・人類最後の王
火花達は最上階へ向かって階段を歩き始めた。一歩一歩踏みしめるその度にこれまでの旅路を思い出していた。龍達との出会いと別れ、そして殺したり殺されたりした。目的のためとはいえ、死ぬことを奪い、意志を奪い、多くの異種族を無理に従わせた。自分が何度も神の手先として異世界を旅していると知った。人間を裏切ってもここまで来た。仲間を作り、力を合わせ、力を得て。
私は、この戦いが終わった後……どうするか。
ミシロは自分達ライトニングエルフが絶滅寸前まで追い詰められた復讐のため火花についてきた。充分なほど復讐は果たした。火花についてきてよかったと思う反面、これ以上何を自分が望んでいるのかわからない。火花がこれ以上何を望むのか、それ次第では……。
ロードもまた復讐のため、異種族を収めていた魔族の生き残りとしてここまできた。処刑寸前だった自分の運命を変えてくれた火花への恩を返すため。そして今は火花の力強さだけでなく、恐ろしさを感じていた。ミシロのように火花の行く末を見届けようと。
ティガは一切後悔はなかった。ダークライトエルフでありながら人間に敗北し、実験材料になるところに現れた火花は神にも見えた。心から彼女を信じている。少々命に対して横暴なところがあるが、そうでなければ生き残れないのが現実だと考えているため気にはしなかった。
アリアは火花と壮絶な戦いの末敗れた。満足いく死に方をしたはずが、己の中の後悔と人間への恨みを火花に見いだされ復活した。今となってはこうして火花とともに道を進むことに喜びを感じていた。そしてこの戦いが終わった後火花がどうするのかも気になっていた。
四人が王のもとへ走る中、ミャノンはメタトロンの元へと戻ってきていた。城下を走っていたところをメタトロンに強制的に帰還させられたのだった。
「メタトロン様!何故戻したのですか!ご主人様がまだ!」
「黙りなさいミャノン。貴方も気づいているでしょう。今回の火花がどれだけ危険か。人の姿を得てまで守るべき者ではないわ」
「で、ではご主人様を……?」
「この戦いが終わった時、彼女を消します」
「そ、そんな…」
ミャノンはこれまでの旅路を思い出した。初めて出会い、困惑する初々しい姿。強大な敵との闘いと別れ。彼女が戦う中で自分が見ているだけの存在でありたくないと願い、救いたいと願いこの姿となった。その意味を、今、忠義を問われている。
神か一人の少女か。
「ミャノン、貴方はここで待ちなさい。」
「私は…俺は……」
「彼女の元で戦いたい!」
ミャノンは火花のいる世界への扉へ飛び込んだ。
「ミャノン!?」
そして、火花達は王の間の扉まで来ていた。
巨大な扉の向こう。この先でヴェルカンディアス王と私の世界へゲートを繋いでいる魔術師達をぶっ殺せば全部が終わる。
「さぁみんな、覚悟はいいね?」
さて、自分達以外の人類がもう死んでいるって現実を突きつけられた顔を拝みに行こう。私はダークルージュに纏った闇と炎で扉を吹き飛ばした。
「こんにちはー。人類閉店の時間だよ…って、マジ?」
目の前には予想していなかった光景が広がっていた。王の間には魔術師が何百人もいたのだろう。その無残な”死体”だけが転がっていた。しかも空にある魔法陣はすでに消えかけている。
「ど、どういうこと…?」
『どうもこうもない!』
「!?」
火花達はとっさに飛び上がった。今いた場所へ巨大な拳が振り下ろされ爆発した。巨大な”黒い獣”が現れたのだった。数十メートルはある大きな身体と黒い毛に覆われた獣はすぐに何者か分かった。
「お前、ヴェルカンディアス王ね?」
「こんな化け物が!?なんでこんなことに?」
ミシロの驚愕に答えるようにヴェルカンディアス王だったものが叫んだ。
『人間はもはや終わりだ!異世界への侵攻などもはや意味を無くした!ならば貴様らと相打ってやるまで!ヴォォォォオオオオ!!』
その雄たけびに空気がびりびりと震えた。強大な魔力を感じるその存在だが、火花達は全く臆することはない。
「魔法で人の身を捨てたか。みんな、こいつを殺そう!」
「はい!火花様!」
「魔族の恨み、思い知りなさい!」
「一発の蹴りじゃすまねえからな!」
「私をさんざん実験したこと、忘れてないだろうなぁ。」
次回、ヴェルカンディアス王との決戦
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