6.夏の風物詩

 初めてこのペットボトルのラムネと遭遇したときはカルチャーショックだった。瓶ラムネしかラムネとは認めん! と最初は思ったけれど、中身の味は変わらないし瓶より軽くて扱いも安全、回収の手間もない。

 ビー玉を落として開栓する楽しさはそのまま、しかもボトルが分解できるようになっていて簡単にビー玉を取り出せるという痒い所に手が届く仕様。さすが日本、製造メーカーのサービス精神。


 そりゃあ、お祭りなんかで子どもに配るなら安全な方がいいよねって思う。でもやっぱり、瓶とビー玉が触れ合う涼しい音が懐かしいなーとも思う。

「リターナブル」なんて言い方を始める以前から日本には一升瓶とか牛乳瓶とか専用の瓶を再利用する文化があったのに、便利なプラスチック製品に押されてラムネの瓶は製造されることもなくなってしまった。


 プラスチックはとっても便利。でもごみの問題もあるわけで。そういえば、美化活動でごみ拾いをするときにもプラスチックのごみは多い。お弁当の容器やペットボトル、お菓子の空き袋や、そうそう未だにたばこの吸い殻も多い。ごみのポイ捨てってほんと腹が立つ。

 ごみは消えてなくならない。誰かが片づけない限りずっとずーっと残るのだ。山の中にも。海の中にも。それを食べてしまった動物の体の中にも。それをいったいどういうつもりでポイ捨てするのか。ポイ捨てした奴の口の中にそのごみを突っ込んでやりたい。


 なんてつらつら考えていたら、明るい声に呼びかけられた。

「トーワーさんっ」

 イケメンのダンナさんと一緒にやって来たなるみだった。なるみのダンナさんは写真で見た通りの男前で「はじめましてー」なんて挨拶しながら目の保養だと思ってしまった。慎也さんやシモンとは違う系統の顔の良さなんだもの。


 仲良く売店を眺めてミニ茅の輪のお守りを買ってくれた滝沢夫婦と手を振って別れると、

「今のなるみちゃん?」

 今度はマモルが寄ってきた。どうやって誘ったのか隣にはあんずがいて、この野郎いつの間にって思う。

「暑い中おつかれさまです」

 あんずははにかんだ笑顔と一緒に、私にオレンジジュースをくれた。んもう、かわいい、大好き。


「なあ、なあ。さっきの美人の巫女さんは? もういないの? いつもと同じ人だよな。ふたりとも美人だよなあ」

 付き合いのいいマモルはイベントごとに来てくれるのだが、その巫女さんの片割れが私であることに気づく様子がまったくない。不思議だ。

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