第75話
アーロンはエアーと光の精霊の存在については納得してくれた。
これからの移動の時にも、みつかりそうだったら手伝ってくれないか、と、俺経由で光の精霊にお願いしてくれた。光の精霊たちはプルプルっと震えてたので、一応、了解って意味なのだろう。
翌朝早く、俺たちはノドルドン商会の行商の集団に加わった。
アーロンは護衛として馬に乗っている。俺は、その前に頑張って乗っている。
「このペースだと、ヘリウス様の方が先にカイドンに着きそうだな」
「どこでアーロンの伝言を受けたかにもよるだろうけど」
まるでのんびりお散歩のようなペース(アーロンにしてみたら)。
俺もアーロンも焦りはあるが、集団の中の方が安全、というのも一理ある。
「よーし、休憩だ」
昼休憩と言われ、みんなが共用のスペースへと集まっていく。
しかし、俺とアーロンは、彼らから少し離れたところの木陰で休むことにした。ジョイソンさんは信用できても、他の面々はなんとも言えないからだ。特に、俺たち同様に護衛についている冒険者たちなんて、余計に。
俺たちは黒パンを片手に干し肉をしゃぶりながら、周囲を伺う。ここまで何度も野営をしてきたせいか、俺もそれなりになってきた……はずだ。見かけは5才児だけどな。
チラチラと俺たちを気にしながら食事をしている、別の冒険者パーティ。嫌な感じではないものの、関心をもたれているのが、落ち着かない。
「エアー、あっちの声、聞こえるようにすることできる?」
『できるぞ』
頼んだとたん、向こうの声が聞こえてきた。
ほとんどが、アーロンに関することばかり。やっぱり、かなりの有名人だったらしい。特に、女性の冒険者が小さい声でキャーキャー言ってる。
「アーロン、もてもてだね」
「ん?」
干し肉をむぐむぐしているアーロン。うん、気にしてない模様。
「いや、あっちの冒険者のおねーさんたちがさ」
「ああ、よくあることだ。気にしてない」
「よくあることなのかよっ!」
モテ男めっ!
「そういや、アーロンは奥さんとか、恋人とか、いないの? へリウスには奥さんも子供もいるって話だったけど」
「俺はまだいないな。へリウス様の話は有名だぞ」
「え、何々!」
どんな話なのかと身を乗り出して聞くと、なんと、へリウスの奥さんは『運命の番』なるものらしい。なんだよ、それ。貴族のご令嬢の護衛として出会ったらしいのだが、最初は散々だったらしい。
「散々って?」
「うーん、俺たち獣人ってのはよ、スキンシップが激しいというか? なんか、それで誤解を受けちまって、相手にしてもらえなかったらしい。それからは、必死に口説いて、なんとか結婚までこぎつけたらしいぞ」
「うん? でも、へリウスって王族なんでしょ?」
「相手は人族な上に、隣国の伯爵令嬢だったのさぁ。元はその国の王太子の婚約者だってのを、奪っちゃったらしい」
「……どこぞの物語かよ。っていうか、アーロンは随分詳しいな」
「ははは。獣人だったら、誰でも知ってる話さ。人族の恋人がいる奴は、同族へのスキンシップはほどほどにってな」
……反面教師か。
今度、へリウスに会った時、笑わないでいられるだろうか……無理だろうな。
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