第7話 冒険者ギルド(4)
「じゃあさ、ナナ!俺たちのパーティーに入りなよ!」
なんでよ。
たぶん善意からの言葉なんだろうけど、間に合ってるので結構です。
そういえば、最初の時も私の面倒を見てやるとかそんな事言ってたね。
「そうだな!色々誤解はあったけど、親のいない孤児なのは違ってないんだろ?ならこの先色々と困る事も出てくるだろうし、俺たちと一緒なら安心だぜ!」
今までのやり取りを見てどこに安心出来る要素があるっていうんだろう。
最後に来た女冒険者も隣で深くうなづいている。
もう、不安しかないよ。
「なあ!いいだろう!ギルマス!」
「いや、俺に言われても」
まずいなあ。
今度はギルマスを巻き込んでコントが始まりそうになってる。
ギルマス!もっと頑張って!
「そういうのはお前ら達で勝手に決めろ。俺は知らん」
ギルマス!逃げないで!
「それよりお前ら、例の件はどうするんだ。受けるんなら今回の騒ぎは大目に見てランクを下げるのは勘弁してやるが」
「いやそれ、脅迫だよね」
「ひでー」
またなんか始まった。
もう勝手に帰っちゃおうかな。
「だって相手はヒポガントなんだろ?さすがに無理だって」
「お前らのパーティーならヒポガント討伐くらいそれほど難しい事もないだろう」
「そりゃ出来るけど、そういう問題じゃないんだって」
意外にも、この冒険者達はヒポガントの討伐依頼を打診されていたらしい。
パーティーでとは言え、ヒポガントを倒せるだけの実力があるのなら大したもんだ。
「しかし、あれを倒せる冒険者パーティーなんてこの町じゃお前らくらいだろ。このままじゃ被害者が増え続けるし、討伐されるまでは町から外に出る事もままならん。だからなんとか頼めないか」
「なんでだよ、領主様に派兵を頼むんじゃなかったのかよ」
「そのつもりだったが訳あって駄目になった。こっちにも色々とあるんだよ」
「それこそ知らねえよ」
今回ばかりは冒険者達の意見に賛成だ。
冒険者は依頼を受けるも受けないも自由なはず。
ギルドやら領主やらの都合で無理矢理依頼を押し付けるのは良くない。
でも、どうしたもんかなあ。
そのヒポガントは既に私が倒しちゃってるんだよね。
とてもじゃないけど言い出せる雰囲気じゃないけど、言わない訳にもいかないよね。
こんな事になるんだったら死体は置いてくればよかった。
そうすればヒポガントの死体を誰かが見つけて、騒ぎも無事に収まったはずなのに。
だったら今から戻しに行こうかな?でも、さすがに町から出してもらえなさそうだしな。うーん、参った。
私がそんな事を考えていると、一人の男性ギルド職員が血相を変えてこちらに向かって走って来た。
「ギルマス!!大変です!!」
「どうした、何があった」
「ヒポガントです!調査を依頼していた冒険者が大怪我を負って町に戻って来ました!」
「何?!」
そう言うや否や、ギルマスは男性職員と共に大急ぎでギルドを出て行った。
どうやらヒポガントは私が倒した一体だけじゃなかったらしい。流石にこれは予想外だった。
でも、とりあえずこれで私がヒポガントを倒したって事を黙っていても問題はなくなったけど、もっと面倒な別の問題が出来てしまったみたい。
「ファイ、マリ、行くぞ!」
そう言うと三人はギルマス達を追うように駆け出して行った。
そういえばそんな名前だったね。
もう一人はなんて名前だっけ。
たしか、クロイヌ?いや、クロイスだっけ。
それにしてもあの三人、どこに向かったんだろう。
方向的にはギルマスと同じ方に向かって行ったから、たぶん門の方かな。
とりあえず私も向かおう。
さすがに気になるし、このまま知らんぷりという訳にもいかないしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます