第13話 初心者装備(1)
次の日、私は装備品を揃えるのも兼ねて、町を散策する事にした。
今頃はギルマスが頭を抱えながら私の事を領主様にどう説明しようか悩んでいるところだろう。
私の素性は正直に言ったんだし、上手くやってほしいと思う。がんばれ!ギルマス!
「ここ、武具店かな?」
町の散策をしていると、一軒の武具店らしき店を見つけた。
あんまり儲かってそうには見えないけど、初心者装備を揃えるなら丁度いいかも。
何しろ、手持ちの装備はとてもじゃないけど高級過ぎて使えない。
なので、駆け出し冒険者が持っていても違和感のないような、それなりの物を買うつもりだ。
この世界に来た時にレア系アイテムは全て換金されていたおかげで、お金には困っていない。
まあ、元からあったお金でも十分あったけど。
店に入るといろんな武器や防具が並んでいた。
お金があるとはいえ、高価な装備を買う訳にもいかないので、見た目がそれっぽい物を物色する。
そもそも、私は全ジョブレベルカンストをしているので、防具なしでも他のパーティーメンバーよりもよっぽど硬いはずだ。
少なくともこれから討伐に行く魔物に傷を負わされる事はないので、正直どれでもいいと言えばどれでもいい。見た目重視だ。
「おや、お嬢ちゃん。こんな所に何の用かな?ここは冒険者用の装備品を扱う所じゃぞ」
店の中をウロウロしていると、店主と思われる一人の老人がカウンターの中から声をかけてきた。
「うん、こう見えても一応冒険者だからね。まあ、昨日なったばっかりなんだけど」
「ほう。もしかしてお嬢ちゃん、黒猫んとこに入った回復術士かい?」
「知ってるの?」
正確には回復術士じゃなくて魔法剣士だけどね。
私の事を知っているって事は、昨日、怪我を負った冒険者が私のヒールで助かったってことが広がっているのかな。
「小さな町だからな。回復魔法を使える幼い少女の冒険者が現れたとなれば、そんな話題はあっという間に広がるさ」
なるほど。
ギルマスがその日のうちに手を打とうとした理由がよくわかる。
「ならそうだな、これを持っていけ。そんな装備じゃ心許ないだろう。冒険者になったお祝いだ」
そう言って店主の老人は一着のローブを手渡して来た。
「え?」
「店の余り物だ。もっといいものが欲しければ強くなって稼いでからうちで買ってくれればいい」
それって、タダでくれるって事だよね。
でも、どうして?
「あの黒猫のパーティーに入ったって事は、お嬢ちゃんもいろいろと訳ありな身の上なんじゃろ?しかもこんなに小さな女の子が冒険者にならないといけないくらいの」
なるほど。親切心のようだ。いい人だな。
でも本当はローブじゃなくて皮鎧みたいなのが欲しかったんだけど、さすがに言い出せないよね。
「ありがとう。大事に使わせてもらうね。でも、さすがに悪いから武器だけは自分で買わせて」
「武器?まあ、確かに丸腰というわけにはいかないか。余り物の杖くらいなら譲ってやるが?」
さすがに武器までもらうのは悪い。
それに、欲しい武器は杖じゃないしね。
「さすがにいくらなんでも悪いよ。それに、私が欲しいのは剣だから」
「剣?なんでヒーラーのお嬢ちゃんが剣なんて必要なんじゃ?」
「うーん、剣も使えるようになりたいからとか?」
「いやいや、パーティーを組んでいるのならメンバーが守ってくれるじゃろ。回復術士が多少剣を使えてもあまり意味がないと思うが」
まあ、そうだよね。
言ってることはよくわかるしごもっともだ。
でも、私としては、せっかくこの世界に強くてニューゲームして来たんだから、剣も魔法も使いたい!
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