・人類の最後


 王の間で火花達はヴェルカンディアス王と決戦となった。火花はダークルージュで一気にヴェルカンディアス王へ斬りかかった。


「死ね!ヴェルカンディアス王!」


 ミシロ達も斬りかかる。しかし魔力で異常な存在となった”獣の王”に5対1の戦いのはずが同格の戦いを強いられた。獣の王は闇を纏い、それが攻撃を無力化してくるのだ。


『ふははは!最高だ!人間の終わりのはずだがこんな楽しい戦いができるとは!王という立場でなくては味わえなかっただろう!礼を言うぞ死人の目!』


「楽しんでる……キモ。それに私は東雲だよ!」


『無駄だあぁ!ゲートに残った力を全て取り込んだ私は最強だ!』


「とぉりゃ!!」


 ティガの蹴りが獣の王の背中に直撃するが、王はただ不敵に笑っている。ミシロが魔法の火球を織り交ぜて分身して剣撃を喰らわせるもやはり効果はない。


「ご主人様!ここはお任せを!」


 チェルノボウグ不死隊が物量でぶつかるが、あっけなく散らされた。


「うん、知ってた。」


「アリア!」


 ロードが荊を王に絡ませ、アリアと共に斬りかかった。


『ぐっ!小癪な!』


 唯一アリアの持っていた勇者の輝く剣、響姫だけが闇を少し斬り、本体を傷つけた。


「光…そうか光ね!」


『グォォオオオ!!』


 5人が弾き飛ばされたが、ダメージはない。その様子に獣の王も内心焦っていた。このままではただの消耗戦になる。そのため火花にとある提案をすることにした。


『ふぅ…どうだ。私と組んで新たな世界を支配しないか?半分は貴様らにやろうではないか』


「半分…か。アハハ!やだよ!」


『なに?』


「異世界の人間なんて、燃やし尽くしてやるんだから!」


 火花がダークルージュを天に掲げると、ミシロ、ロード、ティガ、アリアは力を集めて剣へと向けた。その力を集めたダークルージュが光り輝き、長刀へと姿を変えた。その光は虹色に輝き、獣の王を纏う闇を消し飛ばす。


『な、なんなのだっ!?なんなのだこの光は!?』


「消え去れえええええ!!」


 火花は飛び上がり、ダークルージュを獣の王の頭へ振り下ろした。頭から身体を真っ二つに切り裂き、王は燃えていく。


『よく…見ておけ……お前が……この世界の…人間をおわらせ…たの…だ』


「三日くらいは覚えておいてあげる。ハッ!」


 最後に横一文字に切り裂き、完全に獣の王、最後の人間は消え去った。


 人間の歴史の終わりだった。


「お…終わったのですね。やっと、火花様の戦いが。」


 火花が一息呼吸したその時、城が揺れ始めたのだ。


「なに!?」


 穴の開いた城壁から空を見ると、消えかけたはずの魔法陣が再び輝いている。しかし今度は赤く異様な輝きを見せているのだ。


「ミシロちゃん!あれはどうなってるの!」


「魔法陣が暴走してます!さっきの王が取り込んでいた魔力が急激に魔法陣へ戻ったために起きたんだと思います!このままではあの巨大魔法陣が爆発してしまいます!」


「チビシロ!もしあれが爆発したらどうなる!?」


「他の世界へ渡るほどの魔力量の大爆発です。この世界は、ただの塵になりますっ!」


「ダメよ!まだこの世界では生き残った異種族がこれから立て直していかなきゃいけないんだから!」


 ロードの悲痛な叫びは地鳴りに消えていく。


「死人の目、どうする」


「どうするもこうするも、あの魔法陣をぶった切ればいいんでしょ」


「いけません火花様!切ればもちろん魔法陣は消えるでしょう!しかしかなりの魔力量です!衝撃で近くにいるものは完全に消えてしまうかもしれません!」


「ならみんな行きなさい。”復讐の狼”のみんなを避難させて。ミシロちゃん、ロード、ティガ、アリア…ここまでついてきてくれて…ありがとう。全然主人らしくないことばっかで、ごめんね?ミャノンみかけたら、よろしく言っといてね」


 火花はダークルージュで四人を城壁から吹き飛ばした。吹き飛ばされていくミシロ達を見つめるその目は、とても優しかった。


「火花さまああああああ!!」


 ミシロ達の手はすでに届かず、静かに火花はダークルージュを構えた。


「ちょっとかっこつけすぎだったかな。さすがに不死でも塵になったら死んじゃうかなぁ。」


 崩れかける城の中に息を切らせて走ってきた者が現れた。


「ご、ご主人様!遅れました!」


「ミャノン…無事だったんだね。貴方もそこから飛び降りてみんなと避難しなよ。ここまでやった私のケジメをつける。」


「最初の相棒として、せめて最後まで共に戦わせください」


「ふふ、馬鹿だねっ」


「聞き飽きました。城下からはもう皆避難したようです。行きますか?」


「んじゃ、ぶった斬りに行きますか!」


 二人は飛び上がり、魔法陣へと剣を向けた。


「「うぉりゃあああああ!!」」


 魔法陣が斬られた瞬間、空に光が満ち、世界中に魔力が戻っていった。人間の消えた世界に、希望の光が満ちていった。砂漠まで待避したミシロ達は、ただ呆然とそれを眺めるしかなかった。


「火花様…いかないで…。これがあなたの望みなんですか……」


「火花様…」


「あねさん…」


「死人の目…」


 次回、最終回

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