強くてニューゲーム！

第5話 冒険者ギルド（2）

　私が冒険者志望だと知ったクロイスとファイは、色々と私に質問をしてくるので、適当にそれっぽく答えていると、やがて二人はコソコソと相談をし始めた。

「・・・おい、どうするよ。さすがに放って置けないだろ」

「ああ。親もいないであの歳まで一人で頑張って来たんだろ？あの不思議な貫禄も納得だ」

「しかもあの容姿だろ、絶対変な奴に目を付けられて酷い目に遭わされちまうぞ」

「わざわざこんな町まで来て冒険者になるって事は、元いた町では仕事で酷い目にあったんだろう。だからそこから逃げて来て、しがらみのない冒険者になろうって事だろ？」

「苦労してるよな」

「ああ、あんな小さいのにな」

　もしもーし。

　あんたらどんだけ想像力逞しいのよ。

　親はいないって言っただけでなんでそこまで妄想できるの？ちょっと感心するわ。

「なあ、ナナ」

「な、なに？」

「安心しろ、俺たちが面倒見てやる！」

「そうだ、もう酷い目にはあわせたりしない！」

「いえ、結構です」

　なんか勝手に熱くなってる。

　別に悪い人たちじゃないんだろうけど、なんとなく関わっちゃいけない気がする。

「で、あんたらなにやってんの？」

「え？」

「ああ、マリか。てか、なんでマリがここにいるんだ？」

　私が男冒険者二人に変な絡まれ方をしていると、一人の女性冒険が声をかけて来た。

「なんでって、いつまでたってもあんたらが戻ってこないから見にきたのよ。そしたらなんか女の子ナンパしてるし」

「してねーよ！」

　あ、その下りもうやったんでいいです。

「この子はナナって言って、こんな小さいのに親を亡くして仕事でも酷い目に遭わされて、着の身着のまま一人でこの町にやってきて冒険者になろうとしてたんだ」

　いつのまにか色んな設定が盛り盛り増し増しになっている。仕事で酷い目に遭わされたとか、どこから出て来たのよ。

「そうなの？」

「いや、そこまでは別に・・・」

　確かに現実世界での職場は多少ブラックなところはあったけど、ちゃんと有休は取れるし、そこまで酷くはなかったよ。

「いいんだ、そんな嘘までついて俺たちに気を使わなくても。苦労したんだろ」

「そうなの？こんな可愛いのに健気なのね」

「はぁ」

　着々と事実が改変されていく。

　どうすんのよこれ。

　誰か助けて！

「やめんか、お前ら！」

「な！？ギルマス！？」

　そんな私の心の叫びが届いたのか、突然私の後ろから迫力のある声が飛んで来た。

　後ろを振り返ると、筋骨隆々な30～40代くらいのギルマスと呼ばれる男が立っていた。

　この人がこの冒険者ギルドのギルドマスターのようだ。

「全くお前らはいつもいつも騒々しい奴らだな」

「ギルマス！違うんだよ！俺たちはただこの健気で苦労人の女の子をだな」

「うっさい！だいたい見てたからわかっとるわ！勝手に盛り上がって、有る事無い事でっちあげて、こんな小さな子供を困らせるんじゃない！」

「いやいや、別に俺たちは！」

「いいから黙ってろ！ランク下げるぞゴルァ！」

「んな横暴な！」

　さすがギルマス。凄い迫力だね。一刀両断だ。

　でも、ランクを下げるのはどうかと思うよ。

「嬢ちゃん、冒険者登録に来たんだろ？こいつらは俺が説教しとくから、嬢ちゃんは向こうで登録を済ませてくるといい」

「う、うん。ありがとう」

　私はギルマスにお礼を言ってその場を離れる。

　助かった。

　異世界転生ものの小説なんかでは、最初のギルドで絡まれるみたいな話はよくあるけど、こういう絡まれ方じゃないと思うんだよね。

　まあ、取り敢えず面倒ごとからは解放されたし、さっさと冒険者登録を済ませちゃおう。