第38話 能力確認2


 白鳥学園の臨時休校を利用して、グランドを使わせてもらい、自分の身体能力を確認している麗華お嬢さまと代田の二人。


 いま100メートルを走り、世界記録を大きく上回る9.23秒を記録した麗華だったが、確認のため改めて100メートルの距離を確認したところだ。


「お嬢様~。ぴったり100メートルでした~」


「そんなのそうそう間違える訳もないから100メートルよね。それじゃ、次は1万メートル走ってみようかしら。ここのグランド1周200メートルメートルだから50周、代田、時間と何回周ったか数えててね」



 先日の体育祭でのリレーに使ったスタート地点の石灰ラインがまだ残っていたので、そこからスタートすることに。


「それでは、お嬢様、位置について、ヨーイ、」


 シュ!


  旗が振り下ろされ、麗華がスタートを切った。


  タッタッタッタッ。タッタッタッタッ。……


  タッタッタッタッ。タッタッタッタッ。……


  見ていても、ほとんどスピードが落ちない。


  5周回ってラップタイムは「02:15:05」、2分15秒


  10周回ってラップタイムは「04:30:10」、4分30秒


  ……


 5周ごとにラップを取っているのだがピッタリ1000メートルのが同じだ。


 こちらは、こちらでえらいタイムになってしまったようだ。


「お嬢様ラスト1周です」


 カチッ。


「22:30:50 でした。これもおそらくは」


 ここまで来てしまうと、もう驚かない。


「わかったわ。屋敷に帰って調べてみましょ。それじゃあ、次は走り幅跳びをして見ましょう。代田、砂場の方へ行くわよ」


 走り幅跳び用に砂場の手前の地面には白いプラスチック製のラインが打ち込まれているが、そこで踏み切ってしまうと、そのまま砂場を横断してしまいそうなので、かなり手前にラインを引きそこから踏み切ることにした。助走は適当に踏み切りラインから40メートルくらいのつもりでスタート地点とした。


「それじゃあ、行くわよ」


 タタタタ……、

 タッタッタッ。…ザッ!


 徐々に歩幅を大きくしながらスピードを上げていき、左足が見事に踏切位置に合った瞬間踏み切った。


 ビヨヨ~ン。


 空中で何度も足をばたつかせながら高く遠くに麗華は跳ぶ。


バシャー。


 砂をまき散らせて着地。一番後ろの着地あとから踏切位置までの距離を測ると「12.55」大きく世界記録を上回ってしまった。


「お嬢さま、これも世界記録ですよね」


「わたしも走り幅跳びの世界記録は詳しくは知らないけれど、確か10メートルくらいだったはずよ」


「どういたしましょう?」


「どうと言っても、何もする必要ないでしょ。あなたがおろおろしてどうするのよ。それに私が陸上選手になったら、法蔵院グループが困るじゃない」


「ごもっとも。それですと、このことは秘密ですな」


「誰も見ていなかったようだし、そういうことでいいでしょ。これ以上やったら、陸上競技全部世界記録出しちゃいそうだからこれくらいにしときましょ」



「お嬢さま、この調子ですと、水泳なんかでもすごいことになりそうですね」


「わたしもそう思うわ。この前のプール開きの時も、100メートル息継ぎせずに泳げたからいい線行きそうよ。自由形だったら潜水でもいいのかしら」


「それは自由形ですから問題ないはずです」


「でも、1回でも私が大きな大会に出て世界記録を出して優勝でもしたら、潜水は禁止されるんじゃない? しかも女子が世界記録作って何年もそれが世界記録のままだったりしたら。それに、日本人が勝つといつも日本人が不利になるようにレギュレーションが変わるじゃない。だいたい水泳でもそうだけどひどいのは……オリンピックの柔道なんて……」


 お嬢さまはオリンピックに対して一家言いっかげんを持っているようで、これ以上喋らせておくと止まらなくなりそうだ。すかさず、代田が別の話題を振る。


「速さや距離を競う競技ですと、おそらくほとんどの競技でお嬢さまは世界記録を作ってしまいそうですが、重量上げなんかはどうでしょう」


「代田、重量挙げなんかわたしがするはずないでしょ。お嬢さまは重量挙げしないの。ムキムキお嬢さまになったらどうするのよ」


「それもそうですね。失礼しました」


 さすがは代田、うまく、麗華の話を腰を折ったようである。


「だけど、わたしほんとに進化しちゃったのかしら。鉄砲のたまかすってもすぐ治っちゃうし。いいことばかりなんだけど何だか複雑ね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る