閑話

アルム神の気まぐれ

 創造神アルムは、久しぶりに新たな転生者を求めて、地球のある世界へと勢いよく向かっていた。前回は、人間に邪魔をされてお気に入りの魂を奪われたが、今度こそは、と意気込んでいる。

 いくつもの世界が重なり合う暗い狭間の中を、白いチュニックに同じような白い長いトーガを羽織った、ギリシャ神話に出てくる神のような男が飛ぶように流れていく。

 見た目は、鍛え上げられた筋肉のイケメンなアルムではあるが、実際は、言葉遣いは残念なオネエキャラだったりする。


「あら?」


 いくつかの世界を通り過ぎる途中、黒い蛭のようなものに絡めとられた白い魂が、アルムとは反対方向に向かって、ユラユラと流れていくのが目に留まった。

 基本的に、この世界と世界の狭間には、神々と選ばれた転生者の魂くらいしか流れることはない。その中を流れる物体があれば、当然、目を引く。

 黒い蛭は、なんとか白い魂の中に入りこもうとしているようだが、白い魂は何かに守られているようで、何度も弾き返しているようだ。しかし、それもいつまでもつかわからない。


「……嫌ぁねぇ。しつこいし、みっともない……それに、あの白い子は……まぁっ!? ちょっと、うちの子じゃないのっ!?」


 そう、白い魂は、アルムの管理する世界の者のオーラを纏っていたのだ。

 そして、気に入らないことに、その黒い蛭のような物も同じ世界のオーラが滲んでいる。黒い蛭は何が何でも、白い魂を取り込みたいようで、その執着には嫌悪を覚えたアルム。


「何々、どういうこと? ああ、でも、あっちの神との約束の時間もあるし……もう、えいっ!」


 苛々したアルム神の指先から、レーザービームのようなものが放たれた。それは黒い蛭に直撃、一瞬で粉々になっていく。白い魂はそのまま流されていくが、あっちにフラフラ、こっちにフラフラと、ちょっと心許無い。


「あのままじゃ、どっか他所に落ちちゃいそうね……もうっ! あっちには後で謝りをいれるしかないわ……それよりも、あの子のほうが大事ね」


 急いで白い魂の元へ近寄ると、掌で優しく抱え込む。


「ああ、この子は……そうか……あの時の……うーん、せっかく逃がしてあげたのに、あっちで捕まってしまったのね。仕方がない……もう、あの時間には戻れないけれど……私の加護をあげましょう……厳しいけれど、頑張りなさい」


 アルム神は白い魂に、口づけをすると、白い魂はぼんやりと光を纏う。

 そして、少しだけ勢いをつけて流してやる。


「このままの流れにのっていけば、無事につくでしょう……あっ! ちょっと、私も急がなきゃじゃないっ!」


 暗い狭間で、互いがそれぞれに離れていく。

 白い魂は、いつしか徐々にスピードを上げ、ついには創造神アルムが管理する世界へと、落下していった。


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