第19話 駐日アギラカナ大使館2
こちらは、大使館8階。アギラカナ代表を務める山田圭一の執務室。山田の秘書室長を務めるアインが山田に報告をしている。
「艦長、先ほど一条さんが連れてこられた
「なにかあったか?」
「はい。二人連れてこられたうちの若い女性の
「ほう、それは興味があるな。名前は分かるかい」
「はい。3週間ほど前に、一条さんと接触した法蔵院麗華さんという方で、一条さんの警護をしていた者の話によりますと一条さんとの接触を阻止する必要を感じなかったそうです」
「法蔵院? どっかで聞いたことがあるな」
「法蔵院グループの総帥のお嬢さんのようです」
「ほう。
「了解しました。法蔵院さんの監視ドローンは今後私が担当します。何かあれば艦長にご報告します」
「よろしく頼む」
一条たち三人がエレベーターに乗り込むと、そのままドアが閉まって直接7階に到着してしまった。一般の大使館員の行き先は1階と7階しかないので当然である。8階より上に行くためには、別の専用エレベーターを使う必要がある。
だだっ広いオフィスルームの中に
「ここで働いているのはほとんどというか、今のところ全員日本政府からの出向者なの。いままで国会答弁なんかで意味もなく遅くまで仕事してたそうよ。ここだと、好きな時に来て好きな時に帰っていいから楽なんだって。わたしとしても、指示したことがちゃんとできていれば言うことないからそれはそれで楽よ。
ここに来てる人は出身省庁にそのうち帰っちゃうらしいけど、帰ったらそこで相当出世すると思うわ。人事査定を向こうから頼まれてるんだけど、最高評価以外つけたことはないしね。それもあってかみんな張り切ってるわ」
「わかります。アギラカナ大使館へ出向となると相当のエリートの方たちなんでしょうね。法蔵院グループでもできれば、こちらに出向させたいくらいです」
「そのうち日本政府関連以外の業務も増えてくるでしょうから、その時はお願いするね。ちょっと待ってて、せっかくだから麗華ちゃんたちを上に連れて行ってもいいか聞いてみる」
一条がポケットからカードを取り出しそれに話始めた。そのカードはスマホのような物らしい。
『アインさん? わたし、一条。いま先輩いる? ……、先輩、一条です。今7階にいるんですけど、法蔵院グループのお嬢さんが来てるんです。一緒に連れて8階に上がってもいいですか? はい、それじゃあ今から上に上がります』
「麗華ちゃん、許可が下りたから8階に行ってみましょう。おそらく、先輩と私以外の地球人で8階に上がるのは麗華ちゃんたちが初めてだと思うわ。ここの7階にいるみんなも一度も上に上がってないもの」
「そうなんですか、ほんとにわたしたちが行ってもいいんですか?」
「ここは、先輩がいいって言えば、なんでもOKなの、それに、私が言えばトンデモないことじゃなければ先輩は大抵OKしてくれるのよね」
7階まで昇って来た時とは違うエレベーターに乗って8階で降りる一行。この階も大分殺風景だが7階よりはましだ。特徴は天井が見上げるほど高いことだ。
「なんだか、映画に出てくる宇宙船の中みたいですね」
「わたしも最初にそれを言ったらその通りだって。ここは実際宇宙船なんだって言われたわ」
「こっちよ。……、ここがアギラカナ代表、ミスター山田の執務室。先輩に向かってミスター山田って言ったら機嫌が悪くなるかもしれないから言わないでよ」
そう言いながら執務室のドアを開けずんずん先に進む一条。彼女を追って麗華と代田が後に続く。
「一条、お客さんのようだが紹介してくれるか?」
【補足説明】
アイン
ミスター山田に付き従う四人の美女のうちの一人、アギラカナ艦長付秘書室長。もとアギラカナ陸戦隊曹長。
特殊生体器官
約半年前にアギラカナが地球上に散布したナノボットが条件を満たした人物だけに発現させた生体器官で、その生体器官を有する人物の精神安定、治癒能力向上、身体能力の飛躍的向上がなされる。地球人類ではアギラカナ代表山田圭一にのみ発現が確認されている。
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