第9話 冒険者ギルド(6)

 私は目の前にステータスメニュー画面を出して、ジョブを回復術士に変更する。

 出来た。魔法欄にもちゃんとヒールが載っている。

 それに、思った通りこのメニュー画面は私にしか見えていないようだ。


「ねえ、クロイス。私、ヒール使えるんだけど手伝おうか?」

「・・・え!?」


 いや、驚きすぎでしょ。

 これでも私、全ジョブレベルカンストなんだよ?

 なんなら蘇生魔法も出来ちゃうよ?


「ナナ!お前それ本当か?!」

「え、うん」

「ギルマス!!!」


 クロイスは慌ててギルマスを呼ぶ。

 え、なに?また私、何かやらかした?


「なんだクロイス。それにさっきの嬢ちゃんまで」


 ギルマスはそう言いながら私達のところまで来てやって来る。


「ナナです。さっきはどうも」

「ナナか。気にしなくていい。それでクロイス、何かあったのか?」

「実は・・・・」


 クロイスはそう言いながら私の方を見る。

 釣られてギルマスも私の方を見る。

 なによ。


「ん?この嬢ちゃんが、ナナがどうかしたのか?」

「ヒールが使えるらしい」

「なんだと?!」


 また私の方を見るギルマス。

 かなり驚いた顔をしている。

 ヒーラーってそんなに珍しいのかな?


「ナナ、それは本当か?」

「うん。本当だよ。力になれるなら手伝うけど?」

「助かる!!無理をさせるかも知れないが頼む!」


 ん?無理を?

 ヒールかけるだけだよね?

 もしかして何回も魔力が無くなるまで使う事になるとかそう言うことかな?

 まあ、私の魔力ならヒール程度ならどれだけ使ってもそうそう尽きないと思うけどね。

 私の事情でハイポーションを譲ってあげられないわけだし、ヒールの10回や20回くらい全然問題ないよ。


「じゃあ、ヒールするね」

「ああ、頼む」


 私は、倒れている冒険者の体に手をかざし、ヒールの魔法を発動させる。


「ヒール」


 冒険者の体のあちこちにあった深い傷はみるみると塞がって行き、少し顔色も良くなった気がする。

 今まで何度も使って来た魔法だけど、実際に傷が治っていく様はさすがファンタジーの世界だね。


「お、お前これは・・・?!」

「ん?」


 なんかギルマスが凄い驚いてる。

 ギルマスなんだからヒールくらい見た事あるでしょ?


「ギルマス!この子は一体!?」

「知らん!俺もさっき会ったばかりだ。おい!クロイス!」

「いや、俺だって知らないよ!」


 ギルマスだけじゃなく、治療をしていた男性とクロイスまで驚いている。


「こ、これは、ハイヒール?!」


 いや?ヒールだけど?

 さすがに私もわざわざそんな目立つ事はしないよ。

 話の流れ的にヒールが使えるだけでもかなり凄い存在みたいだし。

 あ、もしかして・・・。


「間違いありません!重要器官の損傷も、その機能も回復しています!」

「・・・・」


 あれだ。

 回復スキル。

 私は回復術士のレベルもカンストしてるので、当然回復スキルも上限まで上げている。

 そんな私がヒールを使えば、効果はハイヒールくらいにまで上がっていてもおかしくはない。

 これはまずい。

 ハイポーションを持っているのとハイヒールが使えるのと、どっちの方が驚かれるかなんて決まってる。

 いくら高価とは言ってもハイポーションはお金を出せば手に入るわけで、ハイヒールが使えるのに比べれば全然常識的な範囲だ。


「おい、ナナ!お前はハイヒールが使えるのか?!」

「えーっと・・・」


 はい。ハイヒールも、メガヒールも使えます。

 なんならリザレクションで蘇生だってできますよ。

 なんて言えない。

 うわあ、どうしようこれ。


「まあいい、細かい事情は後だ。とにかく助かった。ウォレン、あとは任せても大丈夫か」

「はい。あとは私達だけで大丈夫です」

「そうか。頼んだ。おい、ナナ。行くぞ」

「え?」


 ホワイ?

 どこに行くのかな?


「クロイス、お前もだ」

「お、おう」


 そうして私とクロイスはギルマスに連れられて、冒険者ギルドにあるギルマスの部屋へと連行された。

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