第3話 ちょっとずつ増えていく
夢を見る。俺は、本当は死んでいるのではないか。これは、俺が思っているのではない、誰かのかいた上のものなんじゃないか。俺は操られているんじゃないか。
怖くなってきたところで。自分が自分に殺される、真っ暗な闇に溶けてしまう、その直前に、いつも目が覚めるんだ。
今日だって、そう……。
「…っ! ハア…ハア…」
汗だくだ。濡れた銀髪が気持ち悪い。
服や薄い布団は、ぐちゃぐちゃだ。
「大丈夫ですか…? 近頃毎日こうですよ…」
リオンが心配そうに見つめてくる。
「はい、タオルです。…」
「…ありがとう…」
はあ…。
頭の中に蘇る絵を追い出して、タオルで汗を拭く。
ふぅ…。
怪我はほぼ完治した。
『僕は医者のようですが、違うんです。』
ってリオンが言ってたっけ。ドヤ顔は覚えてるな。
そういや…。
「俺がここに来たとき、リオンさ、『怪我が治るまではここにいていい』って言ったよな」
「? はい」
少し聞きにくいけど、聞かなくちゃ…。
「…俺、もうすぐ完治だろ、この様子だと。このあと俺、どうすりゃいいんだ? このまま放り出されても、生きてけない」
そう。俺はどうすりゃいいんだよ。この世界に来たばかりで。
リオンが、すごく悩んでいる。そんなになのか?
聞かなかったほうが良かったかもしれないが…。
よし…!
「頼むっ!!!」
リオンに向け手を合わせる。ダメか…? いやダメでも困るんだが…。
「そうなんですよね…まったくあてとかもないですもんね…」
居候…だめか…?
「居候したいですか?」
よしきた! リオンナイス!
この勢いで…。
「お! 良いのか!?」
「ええ、別に。いいですよ」
「っしゃ! …っ痛!」
喜んだ途端に肩に痛みが。まだ完治はしてないって、忘れてた…。
「大丈夫ですかあ?」
その言い方…。半分馬鹿にされてるな…。くっそぉ…。
「まあ、僕以外に迷惑はかかりませんしね」
僕以外…?
何故か、底なし沼にはまっていく感覚がする。
「どうしたんですか? そんなに腑に落ちない顔をして」
僕…以外。か。
「あの…親とかはいないのか? どう見てもリオンは中学生くらいだろ。まだ親と同居してる年齢だ。なんで、リオンだけなんだ?」
辛いことを聞いているかもしれないが。
リオンは、少しだけ遠くに目を向けた。何かにためらっている…ようだ。
「ちゅうがくせい…っていうのはわかりませんが、僕は、親がいないんです。親代わりってのも。かと言って、孤独なわけじゃありません。この世界の人々はみんなそうなんです。 …わかってませんね。くわしく説明します」
たぶん聞いても理解できないから、ゆっくりわかろう。
「ここでは、ですね…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます