泊しただけでは変わらない。そもそも外泊についてなにか言われるのなら、昨日メールを入れた時点でなにかしらあったはずだ。しかしメールの返事はなく、結局それが二人の関係性を如実に示している。
暗い部屋。電気も点けずに着替えを済ませるとそのままベッドに潜り込む。
目を閉じて思い返されるのはもちろん昨晩のことだ。
今までの家庭環境上、ああして楽しくゲームして夜を過ごすことなんてなかった。夕食を誰かのために作って一緒に食べたのも初めてだった。
そしてそれらを思い出すと、どうしても今の自分との比較をしてしまう。
明るく楽しい他人の家と。
暗くて寒い自分の家。
どうしてこうも違うのだろう。
いったいどこで間違ったのだろう。
いったいなにが間違ったのだろう。
「どうして・・・・・・なにが・・・・・・っ」
その問いかけには当然、誰の返答もない。
ただただ悲しく、ただただ空しく、ただただ寂しく、暗い部屋の中で消えていった。
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