第27話

 魔の森の中は、なかなかに刺激的な場所だった。肉体的にも、精神的にも。

 村の近くでは、魔物というよりも普通に獣たちのほうが多かった。しかし、魔の森は、本当に魔物が出るのだ。何がビックリしたって、コボルトとかゴブリンとか、本でしか知らなかった生き物が動いて、襲ってくるんだ!

 人型の生き物に攻撃するとかいうのに、忌避感があるかと思ったけれど、思ったほどには感じなかった。それよりも恐怖の方が勝ってた。ヤられる前にヤる。そうしなきゃ、ここでは生きていけない。

 わかってたことだけど、ボブさんもメアリーさんも、めっちゃ強かった。

 あんな大荷物背負ってるのに、あの動きは反則だと思う。俺の弓なんか、二人の動きの邪魔にしかなってない気がする。


「何言ってるだぁ、まんず、練習さ、しねぇで、上手くなれるわけねぇべさ」

「んだぁ。ハル、回数だぁ、回数」


 そんな呑気な物言いが似合わないくらいに、激しい攻撃くりだしてるんだけどっ。


「ほれ、最後の一匹、まかせっぞ」

「え、あ、うん」


 風を切る、シュパッと気持ちのいい音が聞こえたと同時に、倒れるゴブリン。一匹いれば、近くに十匹はいる、まるで、あちらでのGみたいな存在。俺のファンタジー知識同様に、女性とかには最悪の生き物らしいので、見つけ次第、討伐するように、と、この短期間でボブさんにも教え込まれた。それくらい、たくさんいたってことだけど。


「ちょーっと、数が多すぎでねぇかぁ?」


 そう言いながら、メアリーさんが嫌そうな顔で、倒れているゴブリンの耳を削いでいる。


「んだなぁ……どっかに、こいつらの棲み処でも出来ちまってるんでねぇか?」

「やだよぉ。まったく、近頃の冒険者は、腰抜けが多くていけねぇな」


 このあたりは魔の森の中でも奥の方にあたるらしい。それでも、ホビットの村がある分、人の動きがあるから、魔物の討伐も少なくはないらしいのだが、俺はそういった冒険者の姿なんて見かけたことがなかった。わざわざ、ホビットの村までは来ないってことなのかもしれないけど。


「ほれ、ハル。これさ、袋につめとけ」

「これ、どうすんの?」


 大量のゴブリンの耳に、げんなりする。


「これは、金になるだよ」

「えっ」

「うちの村にはなかったけんど、町にいけば冒険者ギルドがあるだ。そこで討伐クエストをこなすときに、討伐した証に、この耳が必要になるだ。持ち帰るにしても数が多いと、身体ごとっていうわけにもいぐまい。かといって、討伐した数の申告もせにゃならんからなぁ。まぁ、ハルはまだギルドに登録さ、してねぇから、まんず、登録からだけんど。ちょっとした小遣いくらいにはなるはずだぁ」


 なるほど。あの村の中では、物々交換が主流で、金はあまり見たことがなかった。外の町で生きていくには、金は必要なのだろう。


「ありがとう」


 俺は素直に受け取ると、ウェストポーチから麻袋を取り出して、その中にポイポイっと投げ込んだ。


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