第4話 曇って、晴れる

「ここでは、ですね…」

 リオンが、ゆっくり話し始めた。

 心なしか時間もゆっくり進む。

「親、という言葉はあります。僕らは親から《命》を受け継がれていますし、あなた…シノの言う感覚と概念としてはそこまで変わらないでしょう」

 うん…。

「ただし、この世界には」

 ここでリオンが一つ息をつく。

があるんです」

 っ…わかんない言葉が出てきたぞ?

「少しずつ説明しますね…」

 リオンの、長くなるであろう話が始まった。


 …。

 そのまえに。少し話題がそれるんですが…。

 ぼくらは、みんな《能力》を持っています。シノは持っていませんが。《能力》はみんなそれぞれ違います。手が伸び縮みする人もいれば、他人の心を読める人もいます。

 ぼくは、人の《苦しみ》《痛み》をなかったことにできます。

 ああ、これが僕が前に言ったことですね。医者のようだけど、違う。こういうことです。

 話を戻します。

 全体的には、体つき、力に関する《能力》を持つ人のほうが、権力が大きいです。

 しかし、なんの《能力》を持って生まれてくるかは選ぶことができません。

 理不尽…なんです。この世界は。

 …っ。

 えっ…あっ、すみません、少し記憶メモリーが戻ってしまいました。

 っ、記憶メモリーとはって…?

 難しいですね。精神的外傷トラウマですかね。

 体力的な《能力》ではない人々は、たいてい精神的外傷トラウマを持っています。

 やはり劣るんです。体力的なのよりも。

 …僕らには、運命さだめがあります。次の世代に命を託して、のです。

 さっき、産まれてくる子は《能力》を選べないと言いました。でも、産む方は産まれる子がどんな《能力》を持って生まれてくるかが、わかる。わかってしまうのです。

 そして、

 自分から産まれる子の能力が低いとわかった者から順に、のです。

 殺され方は、様々。そして、殺されない人は、いない。

 能力が低い、子の親は、目をそらしたくなるくらい惨い殺され方をされることがあります。

 逆に能力が高い、子の親は、殺され方、死に方を選べる。少しも苦しまずに死ぬこともできるし、あえて苦しむこともできるんです。

 《命》を託された次の世代の子がどうなるかは、一般にはほぼ知らされていません。けれど、みんな、どうせわからない、わかっても見ることはできない。そう悟っているので、気にしないのです。

 おかしい、と思います。ええ。

 そして、概念としての《親》は残り、実質の《親》の存在は消えるのです。

 …不思議そうな顔をしていますね。…子はどうやって生きていくのかって…?

 そうですね…。

 ……すみません、わかりません。僕も、なんですけど、物心ついたときにはここで一人でした。まあ、ご近所さんとかとは仲良くしてたんですが…。

 よくわからないことが多いんです、ここは。



「っと、言うわけです」

 思ったより、長くなかったな…。

 それにしても、怖い話だ。

 ハア…。本当に生きていけるのかこれじゃわかんねぇな。

「ありがとう、リオン。少しわかってきた。」

「役に立てたならいいです」

 これからのことはこれから考えよう。…と思ったら、奥の部屋から蒼白い光が。あれは…。

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