第4話 戦う二人

「なぁ、智…なんで、たまの非番がお前と一緒なんだ?」

「それは、こっちのセリフだろ?休みの日まで敏夫のお守りしなくちゃならないんだからさ」

「お守り?俺みたいな好青年つかまえて、お守りはないだろ?」

「なんだ。捕まえてほしかったのか?」

「何で非番なのに手錠持ってるんだよ!」

「刑事の鑑だからな」

「お前が鑑なら、俺は警視総監になれるよ」

「ほぉ~」

「待て!銃口を向けるな!!…って、なんで、そんなもん持ってるんや?支給されてるのと違うやろ、それ?」

「鑑識からガメてきた。どうせ入手ルートも割れてるヤツだしな」

「クビになるぞぅ」

「仕方ないな、お前にもやるから内緒にしとけよ?」

「マジ!?ベレッタがいいなぁ♪」

「ベレッタ?…部屋にあるから持ってっていいぞ」

「…どんだけ持ってるんだよ」

「凶悪犯罪と戦う為には、強力な武器がないとなぁ」

「…クビにならんようにな」

「その時は、ベレッタの事話して、お前が主犯になるからいいさ」

「へぇ~」


「ところで、今日は何するんだよ?」

「久々にビリヤードで勝負しよう」

「いいだろう。で、負けた奴は?」

「夕食の支払いと、その後の飲み代の支払いを持つ事にしよう」

「い、いいぞ」

「何、ドモってるんだよ。はっはぁ~ん、さては自信がないな?」

「し、し、し、失礼な奴だなぁ」

「棒読みで、ドモるなよ」

「キャリアに差はないんだから、いい勝負ができるさ」

「じゃ、ココにサインしろ」

「何だよ、コレ?」

「負けてから『無効や!!』とか言われるの嫌だからな」

「そんなに信用ないんか、俺?」

「・・・・」

「射抜くような目で見つめるなよ。サインしとけばいいんだろ?…お前のサインの下でいいのか?」

「そうそう、素直にサインしたらいいんだよ。枚数あるけど、全部にな」

「何で枚数あるんだよ?」

「互いの控えと、証拠としてマスターに預けとく分と保管用だよ」

「ふ~ん…ほいよ」

「よしよし…クククッ」

「なんて笑い方してんだよ」

「書類はキチンと目を通さないとな」

「何?」

「いいものを手に入れたぞ。クククッ」

「見せろよ!」

「勝負に勝てばいいだけだろ?」

「…わかったよ。真剣勝負だからな」



「ナインボールでいいんだよな?」

「他に何をやるんだ?」

「……」


「あっ!!今の的玉より先に9番かすめただろ?」

「言いがかりだ、男らしくない奴だなぁ」

「そういう問題じゃなくてだな…」

「残り時間は5分、8-3で5セット差…これ以上やっても逆転はありえないと思うんだが?…差は広げたくないって事か?」

「かすめたように見えたんだよ」

「仕方ない奴だな。じゃぁ、VTRで確認してみようか?VTRどうぞ♪」

「……」

「……」

「……」

「……」

「ホンマや、当たってへん」

「だから言っただろ」

「…ってVTRなんか、あるわけないやろ!」

「今、当たってへん言うたやないか!」

「何で関西弁なんや!」

「うつったんや!」


「さてと、さっきの約束を叶えてもらうとしよう」

「夕飯ぐらいいくらでもご馳走したるわい」

「それだけだったか?」

「飲み代も払ったるわい!」

「まだあるだろ?」

「……」

「4枚目を読んでみろよ」

「何々…『敗者は一生奴隷として、智につくします』何やコレ?」

「書類にサインする時は、しっかりと文面をチェックしないとなぁ。クククッ」

「こんなん無効や!サギやぁ!!」

「やかましいぞ、ポチ!」

「ポ、ポチ!?」

「仕方ないから、今日一日『ポチ』として過ごしたら許してやるよ。なんて優しいんだろうなぁ。…うんうん」

「あのなぁ~」

「じゃ、ジョニーにしとく?」

「古い話持ち出すなよ!」

「セバスちゃん?」

「違う!それに発音がおかしい!」

「わかったよ。ジャイアンがよかったんだな?まさか、ソレがいいとはなぁ。ま、自分が言い出したんだから、ジャイアンのがいいか。明日から『ジャイアン刑事』として、頑張ってくれたまえ!」

「なんで、そんなんばっか覚えてるんや…時間延長しようぜ?」

「ソコには二時間勝負って明記してあるだろ」

「…ホンマや」

「諦めるんだな、ポチ。ノド渇いたからからコーラ買ってきて、おつりでポチも自分の買っていいぞ」

「ホンマにポチ扱いなんか?」

「一生つくす方がいいのか?」

「…く、屈辱やぁ!こんなオフ最悪や!!」

「文句言ってないで、コーラ!急げ、ポチ!!」

「でっかい声ださんでも聞こえてるわい!」

「誰が主人かわかってないようだな、ポチ?」

「く、クッソ~」


「それじゃ、コレはまた違う時にでも使うとするよ」

「コレ?何の事だよ?」

「4枚目だけと思ったのか?」

「サギや!おまわりさ~ん!!」

「刑事ならココにいるだろ?」

「…一休さぁ~ん!!」

「違うだろ?」

「…何がだよ?」

「明日からジャイアンなんだぞ?」

「ど、ど、ど、ドラえも~ん!!!」

「わかってるんやん」

「コレじゃ、のび太だろ?」

「細かい事は言いっこなしだぞ、ポチ」

「最悪や!次のオフでリベンジや!」

「懲りない奴だなぁ~」

「俺の負けが確定してるような言い方すんなや」

「だって、ねぇ?」

「何だよ」

「敏夫だし」

「だしってどういう事や」

「また次のオフもポチだな」

「絶対に負けない!」

「負けたら?」

「3枚目の条件を実行してやるよ」

「内容知らないのに?」

「負けない!」

「その根拠のない自信はどこからくるんだ?」

「力強い決意と言ってくれ」

「後で『無効や!』とか言うなよ?」

「何にでもサインしたるわい!」

「…クククッ」

「待った!インチキは無しやぞ」

「確認したらいいだけだろ?」

「グッ…」


「じゃ、夕飯食べに行くぞ、ポチ!」

「…わかったよ」

「わかってないなぁ、『ワン』だろ?」

「ふざけんな!」

「何か言ったか?ポチ?」

「…クゥ~ン」

「できるんじゃないか、行こうか、ポチ」

二人は笑いながら店を後にした。


Fin

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