第2話 最強の美少女爆誕
気がつくとそこは森の中だった。
「え?なにコレ!?」
だって、気づいたら森の中だよ?
そりゃ驚くでしょ。
一体何がどうなってこんな事に?
記憶も曖昧で、気を失う前のことがどうにもよく思い出せない。
私は辺りをぐるっと見回す。
「うーん、どこか見覚えがあるような、ないような。」
いつ、どこで見た景色なんだろう。
コレはあれかな。
実際にこの目で見たわけじゃなくて、写真や映像で見て知っていた。みたいな。そんな感じ。
記憶じゃなくて知識として覚えている景色なのかも。
でも、ここがどこなのかは、やっぱりわからない。
「ここはどこ?私は誰?」
なんか言ってみた。
こんなセリフを言える状況なんて、そうそうないからね。ちょっと言って見たくなった。
でも、ここがどこかはわからないけど、私が誰かは知っている。
朝倉奈々。
23才・独身・趣味はネトゲ・好きな食べ物は美味しいもの。
見た目は可もなく不可もなく。
でも、ゲームでの私のアバターキャラは可愛いよ。
なにせ、キャラメイクに半日以上は費やしたからね。
・・・・ん?ゲーム?・・・あっ、そうか。
「もしかして・・・ここは、ゲームの世界?」
そう、私はそのボタンを押した瞬間、気を失った。
目を覚ますと、この森の中にいた。
そしてどこか見覚えのあるこの森の景色。
多分これは、ゲームで見て知っていた景色だ。
どうやら私はゲームの世界に来たらしい。
「いやいや、そんな、そんな馬鹿なことって・・・」
信じられないけど、この状況を見たら信じざるを得ない。
強くてニューゲームを選んで気を失い、
気がつくと森の中で、
しかもその森はゲームで見た覚えがある。
そして・・・。
「皮の胸当てと、鋼の剣・・・」
このゲームのスタート時の初期装備。
それを今、私は着けている。
もちろん自分でこの装備を着けた覚えもないし、そもそもこんな防具や、まして本物の剣なんて見たことも手にしたこともない。
たしか、現実なら所持しているだけでも犯罪なんじゃなかったっけ?
「これはもう、ここがゲームの世界って事で納得するしかない見たいね。って、え!?」
「グルルルルル」
私が渋々諦めて現状を自覚すると、まるでそれがトリガーだったかのように、森の奥から一体の魔物が姿を現した。
目の前に現れたのはカバのような大きな体をした凶暴な魔物。
「もしかして・・・ヒポガント!?」
それは、高ランクの魔物としてゲーム時代ではそこそこ有名な巨体獣ヒポガント。
硬い皮膚と強烈な一撃を持ち、倒すにはそれなりの強さが必要になる強敵だが、ドロップ品のヒポガントの皮と牙が高価で売れるので、わりと人気のある魔物だ。
「どうやらここは、私の知ってるゲームの世界で間違いなさそうだね」
決定的だ。
現実には存在しない、というか、あのゲームにしか存在しない魔物が目の前に現れたんだから。
「とにかくやるしかない」
強くてニューゲームっていうくらいなんだから、私のステータスはゲーム時代のものを引き継いでるはずだよね。
そう覚悟を決めて、剣を抜いて前に構える。
「鋼の剣・・・」
引き継いでるよね?
装備が初期装備になっている事に若干の不安を覚えつつも、意を決してヒポガントに飛びかかる。
凄い!
飛び出した瞬間に理解した。
私は一瞬でヒポガントの横を通り過ぎ、ヒポガントの背後を取ると、大きく剣を振り上げる。
凄い!凄いよこれ!ホントに強くてニューゲームだよ!!
そして、私は力いっぱいにヒポガントめがけて鋼の剣を振り下ろす。
「ウガガガガ!!!」
パリン!
「な!?」
しまった、やり過ぎた。
勢い余ってヒポガントの骨まで砕いてしまって、ついでに剣まで折っちゃった。
鋼の剣では、ヒポガントの肉までははなんとか斬れても、流石に骨までは無理だったみたい。
「ま、まあ、とりあえず倒せたみたいだしいっか」
私の目の前にはヒポガントの死体と、折れた鋼の剣の上半分が転がっている。
ゲームの時みたいに、倒した敵が勝手に消えたりはしないみたいだ。
「じゃぁ、ドロップ品とかはどうなるんだろ?」
ゲームでのヒポガントのドロップ品はヒポガントの皮と牙と爪。
ゲームでは、倒したらその素材だけが綺麗に剥ぎ取られて、その場に残ってた。
けど、普通に考えたらそっちの方がおかしいよね。
「えーっと、じゃあこれどうしよ」
別にこのままでもいいけど、素材はちょっと惜しい気がするんだよね。
ゲームならアイテムやドロップ品は自動的にストレージに入って獲得できていた。
ここがゲームの世界なんだったら、そういうファンタジーな能力も使えたっていいような気がするんだけど。
私は落ちていた半身の剣を拾い上げ、自分の中のストレージ空間に半身の剣を取り込むようにイメージする。
「あ、消えた」
ストレージは使えるみたいだ。
さすがゲームの世界だね。
だったら魔物も死んだら消えてくれればいいのに。
変なところだけ現実的で、変なところだけゲームな感じだよね。
とりあえず、ヒポガントの死体もストレージに収納して、私は現状の自分自身について色々と検証する事にした。
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