第61話 文化祭準備2
1回目の文化祭実行委員会の翌日の放課後。
クラス全員の前で、麗華は文化祭実行委員会での話をした。
「学校から各クラスに割り振られる予算は2万円ということでしたが、金額は気にしないで大丈夫です」
麗華のその言葉にクラスメイト達は最初首を傾けたが、麗華がそう言うのならそうなのだろうと納得した。
「文化祭での出し物は利益を追求するわけでもありませんので、コスト管理についてはそれほど気を使わなくてもいいでしょう」
最初からクラスメイト達は利益追求やコスト管理など考えていなかったので全員麗華の話に納得している。
「具体的には、会場整備費、衣装代、食器などの什器備品費、その他設備費、原材料費といった経費を意識する必要はありません」
これも誰も考えていなかったのでそうなんだろうなということでクラスメイト全員が納得したようだ。
「ですが、野放図に支出することはできませんので、各班は当初50万の予算でやりくりしてください。これから現金を支給しますので各班の班長は代田より受け取ってください。一応領収書は会計の山田(仮)さんに渡してください。50万では足りない班も出てくるでしょうからその時は山田(仮)さんに申し出てください」
そこで代田は、教卓の上にカバンを置き中から50万円の入った袋を4つ取り出した。
50万の話が出たところで、クラスメイト達は押し黙ってしまった。麗華の本気を感じたのだ。
各般の班長が教卓の横に立つ代田のところまで出ていき50万の入った封筒を受け取った。
「山田(仮)さんには、200万ほど渡しておきますから各班からの要望があればそこから支給してください」
代田は100万円の束が二つ入った大き目の封筒を、一番前の席に座っていた会計係の山田(仮)さんに手渡した。
「それでは、みなさん、最高の文化祭にしましょう!」
クラスメイト達は声もなく麗華を見つめるだけだった。
「今日のミーティングはこれまで。皆さんは班ごとにアイディアを煮詰めてそれを実現するよう頑張ってください。
それではごきげんよう」
そう言って麗華は代田を伴い教室を出ていってしまった。
麗華と代田が教室を出て扉が閉まり、それからしばらくして教室の中は騒然としてしまった。今現在400万もの大金が教室の中にあるという現実に引き戻された生徒たちはすぐに静かになってしまった。
「みんな、法蔵院さんはああは言っていたけれど、ちゃんと節度を持ったお金の使い方をしましょう。よそのクラスは2万円で済ませることができるのだから、私達でもできるはずよ」と、クラス委員の山田(仮)さん。
「委員長、私はこんな大金持っていたくないから、預かっていてくれないかな?」
「俺も」「私も」
「分かりました。私が預かっておきます。必要時私の方で支給するようにしましょう。領収書は確実にね。私の方は5万だけ残して、あとは銀行口座に預金しておきます。一応私の口座ですがそこは了承してください」
「
麗華の知らないところで良識的な決定がなされてしまった。翌日、放課後の定例ミーティングで山田(仮)さんからこの報告を受けた麗華は、使えるお金の上限を上げただけで下限を定めたわけでもないで、
「使う金額は自由なので大丈夫ですよ」と、言っておいた。
「準備については、順次行ってください。
あと、当日の当番の割り振りですが、メイド係、宣伝係、調理係、そして全員が後片付けと清掃係。実質3つの係りで回す予定です」
「出し物はメイド喫茶ですので、基本は女子がメイド係、男子が宣伝と調理でいいでしょう。男子の中でどうしても女装したい、女子の中でどうしても調理とか宣伝がしたいという人がいるようでしたら係りの間で調整してください。
メイド係になった人はある程度メイドの立ち居振る舞いを知っておく必要があるでしょうから、次の日曜日、可能な方はわたしのうちにいらしてください。
うちの使用人がその辺りを教育します。
わたしのうちの住所ですが、地図を配ります。集合は、日曜の午前9時からにしましょう。門は開けておきますから、直接玄関まで。玄関には誰か立たせておくのでその者の案内で屋敷に上がってください。
それと、調理担当の人もその日うちに来てください。
こちらもうちの使用人が軽食やお菓子の作り方などを教育します。そうそう、お菓子の作り方はわたしが先生になる予定です。こちらの方も日曜の午前9時からでいいですね。作った軽食やお菓子については文化祭当日喫茶店で提供する予定です。
宣伝係の方は、特に教育は不要でしょうが、メイド係の実習のためお客さまに扮してください。ということで当日11時ごろうちに来てください。
当日の昼食はこちらで用意します。この講習会は15時散会を目途とします」
麗華が話しているあいだに代田は麗華の屋敷の位置を示す案内図を生徒たちに配っている。
「それでは、今日の連絡ミーティングは終わります」
そう言って麗華は教室から出て行ってしまった。麗華の後ろには麗華のカバンと自分の荷物を持った代田が続いている。
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