第14話 初心者装備(2)

「でも、ヒーラーだから守ってもらって当然、とか思うのはどうかと思うんだよね。少なくとも私はそういうのはいやかな」


 ゲーム時代でも、守ってもらう前提でかなり適当なプレイをするヒーラーはいた。

 大抵そういうのに限ってヘイト管理が下手で、真っ先に死んじゃうんだよね。

 それで、ちゃんと守ってくれとか文句を言ってくるんだから目も当てられない。

 そんなヒーラーにはなりたくないね。


「ハハハハ!!!」


 私の言葉を聞いて、店主の老人が突然大きな声で笑い出した。

 え?なに、

 私、変な事言った??


「いやいやすまん。そうだな。まったくそのとおりだ。しかしお嬢ちゃんの年齢や境遇から考えれば多少は甘えてもいいとは思うが、なんと立派なことか。他の回復術士に聞かせてやりたいもんじゃ」


 まあ、そもそもヒーラーに強さを求める方がおかしいからね。どちらかといえば私がおかしいんだし。


「それに、実は私は回復術士じゃなくて魔法剣士だからね。ほら」


 ギルドカードを見せる。


「・・・ぶわっはっはっは!こりゃ傑作じゃ!いやいや、馬鹿にしてるんじゃないぞ。そうかそうか、是非とも立派な魔法剣士になってくれ。きっとお前さんならなれるだろう。いや、おそらくお前さんのようなものにしかなれんだろうな」


 間違いなく夢見がちな子供だと思われてるね。

 でも、本当に応援してくれているのはわかる。


「ならばお嬢ちゃんにはとっておきの物をやろう。ちょっと待っておれ」

「え、いや・・・」


 またなんかもらう流れになってない?

 どうしてこうなった?


 しばらくすると店の奥から店主の老人が何かを持って戻ってきた。

 持って来たのは一振りの剣。見るからに業物だ。


「これを持っていけ」

「いやいやいや!流石にこれはダメだよ!」

「もともと売り物ではない。気にするな、と言ってもお嬢ちゃんは受け取らないか」


 そりゃそうだよ。

 こんな凄いもの受け取れるわけないよ。

 思わず鑑定してみたら凄かった。

 ゲーム時代のレア武器に比べれば全然大したものじゃないけど、駆け出し冒険者なんかが持つようなものじゃない。

 それこそベテランの冒険者がメイン武器として持つくらいの性能はある。

 もちろん全ジョブをカンストしている私なら使いこなせるけど、今の私は駆け出し冒険者ってことになっている。さすがにこれを使うのはまずい。


「ならば貸し出すというのではどうだ」

「貸し出す??」

「お嬢ちゃんがここに来たという事は、おそらくあの魔物の討伐に行くためなんじゃろう?ならばその時に持って行けばいい。まあ、使う場面はないと思うが、あって困るという事もなかろう」

「まあ、そりゃそうだけど・・・」

「それで討伐が終わったら返しに来てくれればいい。

 お嬢ちゃんの見立て通り、それはなかなかの業物だ。もしお嬢ちゃんが死んだりして返してもらえなくなると、ワシは困るかもしれんからな。必ず返しに来てくれるのならばそれでいい。もちろん、お嬢ちゃんが直接、五体満足で返しに来るのが条件じゃがな」


 なら最初から貸さなければいいんじゃ?なんて野暮な事は言わない。


「わかった。じゃあ少しだけ借りるね」

「ああ。無事に戻って来るんじゃぞ」


 そうして私はローブと業物の剣を手に、店を出た。

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