第4話 冒険者ギルド(1)

 町の中に入ると、私は衝撃を受けた。


「うわあ、凄い・・・・・」


 目の前に広がる風景は、見覚えのある、それこそテンプレ的な町並みのそれだったが、そこを多くの人々が歩き、あるいは走り、様々な表情で、あちらこちらでは色んな会話の声が聞こえてくる。

 まるで、私の知っているゲームの町に、魂が吹き込まれたような、そんな景色だった。


「町が生きてるみたい」


 すっかり気分を良くした私は、田舎者丸出しの如く、キョロキョロと辺りを見回しながら、最初の目的として、冒険者ギルドへと向かうことにした。

 本当は先に宿屋の確保をしたかったけど、身分証がないと色々詮索されそうな気がしたので、その前に冒険者登録をして、ギルドカードを作る事にした。

 まあ、好奇心に負けたとも言うけどね。



 冒険者ギルドもやはり新鮮だった。

 ゲームで画面越しに見るのと実際に目で見て触れるのとでは雲泥の差だ。

 そんな感動もそこそこに、なにやらギルド内の様子がどうも慌ただしい事に気づく。

 なんだろ?何かあったのかな?

 ちょっと気になるかも。

 身分証が欲しかったから、とりあえず冒険者登録だけしてギルドカードをもらったらすぐに出るつもりだったけど、私の好奇心が疼き始めちゃった。


「おや?キミ、こんな所でどうしたんだ?」


 冒険者ギルドの中で若干ソワソワしていると、一人の冒険者が私に声をかけて来た。


「ん?誰?」

「ああ、ゴメン。俺はクロイス。この町の冒険者だよ。キミは?」

「私はナナ。なんか随分騒がしいみたいだけど、どうかしたの?」

「ん?ああ、町の近くでヒポガントが目撃されてね。実際に被害者も出ていて、そのせいで別の魔物の討伐依頼を受けた冒険者が討伐に向かえなくて困っているんだよ」

「ヒポガント・・・・・」

「かなりヤバイ魔物だよ。本来こんな所に出没するような魔物じゃないはずなんだけどね」


 あ・・・・。

 それって、私がさっき倒したやつだよね。

 もう倒しちゃったって教えてあげた方がいいのかな?

 証拠ならストレージに入ってるし。


「でも、この町の冒険者のレベルじゃとても討伐なんて無理だから、ギルドがこの町の領主様に派兵の依頼をするか、もしくは他の町から高ランク冒険者を呼ぶかで揉めてるんだよ」

「へ、へぇ」


 おっと、危ない。

 そんな話を聞いたら気軽に「倒しましたよ」なんて言えないじゃない。

 というか、この世界の冒険者はそんなに強くないのかな?それともこの町の冒険者が弱いとか?

 ヒポガントはゲーム時代と比べて特別弱くも強くもなってなかったと思うんだけど。


「そんなに強いんだ?」

「まあ、力は強いけど動きはそんなに早くないから、数で押せば何とかならないわけでもないけど」


 そのかわり、被害もそれなりって事だね。

 話を聞いた感じじゃ、ヒポガントを相手にした場合の被害って、死人が出るって意味だよね。

 そりゃ誰も討伐に行きたがらないよね。


「おいクロイス、何を物騒な話をしてるんだ?」

「おお、ファイか。安心しろ。俺も受けるつもりはない」


 クロイスという冒険者と話をしていると、別の冒険者らしき男、ファイが会話に割り込んで来た。


「だったらいいけど。で、そっちのお嬢ちゃんは?まさかこんな時間からナンパか?」

「馬鹿言え、んなわけがあるか」

「じゃあなんだよ」

「なんだか困ってるみたいだったから声をかけただけだよ」

「やっぱナンパじゃないか」

「ちげーよ!」


 なんか二人で軽いコントが始まった。

 どうしよう。もうしばらく見てた方がいいのかな?


「この子はナナだ。えーっと、結局何に困ってるんだっけ??」

「別に困ってはないけど?」

「え?」

「え?」

「お前らなにコントみたいな事してんだよ」


 あんたに言われたくはないよ。


「冒険者登録をしに来ただけだよ」

「冒険者登録?」

「お嬢ちゃんがか?」


 驚く二人。

 やっぱりそんなリアクションになるのね。

 見た目は十代半ばの美少女だし、普通に考えれば明らかに場違いだよね。


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