・私との決着

 

 闇と炎の火花の力は圧倒的だった。ピンク色の火花は武器や鎧を切り替え、次々と戦闘スタイルを変えてくるが全てねじ伏せられていく。そして最後には顔面を鷲掴みにされ、壁にたたきつけられた。


「ガハァ!?」


 大量の吐血が火花に吹き飛ぶが、炎が一瞬で蒸発させた。


 私の心は一切負ける気がしなかった。そして心の奥で何かがずっと燃え続けている。今まで忘れていた、いや、見ないように、感じないようにしていた気持ち。


 命を賭ける楽しさ。


 桃色の火花が毒づいた。


「クソ!クソ!なんなの!ほんとに貴女3番目!?」


「何番目だとか知らないけれど、とりあえずお前は私達が殺すから安心してぇ?」


「ペッ。ふん、知らない力だけれど勝てないわけじゃない。たった二人でどうなるっていうのよ」


 血反吐を軽く飛ばし煽るピンク色の火花は理解していなかった。”私達”の意味。たった二人などではない。仲間でもない、部下でもない、操り人形なんかでもない。それらを超えた存在が火花にはいることを。


「今すぐぶっ殺してや……っ!?」


 反撃に出ようと一歩踏み出した瞬間、ピンク色の火花は自分の言葉の撤回を叩きつけられた。足に荊が巻き付いて身動きが取れなくなっていた。


「ほら、今すぐ火花様をぶっ殺すんでしょ?やってごらんなさいよ」


「こ、この世界の魔族!?しっかり根絶やしにしておけばよかったわっ!死ね!」


 何の魔力も加えていない大振りした大剣は液体化したロードをすりぬけて無効化された。


「こんのぉ!」


 無理矢理荊を引きちぎって飛び上がった。しかしその先にはすでにティガが光の蹴りを脳天に振り下ろしていたのだ。


「おっと逃げんじゃねえよ!」


「ゴガァ!?」


 本来なら脳漿が飛び散るはずの威力だったが、何故か生きている。しかし相当なダメージらしくふらふらと土埃の中から立ち上がった。


「い……一度逃げなくちゃ…。この世界が滅んでも次に……。グガッ!?」


 唐突に背中を斬られ、跪いたピンク色の火花の耳元で囁くような少女の声が聞こえる。


「次なんてないんですよ。今あなたはここで死ぬんです。無様にズタボロの布切れのように。」


「なっ!?」


 残像で視界を撹乱するミシロが、雷の矢でピンク色の火花を取り囲んだ。顔が一気に青ざめた。ミシロが指をパチンと鳴らすと幾千もある矢が体中を撃ちぬいた。


「が……ぐっ…あ……」


 鎧は黒焦げになり、剥がれ落ちた。もはや全裸になった彼女はダメージで起き上がれない。そこへチェルノボウグ不死隊が取り囲んだ。手には槍や剣が握られている。


「や…やめ……」


「不死隊のみんな、やっちゃっていいよぉ?」


「ハッ!」


 不死隊は火花の命令で一気にピンク色の火花をめった刺しにしていく。体中を斬られ、刺され、千切られ、踏みつけられていく。そして最後にアリアが勇者が持っていた剣を腹へ突き立て、貫通して地面に突き刺さった。


「ガッ!?」


 噴水のように血が噴き出した所で火花が声をかけた。


「はいはいストーップ。そこまで。それ以上やると気持ち悪くてごはん食べられなくなる。あれ?ミャノンは…肝心な時にあのボケ。まあいっか。さぁて、自分の肉で桃色になった火花ちゃん。どうしよっか」


「た…すけ……」


 右手以外の手足が斬り落とされたピンク色の火花は必至に私へ手を差し伸べてきた。酷く滑稽。私の顔だし、私の声だし、なのに無様で腹が立つ。


「私の目的はこの世界の人間を滅ぼす……いや、異世界を燃やし尽くすこと。貴女もちゃ〜んと燃やし尽くしてあげる」


 私は彼女の右手を踏みつぶし、ダークルージュに炎を纏った。


「そんっ…な。こんな…ところで…わたし……は」


「貴女の力はいらない。燃え尽きなさい」


 私はダークルージュを振り下ろし、業火で包んだ。


「さぁ、異世界の終わりが来たわよ」


 私達は最上階、ヴェルカンディアス王がいる場所、そして私の世界へ繋がる魔法陣を放つ場所へと向かった。

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