第7話 靖国神社
──ここね。
皇居近辺には基本的に弱い反応しか感じられなかったが唯一強い反応を感じ取った場所にセシリアは向かった。
そこは──靖国神社だった。
靖国神社は戦没者を《英霊》として祀る神社として有名。
果たしてそこにどんな反応があったというのだろうか?
靖国神社正面の鳥居前に降り立ったセシリア。ここまで空翔で空を駆けてきたが靖国神社上空には何かしらの阻害が常時働いているようで鳥居前に落ちるように降りたが正解だ。
ここは──何かの塒なの?そしてこの無意味に大きな門は何なの?
それは門ではなく鳥居である。鳥居とは神様が通る道とされ、門としての意味を持つが信仰心のないセシリアが鳥居の中央を通ろうが脇を抜けようがどちらでも良い。
バチッ!バチバチバチ!
それでもなぜだか鳥居をくぐろうとしたセシリアに激しい電撃が襲いかかる。
「ちっ……痺れ罠か。良くある罠ね。《レジスト》」
セシリアの周囲を金色の膜が包み込む。再度鳥居をくぐろうとしたセシリアを再び電撃が襲うも金色の膜に弾かれる。
何事も無かったかのように中へと入っていくセシリア。
本来普通の人間には発動しない電撃。どうやらセシリアは招かれざる客の様だ。
「キキキキッ。やっと来ましたねぇ。白銀の勇者様が……キキキキッ!」
欅の木の枝の上から甲高い声の不気味な笑い声。ウェーブがかかった長髪で細く小柄な男性は猫背で膝を折りセシリアを伺っていた。
「なに?あの気色の悪い奴は……」
一方セシリアもかなり先の方にいる気持ち悪い男の存在に気がついていた。
「まぁいいわ。……縮地」
空間を跨ぐ必要性も感じなかったセシリアは普通の縮地を発動。
「!?!?」
髪の間から覗く切れ長の双眸がまん丸に飛び出しそうになる小柄な男。
セシリアの縮地は仙人の域をとうに超えた絶技。地面が大きく抉れる程踏み込みたった1度の動作で10mの距離をまるで無かったかのように縮める技。
数度縮地を発動すると、豆粒のように小さかったセシリアがまるでその距離が無かったかのように激しい風圧と共に目前に現れた。突然現れたセシリアに余裕ぶっていた小柄な男はバランスを崩し欅の木から地面へ落下。臀をペタンと着けて座り込んだ。
「!?キキ…」
「私に何か文句でも?」
冷徹な双眸で飄々と告げるセシリア。その隠すつもりのない殺気を前に小柄な男は息を飲んだ。
「い、いえ…キキ」
「そう?あの電撃は貴方かしら?ちょっと痛かったのだけど。」
本当はまるで痛みを感じていなかったが敵意を向けられて黙っていられるほどセシリアはできた人間では無い。
「……オレじゃない……」
「ふぅん。じゃあ……そうね……ここを案内してもらおうかしら。」
「!?キキ……オレが?案内?」
「そうよ。気味が悪いけれど貴方しか居ないから。」
「お………オレをバカにぃするなぁぁぁぁぁぁあああああああ!」
突然大声を出した小柄な男はどこから取り出したのか短刀を両手に持ち切りつけてきた。数度の剣戟を交わした後互いに距離をとる。
「ふぅ……結局やるんじゃない。でも良いの?貴方死ぬわよ?」
そう言いきった瞬間。彼の首の皮は薄く切られツーっと緑の血が垂れる。
「へぇ……貴方魔族なの?」
「……違う……」
「この世界では違うのかしら……?まぁいいわ。私に敵対したんだから死んでもらうわ。」
「………《絶剣──斬》」
セシリアのポツリと呟いたその声はもう彼に届くことは無い。それは絶剣を発動したからだ。
絶剣──かつては剣神と謳われた偉丈夫…前の世代の勇者一行の剣士である。
剣神カイジンは2mを超える筋骨隆々の剣士だったが、体躯に似合わず太刀筋は柔らかい。全ての物を優しく……そしてどんな硬度な物でも確実に切断した。
そんな彼の技の中でも神技、絶技は群を抜いた技だった。セシリアであっても神技は会得できなかった。神技を会得して初めて剣神とな乗れるようになる。神技をパメラが会得した時には驚愕したものだ。
絶技には種類があり、派生はいろいろあるが絶剣は斬る・薙る事に特化した技である。
《絶剣──斬》
この技は対象物を指定し確実に切断する抜刀術。技名を声に出した時には剣は抜かれ、対象物は粉々に斬られ後には何も残らない。微塵切りとでも言った方がわかりやすいだろう。
気味が悪い小柄な男が居た場所には大きな血溜まりと肉片が転がる。ブンっと聖剣レシテンザを振り緑の血液を吹き飛ばす。
地面に広がる緑の血溜まりは蠢きだしみるみる変形し魔族の特徴の一つでもある
「はぁ……やっぱり魔族じゃない。旅行先にも魔族がいるのね……。まぁいいわ。私を敵に回した事後悔なさい。」
セシリアは
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