第15話 出発
翌日、集合場所でメンバーと落ち合う。
「来たか。待ってたぞ」
集合場所である町の門前には、クロイスをはじめとした五人の冒険者が待っていた。
「遅れたかな?」
「いや、時間通りだ。こいつらに早く行こうと急かされてな」
クロイスはそう言って後ろにいたパーティーメンバーらしき二人の冒険者の方に視線をやる。
どちらも初めて見る顔だ。
「ナナさん、はじめまして!ミランダといいます。一応、魔法術士です。よろしくお願いします!」
「俺はロイド。重戦士をやっている。今日はよろしく頼む」
二人は私に礼儀正しく挨拶をしてくる。
《黒猫の集会》にもまともな人がいるみたいで安心したよ。
「こちらこそよろしく。私はナナ。急にこのパーティーに入る事になったけど、これからよろしくね」
「はい!」
「ああ、歓迎する」
二人は笑顔でそう言い、私を受け入れてくれた。
一人は魔法術士のミランダという女の子。
歳は今の私と同じか、少し下くらいの背が小さくて可愛い女の子だ。
なぜか最初から高感度が高そうだし、仲良くなれそうな気がする。
もう一人はミランダとは対照的に背の高い、ロイドという重戦士の男性冒険者。
メイン武器は両手斧みたいで、おそらくこのパーティーのメインアタッカーだろう。
歳はクロイスやファイと同じ十代後半といったところ。
全身に纏う引き締まった筋肉とは裏腹に、とても優しそうな表情をする好青年だ。
「それじゃあ、俺たちも自己紹介しておくか。そう言えばまだちゃんと名乗っていなかったからな」
「ああ、そう言えばそうか」
「そうだったわね」
私がこの世界に来て、最初に出会った冒険者三人。
確かに冒険者ギルドで会った時にはお互いに自己紹介のようなものはしてなかったね。
「俺はクロイス。双剣使いだ。一応この《黒猫の集会》のリーダーをやっている」
「守護戦士のファイだ」
「私は盗賊のマリよ」
「ナナです。これからお世話になります」
この三人とは面識があるので、とても簡単な挨拶だけど、こうして《黒猫の集会》に入ったんだし、改めてきちんと自己紹介をしておくのは良いことだ。
「で、今回はローブを用意して来たのか」
ローブ姿の私を見たクロイスが意外そうな顔をして声をかけて来る。
「ナナの事だからもっと前衛寄りの装備をしてくると思ったよ」
「まあ、本当は丈夫な皮鎧あたりを買おうと思ってたんだけどね。気のいい店主さんが余り物だからって譲ってくれたんだよ」
「あ、もしかしてあの裏通りの武具屋か?」
「うん、そうだけど?知ってるの?」
「ああ。あそこは俺たちが贔屓にしている武具屋でな。凄く店主さんがいい人なんだ。俺たちみんな足を向けて眠れないくらいにはな」
「へえ」
わかる。あんないい人はそうそういない。
多分、私以外の新人冒険者にも同じような事をしてるんだろう。
「で、その剣はなんだ?それもあの爺さんに?」
「ううん、これはもともと持ってたやつだよ」
今、私の腰に携えている剣は武具屋で貰った業物ではなく、初期装備の剣だ。
鞘の中には刀身の真ん中から上がない、折れた剣が収まっている。
さすがにあの業物をひけらかして歩くわけにもいかないし、かといって手ぶらで討伐というわけにもいかないので、こんなことになっている。
まあ、今回はヒーラーとして行くんだし、使う場面はないだろう。
「まったく。ヒーラーの装備と言えば杖か短剣あたりだろうに」
「私は魔法剣士だからね」
「はいはい。まあ、ローブを着てるだけマシか。それじゃあ行こうか」
そんなやり取りの後、私たちはヒポガント討伐に向けて町を出発した。
強くてニューゲーム! ナナ @77nana77
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