第3話 君は『ツンデレキャラを演じたい』みたいだ。

「「あっ……」」


「あっ、ごめん。先にどうぞ。なに……?」


 僕と後輩は今、ベンチに座りながら話し合っている。ベンチが小さいために肩がぶつかっていて、すごい恥ずかしい……。


「あのー……どう思いました? 私が……先輩のことを好きって知って……」


「どう……か?」


「はい、どう……思いました?」


 僕は、どう思ったんだろうか? 最初は、まぁやっぱり戸惑ってしまったけど……その後はどう思っていたんだっけ?


 嬉しかった……のかな?

 でも、なんでそんなことを考えて……?


 それはもう、答えは出てしまっているよな。僕の心の奥では、あんまり肯定していいのかは分からないけど、分かっているんだよな。


 僕は……

 後輩のことを好きになっているみたいだ。


 いつの間にか……。だから、好きになっているというより、好きになっていた……って言った方が正しいのかな?


 不思議な感覚だな……。


 それに、好きって、その人のことが好きなのかを考えないと、好きかどうか分からないって、不思議だ。


 でも、まぁどちらであっても好きってことはなにも変わっていない。


 そっか。僕は……!


「嬉しかった……かな。」


「そ……そうですか……!!」


「うん。可愛くて、なにより……気になっている後輩から言われたんだよ? それって嬉しくないわけないじゃないか。」


「き、気になっている!? え、えーっと、それであの……」


「……な、なに……?」


「あの、す、好きです……。つ、付き合ってく、ください……!!」


「えっ……!」


 ……もう、答えは決まっているよな……。

 そっちのほうが……絶対に僕にとって、そしてなにより僕たち二人にとって幸せなことだ。絶対に……そう、断言できる。


 なにかいろいろと問題とかはあるかもしれないけど、絶対にそっちのほうがいい。


 せっかく後輩が勇気を出して告白してきてくれたんだ、僕だって、勇気を出さないと!


「うん、よ……よろしくね。」


「ほ、本当に、ですか? やったー……!」


 喜んでいる姿が……すっごい可愛い。やっぱり、僕はツンデレキャラよりもいつもの後輩が好きだな。


 なんて、場の雰囲気に流されてそんな、ちょっと前までは考えもしなかったことなのに、考えてしまう。


「先輩は……私のこと……好きですか?」


「うん……す、好きだよ。」


「〜〜〜〜〜〜っ!!」


「……恥ずっ。」


 こんな言葉を発したのは、からかいをしようとしているのか、それとも自爆したのかはよく分からない。僕の困惑したその頭では分からせてくれない。


 けど僕は、言うことにした。好きな思いを知るということも、確かに嬉しいんだけど、声にしていってもらうって……それよりも断然すごい嬉しいものだって知ったから!


 後輩にそう教えてもらったから……!

 でも……こんなこと今までになかったからこんなこと恥ずかしい……


「えっ……!?」


「こっちのほうがいいですよね?」


 後輩はいつの間にか気付けば、僕の手の上にポンッと乗せるように後輩の手に重ねていた。温もりっていうのかな……すごい安心する……。まぁ、それと同時に心臓がやばいくらいに動いて、それでいて跳ねているけど。


「そうだ、言いたいことがあるんだけど。」


「なんですか?」


「あのー……今になって言うのもおかしい気がするけど、僕、ツンデレキャラは別に好きでもなんでもないんだよね。」


「……へ? えっ……どういうことですか? 部室にそういうツンデレキャラがヒロインの本をかばんに入れて持ってきていたはずじゃ……!」


「それは多分、親友がやったんだと思う……。」


「そ、そんな……私の努力は……。」


「だから、僕はやっぱり今の後輩が好きだな。ツンデレキャラよりも、よっぽど。だから……今のままでいてくれる……?」


「あっ……ひ、ひゃい……!」


 僕は、後輩……いや、僕の恋人と、一緒にいれるってことを幸せだなって感じていた。


 幸せって……どういうことを幸せだなんて言うのか分からなかったけど、こういうことを幸せって言うんだなって思った。


 翌日……僕と僕の恋人は……手を繋いで登校していたらしい。そして、僕の恋人の友達さんや、僕の親友から色々聞かれているらしい。


 でも、僕はそんなことを知らなくていい。今の……今の時間を噛み締めていたいから。


 その後、この今の時間を堪能し続けた。そして、時間もかなりたってそろそろやばい時間になるのでは?というころ。


「……じゃあ、帰るか。」


「……すぅ……すぅ……。」


「……寝ちゃっていたか。ふふっ、幸せそうに寝ているなー……!」


「……すぅ……すぅ……。」


 今日の僕は、なにか変だ。僕の恋人の顔を……いや、その顔の中でも……く、唇をみているだけで、キスをしたくなる……。



「……寝ているし、いいかな……。いや、だめだろ……我慢、がま、んしないと……。」


 僕は、それでもやっぱり我慢ができなくて……僕の恋人の唇に、僕の唇を優しく触れさせたのだった。


 やっぱり……今日の僕は変だ……。


 そして、その変という言い訳にもならないようなことを言い訳にして……もう一度。


「……へ?」


「あっ………」


「い……いま……」


「あっ……あはは…………。」


 調子に乗って、2回目までしちゃったから……やっちゃったー……。


 どうやら起きてしまって、僕がキスをしていたことに気付いたらしい。すっごい恥ずかしかった。キスしているのがバレたら……やっぱり……。


 僕と僕の恋人は、ふたりで顔を赤くしながらこの公園の小さいベンチで座っていた。


 そして、今度はふたりで向かい合ってキスをした。

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