第11話 冒険者ギルド(8)

「ナナ、今日からお前はクロイスの率いる冒険者パーティー《黒猫の集会》に加入しろ」

「は?」

「え?」


 ちょ、ちょっとまって。色々と突っ込みどころ満載なんだけど。

 何から突っ込めばいいんだろ。

 まず、クロイスがパーティーリーダーなのはともかく、そのパーティー名がどうして黒猫の集会なの?クロイスなら黒犬でしょ!?

 てか、なんでそんな不気味なのか愛らしいのかよくわからないような名前なの?猫の集会でいいじゃない!そっちの方が和むじゃない!って、そもそもそれパーティー名としてどうなのよ!いやいや、それ以前に何で私がそのパーティーに入らなくちゃいけないの!?


「落ち着け。《黒猫の集会》はこの町では相当な実力のある冒険者パーティーだ。それに加え、孤児が集まって出来たパーティーだけあって、冒険者によくありがちな人に迷惑をかけたり不快な思いにさせるような身勝手や乱暴さもなく、町の人々からの評判はいい。ギルドにも協力的だし、町のために自ら無償で動いていたりもするみたいだからな」

「へえ」

「な!?バレてる!?」


 いきなり誉め殺しのように自分のパーティーを褒められたクロイスは、若干顔を赤らめながらも、自分が影でコソコソ動いていたことがバレていることを知り、驚いた顔をしている。


「程々にしておけよ。知られると他の冒険者にも同じことを望む者も出てくる」

「ああ。気をつける」


 たしかに。

 私も昔の会社で、「あいつはサビ残するのにお前は定時で帰るのか?」なんて言われたことがある。

 サビ残するのは勝手だけど私に迷惑かけないで欲しいなって思ったものだ。


「で、何で私がそのパーティーに入る必要があるの?」

「簡単な話だ。ソロよりもパーティーメンバーの一人であるほうが、召し上げる時に色々と面倒だからだ」

「なるほど」

「しかも、実力も、町の人々からも評判の良い《黒猫の集会》に認められて加入したとなれば、ナナが危険人物ではない事を示せる上に、そんな知名度のあるパーティーから強引に女の子を召し上げるなんて真似は、さすがに貴族様でもしにくくなるだろう」

「凄い!ギルマスって実は頭いいんだね!」

「お前、俺をなんだと思ってたんだ」

「えーっと、筋肉ダルマとか?」

「お前な・・・」


 とにかく、私はクロイスの率いる冒険者パーティー《黒猫の集会》に加入することになった。

 まあ、パーティーバトルはMMORPGでの醍醐味でもあるし、固定パーティーというのも初めてだ。

 この際、開き直ってこの状況を楽しむのもアリかも知れない。


「じゃあ、次はランクだ。ナナ、ギルドカードをだせ」

「う、うん」


 言われるままにギルドカードを渡す。

 ランク上がるのかな?

 ギルマスは受け取った私のギルドカードに視線を落とす。


「・・・職業、魔法剣士??なんだこれは?」

「え?そのまんまの意味だけど」

「回復術士だろう、お前は」

「あー」


 この世界では冒険者の職業、いわゆるジョブは基本的に固定らしく、最初にジョブを決めたらそれを極めるべく鍛錬を積むのが一般的らしい。

 もちろん、途中で転職を選ぶ冒険者もいるので、魔法術士から剣術士に転職した魔法剣士というのも存在するには存在する。

 もっとも、余程の才能がない限りはどちらも中途半端な技術しか身につかないので、それをする冒険者は少ないらしい。


「剣も魔法も使いたかったからね。回復魔法は忘れてただけだよ」

「忘れてたってお前・・・。それに、剣も魔法も使いたいとか、欲張りすぎだ。どれも中途半端になるのが落ちだぞ」

「でもギルマス、ナナは既にハイヒールの回復魔法が使るわけだし、たとえ中途半端でも剣と魔法が使えるようになれば、それはそれで強いと思うんだけど」

「うむ・・・確かに・・・」


 よし、乗り切った!

 クロイス、ナイスフォロー!たまにはやるじゃん!


「まあいい。変えたくなったらいつでも言え。いくらなんでもこれは夢見がち過ぎるからな」

「その時はお願いするね」

「わかった」


 ギルマスはそう言うと、私のギルドカードをテーブルの上に置き、そのカードの上を魔石でゆっくりとなぞるように動かした。


「うむ。ナナ、これを」


 そう言って、ギルマスは私にギルドカードを返して来た。

 見るとカードに記されていた私の冒険者ランクがFランクからDランクに上がっていた。

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