第6話 冒険者ギルド(3)

「こんにちは。冒険者登録でよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「ギルドカードの発行料を含めた登録料に銀貨3枚が必要ですけど大丈夫ですか?保証人がいれば、分割払いも可能ですが」

「ううん。大丈夫だよ」

「そうですか。かしこまりました」


 ギルドの受付嬢が笑顔で対応してくれる。

 あのくだらない騒動を一部始終見ていたようで、私に対してとても親切だ。

 それにしても銀貨3枚って随分高いね。

 この町の門で支払った通行料30回分だ。

 親を亡くして着の身着のままこの町にやって来た訳ありの女の子が気軽に払える金額ではないよね。


「それではこちらに記入をお願いします。もし文字が読めなかったり書けないようなら、読み上げ・代筆も致しますよ」

「えーっと、うん。大丈夫です」


 渡された用紙を見ると、そこに書かれていた文字は日本語とは全く違う異国の文字だった。

 でもなぜか普通に読めたし、書くべき文字も理解できた。

 さすが強くてニューゲーム。

 私は用紙に必要事項を書き込み、受付嬢に渡す。


「凄いですね。その年で読み書きが出来るなんて」

「そうなの?」

「はい。普通に生活する分にはあまり必要はないですから、読み書きの出来ない人はわりと多いですよ」

「そうなんだ」

「もっとも、冒険者の方は依頼書が読めないと困るので、ほぼ皆さんが出来ますけどね」


 確かに、依頼書が読めないと何の依頼も受けられないからね。

 中には読み書きをパーティーメンバーに丸投げする冒険者もいるらしいけど。


 そんな話をしながらも受付嬢は淡々と手続きを進め、無事に冒険者登録を済ませる。


「ありがとう」

「いえ。頑張って下さいね」


 そう言って微笑みかける受付嬢。

 うん。いい笑顔だね。


 さて、目的は終えたのでここにはもう用事はない。

 でも、一応ギルマスに報告しておいたほうがいいよね。

 さっき助けてもらったわけだし。


「お。終わったか」

「うん。おかげさまで」

「そうか。こっちもコッテリと絞っておいたから安心しろ」

「それはどうも・・・・」


 見ると、例の冒険者三人は正座をしてこうべを垂れている。


「すまなかった。まさか貴族の子供が一人お忍びでこんな所に来ているとは思わなかったんだ」

「とんだ無礼を許してほしい」


 ホワイ?

 健気で可哀想な女の子からどうして貴族令嬢にクラスアップしてるのかな?


「そうよね。こんな小さいのに文字の読み書きもできて、しかも高額な登録料を一括で払えるなんてお貴族様じゃなきゃ無理ですもの」


 あー、そういう。

 この人らの想像力はどこまで逞しいんだろ。

 てか、説教受けてたんじゃないの?なんでさっきのやり取り知ってんのよ。


「全くお前たちは・・・」


 なんかもう、怒るを通り越して呆れ返っちゃってるよギルマス。

 もっと厳しめに怒った方がいいと思うよ?


「で、どうなんだ?」

「はい?」

「こいつらかアホなのはともかく、嬢ちゃんも違うなら違うとちゃんと言わないと駄目だぞ」


 あれ、今度は矛先こっち?

 そんなご無体な。


「そうはいうけど、言ってもどうせ信じないと思うよ。言えない深い事情があるんだなとか言って余計に設定盛られそう」

「・・・・確かに」


 頭を抱えるギルマス。

 ていうか、この人ギルマスなのにこんなくだらない事やってていいのかな?もっと色々やる事あるんじゃないの?まあ、巻き込んだ私が言えた立場じゃないけど。


「すまないな。こいつらは変な奴らだが決して悪い奴じゃないんだ。メンバーの全員が孤児で、色々と不遇な境遇を経験しているだけに、嬢ちゃんみたいなのをほっておけなかったんだろう」

「そうなんだ。まあ、この人達に悪気がないのは理解してるから、別に怒ったりはしてないよ」


 だいぶめんどくさい人達だけど悪気がないのはわかる。

 それに、みんな孤児だなんて聞いたら怒るものも怒れないよ。


「そう言ってくれると助かる。で、この際だからはっきりさせておいた方がいいと思うんだが、結局どうなんだ?」

「どうって?」

「貴族令嬢なのか、それとも親を亡くした可哀想な女の子なのか」


 どんな二択よ。


「どっちでもないよ。もちろん貴族令嬢なんかじゃないし、確かに親はいないけど別に可哀想な女の子ってわけでもないよ」

「うう、やっぱり健気な女の子だ・・・」

「だからそういうのはやめんか!」


 なんだろ、凄く疲れる。

 私もう、帰っていいかな?




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