2.町の小径
にしてもうちの学食のラーメンは不味い! なんのコクもないスープにゆるゆるのたまご麺、昔懐かしの中華そばといえばそうかもしれないけど、不味いにもほどがある。
この不味さで存在を許されているのだからラーメンに対するみんなの懐の深さを感じずにはいられない。不味いラーメンも美味い的な。さすがニッポンの
……で、なんの話だっけ?
「バカにすんなよ、真っ暗闇で馬の頭がいきなり出てきてみろよ、ビビるぞ」
「真っ暗ってわけでもないって言ったじゃん」
「真っ暗だったら見えないだろうが。見えなけりゃ平和だろうが」
「つまり、そのお化けは自分で光ってたりはしなかったわけね」
「お、おう。そうなるか」
ふうん、と目を細めて私はラーメンのどんぶりを持ち上げて残りのスープを飲み干した。
うう、健康に悪いことをしちまったぜ。この背徳感がたまらん。今日は二倍トレーニングを頑張らねば。
「ごちそうさまでした」
私はきちんと手を合わせて頭を下げる。マモルは自分が作ったわけでもないくせにおそまつさまでした、なんてつぶやいている。
空になった食器を回収コーナーに置きに行ってから私たちは学食を出た。
「じゃ、代返よろ~」
デイバッグを肩にかけてさっそく手を上げた私に、マモルはきょとんと眼を丸くする。
「へ?」
「さっそく行ってくる。その馬頭観音のとこ。南口を左に行けばいいんだよね?」
「あ、ああ。行けばわかるよ」
「りょーかい。行ってきまーす」
しめしめ。講義をサボるいい口実ができたぜ。私はいそいそと駐輪場に向かって愛車であるイエローのビーノを引っ張り出す。
午後の講義に合わせてやって来る顔見知りの学生に手を振りながら私は逆にキャンパスを出て、かろうじて舗装されている農道の坂道を下り始めた。
電車の待ち時間が長いなら原付でくだんの駅まで行こうかと考えながらとりあえず最寄りの駅へと向かったのだが、時間がちょうど合ったので切符を買って二駅向こうのマモルがいつも使っている駅まで移動した。
南口は小さいけれど小奇麗に改装したらしく、ロータリーの端にある交番の建物もポップな見た目の新しいものだった。その裏の小径へと私と同じ電車を降りた数人が歩いていく。なるほど、ここが抜け道か。
マモルの話の通り、幅の狭い砂利道だった。この砂利もまだ白かったから、最近敷かれたものかもしれない。でも既に所々で層が薄くなりその下の土がむき出しになっている。
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