第12話 冒険者ギルド(9)

「Dランク?いいの?」


 冒険者の最初のランクはFランク。

 当然、ついさっき冒険者になったばかりの私もFランクだったはずだけど、返された冒険者カードを見ると何故かDランクになっていた。

 二段階昇格だ。


「構わん。と言うか、ハイヒールが使えるのにFランクなままの方が問題だ。俺のギルマスとしての判断能力が疑われかねん」


 ちょいちょいこの人は私の為だとか言いながら、自分の為だとも言っている。

 最初は誰得なツンデレか何かかと思ったけど、単純に私に不都合が起きるとギルマスにも不都合が起こるだけのようだ。

 ごめんね、ギルマス。


「というわけで、ナナはランクD冒険者となったわけだ。これであとは何らかの実績でもあれば完璧だ」

「ギルマス!まさか!」

「ナナ、お前は冒険者パーティー《黒猫の集会》のメンバーと共にヒポガント討伐に同行してもらう」

「ギルマス!」

「もちろん断ってもらってもかまわない。だか、クロイス。お前はこの嬢ちゃんの面倒を見てやるんだろ?」

「あーもー、わかったよ!」


 なんか魔物討伐に行けるっぽい。

 嬉しいけど、自分の立ち回り方をどうするか悩みどころだ。


「わかった。私もそれでいいよ」

「よし。それじゃ改めて、お前の事を聞こう」

「え、やっぱり言わなきゃダメなの?」

「当たり前だ。今までのはあくまでも勝手な手出しをされにくくする為の状況作りだ。お前が何者か説明出来なければ意味がない」


 そう言えばそうだったかな。

 でも、ここまで親身になってくれたわけだし、正直に話してもいいかな。どうせ信じないだろうし。


「話してもいいけど、多分信じられないと思うよ?」

「構わん。すでに規格外の非常識なのは知っている。むしろここで、ごく普通なありきたりな事を言われた方が疑わしい」


 なんか酷い言われ方なような気もするけど、まあいいや。気持ちは分からなくもないし。


「強くてニューゲームだよ」

「・・・は?」


 何言ってんだコイツ?って顔してるね、ギルマス。

 私の隣にいるクロイスも同じ顔してるよ。

 まあ、そうなるよね。


「んーと要するに、前世の世界での技術や知識や才能をそのまま引き継いでこの世界で生まれ変わったって感じ?」

「・・・・」

「・・・・」


 ゲームの世界うんぬんは伏せておくことにした。

 説明しても分からないだろうし、そもそもコンピュータゲームとは何かってとこから説明が必要になるだろうから、かなり長くなりそうだしね。


「お前は何を言っているんだ?」

「まあ、そうなるよね。でも本当だよ。別に信じなくてもいいけど」

「いや・・・信じるも何も・・・本気で言っているのか?」

「もちろん。でも信じられない気持ちはわかるから、それならそれで構わないよ。私も同じ立場なら信じられないだろうし」

「・・・・嘘じゃないんだな」

「うん。嘘ならもっとマシな嘘を考えるよ」

「そうか」


 そう言って頭を抱えるギルマス。

 なんかごめんね。

 流石にちょっと可哀想になってきたよ。


「とりあえずわかった。信じるかどうかはともかくとして、色々と合点が行くのは確かだ。しかし・・・」


 そう言って私を見るギルマス。明らかに疲れた顔をしている。可哀想に。


「こんなとんでもない話、話したところで信じる訳がないし、もし信じたらそれはそれで面倒な事になりそうだ。・・・俺はこの話の何を領主様に話せばいいんだ?」

「いや、知らないよ。なんか上手いことやって」

「上手いことってお前・・・」


 お任せします。よろしくお願いします。

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