第3話 強くてニューゲーム
今の私の装備は、革の胸当てと折れた鋼の剣。
いわゆる初期装備だ。
強くてニューゲームというくらいだから、所持品も全てなくなって、初期装備と少しのお金だけのみになると思ったら、意外にもゲーム時代の所持品がいくつかストレージの中に残っていた。
よかった。結構残ってる。これはとても助かる。
確認すると、レア系の装備やアイテムが根こそぎなくなっているみたいだった。
「残ってるのはどれも店売り品ばっかりか。まあ、全部没収されてないだけマシなのかな。お金も残ってるみたいだし」
なくなってるのはどれも、イベントやクエスト、モンスターからのドロップでしか手に入らないような非売品アイテムばかりだったので、多分、ゲームとこの世界とで整合性が合わなくなったとかそういう事なんだと思う。
なら仕方ないよね。
だけど、レア系アイテムがなくなった代わりに、それらがお金に換金されてるようで、所持金はとんでもない額になっていた。
「すごい!私、お金持ちだ!」
レアアイテムは惜しかったけど、とりあえずよしとする。お金はいくらあっても困らないしね。
次にステータス。
ゲーム時代のメニュー画面をイメージすると、見慣れた画面が目の前に現れた。
この世界、イメージ力でなんでも出来そう。
もう、なんでもありだね。
でも、見知らぬスキル「???」が二つある。
「なんだろ?新実装のスキルかな?」
いろいろと衝撃を受けてついつい忘れそうになっていたけど、これって大型アップデートの影響なんだよね。たぶんだけど。
だったら新実装のスキルとかがあってもおかしくはないね。
それ以外には特に変わった所も無く、ステータス画面のアバターキャラもゲーム時代のキャラそのままだった。
私が半日以上の時間を費やして作った最強の美少女。
私はおもむろに自分の胸の膨らみ具合を確認し、確信する。
「強さに加えて若さと美貌まで手に入れてしまった・・・・。確かに強くてニューゲームだわこれ」
もう、元の世界に戻れなくてもいいかもしれない。
そんな決意をした私は、そろそろここから移動する事にした。
いつまでもこんな所にいても仕方がない。
また魔物に襲われても面倒だし、それより早く町を見つけないと今夜は野宿って事になりかねない。
いくらなんでも野宿はごめんだよ?
森を抜けてしばらく進むと、無事に町をみつけた。
何となく見覚えがあると思ったらやっぱり知ってる場所だった。
「確か、ベイクの町だったかな」
ゲーム時代でも何度か訪れたことのある小さな町だ。
でもここって、かなり序盤の安全な町だったと思うんだけど。
少なくともヒポガントなんて言う高レベルの魔物が近くにいるとかはなかったはず。
この世界の魔物の生態系はゲームの時とは違うのか、それともここがベイクの町じゃなくて別の町か。
うーん、まあ、今はいくら考えても答えは出ないし、とりあえず町に入ってから、まずは情報収集だね。
◆
「お嬢ちゃん、見かけない顔だが、どこから来たんだい?」
町に着くと、門番の兵士に声をかけられた。
「えーっと、隣町からちょっと」
ちょっと異世界の日本から来ました。なんて言えないしね。
取り敢えず、近所から遊びに来ましたってノリで答える事にする。
「おいおい、隣町からここまでお嬢ちゃん一人だけでか!?なんて危険なマネをするんだ。よくたどり着けたな。魔物や野盗には襲われたりはしなかったか!?」
「え、あ、う、うん。大丈夫」
な、なに、この兵士さん。矢継ぎ早にグイグイくるんですけど。ちょっと怖い。
「っと、いや、すまん。怖がらせるつもりはなかったんだ。でも、子供が一人で町の外を出歩くもんじゃないぞ。特に今は色々と物騒だからな」
「物騒?」
「ああ。町の近くに凶暴な魔物が現れたみたいでな。今はそれを討伐するための冒険者を集めているところだ。それが討伐されるまではしばらく町の外は出歩かない方がいい」
魔物か。ちょっと戦ってみたいけど、まずはこの世界の事を知ってからだよね。
「そうなんだ。気をつけるよ」
「おう、そうしてくれ。それじゃ、手続きをするから身分証を出してくれ。なければ銅貨一枚を払って貰うことになる」
「身分証?」
「市民カードかギルドカードの事だ。あれば通行料は免除になるぞ」
身分証に通行料か。これもゲームの時はなかった仕様だね。
考えてみれば、朝でも夜でもいつでも誰でも手続き無しに自由に出入り出来たゲーム時代の方がおかしかったのかも。
まあ、ゲームにそこまでのリアリティを求めるのもどうかと思うけど。いちいち面倒だし、テンポも悪くなりそうだしね。
「じゃあ、銅貨一枚で」
身分証は持ってないけど、お金ならいっぱいある。
私は兵士さんに通行料を払い、町の中へ入っていく。
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