第8話 冒険者ギルド(5)

 町の門のあたりまで来ると、少し人だかりができているのが見えた。

 その人だかりの中に入って奥を見ると、血だらけで倒れている冒険者と、その治療をしている人達に混じってギルマスがいるのも確認できた。

 近くにはクロイス達三人の姿もあった。



「それで、負傷を負った冒険者というのはこいつか」

「ギルドマスター!?」


 冒険者の治療をしていた男性がギルマスの声に気づき、手を止めて驚いている。


「治療を続けろ。で、容態はどうだ」

「あ、はい。これは酷いですね。このままだとかなり危険です」

「ポーションは?」

「使いました。ですが、いくつかの重要器官にも損傷があるようで、傷を塞ぐだけのポーションでは間に合いません。復元能力のあるハイポーションがあればどうにかなるのですが」

「ハイポーションか・・・」


 どうやら重症らしい。

 ゲーム時代とは違って、ポーションがぶ飲みでどうにかなるようでもないみたいだ。


「ギルドマスター、ギルドにハイポーションは・・・」

「ない。それはお前も知っているだろう」

「ですよね。しかし、このままでは・・・」

「ううむ・・・」


 会話を聞く限り、ハイポーションが無くて困っている様子だけど、ハイポくらいどこにでも売ってるんじゃないの?

 確かにこの町はゲームでも序盤の町だから売ってなくてもおかしくないのかな?

 なんなら分けてあげてもいいけど。

 ポーションもハイポーションも99個持ってるし。

 ついでにメガポーションも99個あったはず。

 さすがにフルポーションやエリクサーは20~30個くらいしか持ってないけど。


 そんな事を考えていると、ギルマスの近くにいたクロイヌ、じゃなかったクロイスが私を見つけて駆け寄って来た。


「ナナ、お前まで来たのか」

「なんか気になってね。それで、どうなの?」

「うーん、ハイポーションが無くて困ってる」

「そうみたいだね。誰も持ってないの?」

「ああ。かなり高価なものだからな。それでもちょっと前まではある程度あったんだけど、最初にヒポガントに襲われた商隊の商人やその護衛達に全部使っちまったんだ」


 なるほど、そういうことね。

 だったら私の持ってるのを譲ってあげれば何とかなりそうだね。


「じゃあ、私の持ってるのを譲るよ」

「は?ああ、違う違う。ポーションはあるんだよ。必要なのはハイポーションだから」


 どうやら私がポーションとハイポーションを勘違いしていると思ったみたいだ。

 もしかして、ハイポーションって私が思ってるよりも高価な物?


「えっと、ちなみに聞くけど、そのハイポーションってどれくらいするの?」

「値段か?そうだな、その時の材料の値段によってだいぶ変わるけど、だいたい金貨2枚から3枚くらいだ」

「・・・・」


 それ高すぎない?

 町の通行料300回分、冒険者登録料なら10回分て事だよね。

 ハイポーション1個でそんなにするの?

 冒険者登録料を一括で払って驚かれたのに、私がそんなもの持ってたら、また色んな設定が盛られちゃうよ。

 でも、そんな理由でハイポーションを出し渋って、目の前の冒険者をみすみす見殺しにする訳にもいかないし・・・・。


「買うにしても、近くの町から買って戻って来るだけで何日かかかるし、まして、その道中でヒポガントに襲われたりなんかしたら元も子もない」


 まあ、そうだよね。

 やっぱり私が出すしかないかな。


「あとは、望み薄だが最近この町に来た商隊がいくつか持ってないか聞いて回るか、回復術士を探して無理をしてもらうか、それくらいしかない」

「回復術士?」

「ああ。回復術士にヒールをかけてもらうんだよ。回復術士のヒールには、少しだけどハイポーションと同じように復元能力があるからな。治すまでは出来なくても時間稼ぎくらいは出来るはずだ」


 なるほど。回復魔法ね。その手があったか。


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