第49話

 封を開けると、白い煙が立ち上がったかと思ったら、丸い光の玉に変わったかと思ったら、すごい勢いでテントの中から飛び出ていった。


「な、なんだ?!」


 その勢いに、びっくりしたけれど、すぐに、我に返る。


「あ、あれで誰かのところに知らせにいったってこと、なのか」


 今の時点で誰が来るかなんか、俺には予想もつかないが、少なくとも、へリウスの身内であるはずだ。できるだけ、早く来てほしいところだが、いつ来てくれるかなんて、予想はつかない。こればかりは待つしかないんだろう。


 俺は気持ちを切り替えると、再びへリウスの鞄を再び漁ることにした。

 さっそく、魔物除けのお香がいくつか目に入った。

 一応、テント周辺に結界が張ってあるとはいえ、このテントの周辺だけだ。目の前で魔物が待ち構えている状況は極力避けたい。

 俺は自分のマジックバックになっているウェストポーチから、火打石を取り出す。火打石と言いながら、これもしっかり魔道具だ。ホビット族お手製らしく、今の俺にはピッタリサイズ。これのおかげで、すぐに火が付けられるのは便利だ。

 テントの入口から顔を出してみる。うっすらと張っている結界は、テントから1メートルくらい先にある。おかげで、へリウスの足が出ていても助かったわけだけど。

 このテントの機能である結界の厄介なところは、テントの所有者でもあり結界を張ったへリウス自身は出入りができるけど、俺は外に出たら戻れないこと。

 結界から出ないように気を付けながら、テントの外側四隅に火のついたお香を置く。へリウスがそうやっていたのを覚えていたのだ。これでしばらくは周囲に魔物は寄ってこないはずだ。

 安全が確保出来たと思って気が抜けたとたん、くぅ~っと腹の虫が鳴いた。


「……そういや、飯食ってなかったっけ」


 今更ながら、自分が空腹になっていたことを気付く。

 テントの中に戻り、もう一度鞄の中を覗き込む。紐で括られた干し肉の束を見つけ出す。それに黒パン。正直、この世界の干し肉や黒パンは硬すぎて、俺の顎じゃ太刀打ちできなかった。

 今まではへリウスが、干し肉を火で焙ったり、スープみたいのでふやかしてくれたりしてくれたけど、今は、自力でなんとかするしかない。ずっとしゃぶっていてもいいかもしれないけど、余計に腹が減りそうだ。

 他に何かないかと諦めずに漁っていると、小鍋を見つた。


「これに湯でもわかして、干し肉でダシとるか」


 もしかしたら、その匂いでへリウスも目を覚ますかもしれない。いや、干し肉程度じゃ、匂いも何もないか。あんまり期待はできないものの、そう願っていけないことはないだろう。


「よしっ」


 俺は気合を入れると、再びテントの外へと出ることにした。


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