アンインストーム
ジャパリパーク一周旅行と称した
一般人を招いてのプレオープン前の園内見学も
2日目に突入した。
個々人でのハプニングこそ多少あったものの、現在のメンバーでは特に体調面での問題は見受けられない。良かった良かった。
まぁ昨日と変わったことがあるとしたら
ロードランナーたっての要望でペロくんペアと
雪衣ちゃんペアの座席がそのまま入れ替わったくらいだ。
……ん、なんだって?
『映像作品ならまだしも、文面だけじゃ分かり難い』?
あぁそうだったそうだった。
いつもみたいに座席表を出すの忘れてたな。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 席の配置
前
フ継 澄
雪ジョ ロミ
松ア コタ
けサ ペキ
後
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ほら、これなら分かるだろ?
メタいとかそういうのは気にするな。
まぁ、これならペロくんに澄禾の正体がバレるって事はないだろう……。
多分ジョフかロードランナーが昨日仲良くなってバスでも隣同士になりたくなったとかそんなとこだろうけど、偶然とはいえロードランナー、ナイスプレイだ。
……いやペロくんから八尺様じゃないか
疑惑出てるし、そこ解消させるのが賢明だったか?いやでもそうすると澄禾姉は何者なんだって話になって正体明かす必要が出てくるか。
……まぁいいや、どのみち今日の午後には
本人からネタバラシされるんだ。
その時にペロくんの誤解も晴れるだろう。
現在はセトウツミ大橋を抜けてアンインを走ってるところだ。
地図アプリと照らし合わせると次の目的地である探検隊拠点まではあともう15分程か。
「そう言えば継月さん」
「何?姉さん」
「昨日の宴会、あまり他の方に干渉してないようでしたけど」
「あー……。まぁ旅行初日だし、まずは相方のアニマルガールとの打ち解けさせるのが優先かなぁって思って。それに、会って初日にいきなり距離詰められるとか過剰に接触するのをそんなによく思わない子もいるかもだしさ」
そう言いながら懐から煙草……ではなく煙草っぽいデザインをした箱を取り出し、ドラマとかでよく見る要領で中に入ってる棒状のラムネを一本だけ取り出し咥える。
「つまり、参加者同士が交流を交えるとしたら今日辺りからだと?」
「そうなるね」
フルルが物欲しそうな目で見てたので
一本出して口元まで持っていくと咥えた。
「ところで二人が咥えてるそれなんですか?」
「固形タイプのジャパリラムネ。丁度昨日切らしててね、ホテルの売店に有ったから買ったんだ」
なんて話してると直ぐ後ろの席のロードランナーとジョフに一本くれとせびられた。
あと数箱はストックあるし別にいいかと一本づつ手渡ししてやった。
「そうでしたか。てっきり
「いや吸うわけないでしょこんな場所で」
流石にそこら辺は弁えるさ。
俺とミライさんを除くと未成年の子が大半だし、フレンズもいるしな。
「それにあんなの、金払ってまで自分で自分の身体を追い詰めてるだけだし」
大体、煙草なんてもんは百害あって一利なしな
代物さ。発ガン性物質を多く含むタールに
動脈硬化を進行させるニコチンや一酸化炭素。
ニコチンには依存性まであり、
更には燃えてる時に先端から出る煙である
副流煙には喫煙者が体内に取り込んでる主流煙に比べタールやニコチンは3~5倍、
発ガン性物質に関しては30倍も含まれているそうじゃあないか。
それにより吸ってる自身じゃなく周囲の人の
人体にも影響を及ぼす、
受動喫煙とか言う余りにもデカ過ぎる上、
貰ったところで微塵も嬉しくないおまけが
此方の否応無しで少なくとも喫煙者を中心とし半径7メートル以内に居る対象へと漏れなく
全員サービスで否応なしに送られてくるときたもんだ。正直、たまったもんじゃあない。
成分的にはそこまでヤバくないから法に触れてないってだけで、見方変えれば大麻や覚醒剤の
類いと多分なんら変わんないぞ?あれ。
フレンズの身体機能を害してたまるかっての。
おまけで金銭的な話で行けば、吸う人によっては1日で1箱は開けるのもザラだそうだが
1箱500としたら週に3500、月辺り15000は 使う計算だぞ?1日2箱開けるとしたら額は
その倍だ。
ニコチンによる依存性があるとはいえ、あんな物によくそれだけの金が注ぎ込めるなと思ってしまう程だ。
「そもそもの話、俺は酒や煙草はしない人間なのは姉さんも知ってるでしょ」
まぁ、酒の方は宴会とか気の知れた知人との
呑みの場で、その場の雰囲気でほんの少しだけ試しに飲んでみたり……みたいな事こそあるけど、
例えば酒呑みのおっさんやOLみたくコンビニでチューハイやワンカップを買って飲む
……みたいな事はまずしない。
所謂呑みの場でもソフトドリンクかお茶を選んでいる。
あのアルコール特有の匂いと味が余り好きじゃないからだ。
いやギョウブ姉とかから匂ってくるのは別だけど。
煙草も同様に、あの匂いと煙たさと前述した
有害物質の関係で良く思えない。
「まぁタバコも突き詰めればコーヒーや紅茶、お菓子とかと同じ嗜好品の類いだから、吸ってる人を軽蔑するつもりは毛頭ないけどね」
俺は2本目を咥え、さりげなく手を繋いできたフルルの手を握り返してやる。
「とはいえ、それはあくまで『常識の範囲で
吸っているのなら』……の話だけどね」
定められた場所以外で吸ったり、歩きタバコ
、ましてやポイ捨てなんてのは断じて許さんぞ、俺は。
……っと、もう五分足らずで着くな。
『それでは、もう間もなくアンインエリアに
あります、保安調査隊の拠点へと到着いたしますので、皆さんご移動の準備をお願いします』
フルルの手を放して準備をしていると、
丁度ミライさんからのアナウンスも聞こえ、
前を見ると徐々に探検隊の拠点も見えてきた。
AM9:30
バスが拠点の前で停車し、降りると探検隊の
もう一人の隊長、祐一とドール、
ハクトウワシにオオタカ……それに
「うっそだろおぃ……」
本来ならこの後向かう予定だったイズモ大社で落ち合う筈のヤマタノオロチが居たのだ。
「んー?なんじゃ、継月。我が此処にいるのは不服か?折角、此方から出向いてやったというに」
「いや、此方としても手間が省けたから助かったっちゃ助かったけど……、オロチってあんまりそっちから来ないイメージだったから……」
本来ならオロチとはイズモ大社で一旦合流する予定だったのだ。
澄禾といいなんでこうも予定が狂うな……。とはいえ、今回に関しては嬉しい誤算だ。
イズモ大社と拠点との往復の移動時間を
自由行動に割り振れるし。
自由行動時間が増えたよ。やったね皆。
あとオロチ、近い近い。ちょっとお酒の匂いするし来る前に一杯は入れてるなこりゃ。
「じゃあ、ヤマタノオロチさんがこのエリアを担当する守護けものに変わったってことなんですかね?でも……」
「はい。しおりによればこのアンインの担当はヤマタノオロチ様ではない筈ですし、
変更の旨もミライさんや継月さんから知らされてないのでしおりの記載通りの筈です。
確かーー」
アードウルフの問いに松前が答えようとした
瞬間、突如として強い風が吹く。
その場に居る全員が目を瞑り、土埃から顔を
守る為に腕で顔を覆ったり、吹き飛ばされないようにその場に屈んだりした。
「こっ、これは……っ!」
「この
突如吹いた疾風の正体に心当たりのある
コウテイと継月。
徐々に風が弱まっていくと同時に、探検隊と
旅行一行の間に起きたつむじ風に目を凝らす。
みずらと呼ばれる結ばれ方をした髪、
ネコ科の特徴的な耳と尾、
青と黄色のオッドアイ、
目の色と同じ特徴的な腕輪等の装飾品が風の
隙間から見えた。
そのつむじ風も徐々に弱まると、その正体が
明らかとなる。
「……やっぱりね」
「やぁやぁ皆、少し待たせちゃったかな?」
「いや、俺達もついさっきここに着いたばかりだけど」
「そっかそっか、それは良かった」
ジャパリパーク西方守護者、ビャッコ。
彼女こそ、このアンインを担当している守護けものだ。
「実は、今日ホワイトタイガーとの手合わせの
予定があってさ。直ぐに戻れるとは思ったけど
ヤマタノオロチには万が一戻れなかった時の
代役をお願いしてたんだ」
「そういうことね」
それなら納得も行った。
「取り敢えず二人とも、自己紹介をお願い」
「おっけー」
「うむ」
俺は皆の方に向き直した。
「皆、少し遅れたけど紹介するね。
このアンインエリアを担当しているビャッコと、ほんとはこの後向かう予定だったイズモ
大社で守り神をしているヤマタノオロチ。
じゃあまずヤマタノオロチから」
「小童どもよ、遠路遥々よくぞこのジャパリパークに参った。蛇神ヤマタノオロチだ。
もし気が向いたらここから少し北にある、
我の住まう社を見に来るといい。可能な限り願いを聞いてやろう。もちろん、代償となる供物は忘れずにな?ジャハハッ♪」
少し意地悪な笑みを浮かべるオロチ。
オロチは基本的には酒等の供物を渡さないと
お願いを聞いてくれないけものなのだ。
「まぁ供物って言っても大体お酒とか食べ物
持ってけば大丈夫だからね、この蛇神は。
じゃあ次、ビャッコ姉」
継月が補足してビャッコの自己紹介に移る。
「やぁ皆、継月から話は聞いてるよ。
西方守護神、ビャッコだ。
このアンインには此処から北に向かえば砂丘が、西へ向かえば港があるぞ。
色んな地域が入り交じった所ではあるが、
まぁ楽しんでってくれ!」
「じゃあ次は……探検隊の皆だね。
祐一、華、軽く自己紹介お願い」
「はい」
「分かりました」
ビャッコ姉とオロチが俺の隣に来て、
祐一と華が皆の前に立つ。
「じゃあ朝会ってる私からですね。皆さん改めまして、おはようございます。小下華です。
私は、ミーアキャット、マイルカ、ブラックバックと共に主にジャパリパークの西側の調査を担当してます」
「初めまして、
祐一はドール、華はミーアキャットに目線を送り、バトンタッチした。
「私達ジャパリパーク保安調査隊、通称『探検隊』は、このパークの警備や機器の点検等の巡回任務を行っています!一応、自主的にセルリアンハンターとして巡回してくれているフレンズさんも、居るには居るんですけどね」
「ですが、ヒトの介入がないとどうにもならない事態などもあります。そういった際に、私達探検隊が出動して、隊長さんやセントラルに 居る園長さん達と連携を取り、事態の解決に
向かうのですわ」
探検隊の簡単な説明としてはバッチリだ。
さては今日の為に予め打ち合わせしてたな?
「じゃあ皆の挨拶も済んだし……、
ここからは自由行動になります。
本来の予定だとこの後イズモ大社に行って
ヤマタノオロチに挨拶しに行く……
手筈だったんだけど当人からこっちに出向いてくれたおかげでその必要無くなったんで、
その時間も全部自由行動の時間に変換します」
実質1時間増えるよ。やったn(割愛)
「集合時間は12:50、場所は
ウチナータイムとか無いから。時間までには
全員、中にいるように。じゃ、解散!」
パンッ!と手を叩くと共に各々が散っていく。
……っと、松前ペアとタコペアは車は使わずに何処かへ向かうようだ。
さて……と、俺も澄禾達を誘ってアケノに……
「あっ、そうだ。代役してもらった代償は継月の手料理で手を打ってもらったから宜しくね」
あー、そっかー……。代償どうしたんだと
思っちゃいたけどそうなっちゃってたか~……
「……って、本人の居ないとこで勝手に取り決めないで!?」
「
改めて思うけど(一部の)守護けものって自由奔放すぎない?
「はぁ……分かった。ちょうどゴコクでオロチに渡す酒を仕入れといたから、それに合う物でいい?」
「うむ♪」
「ついでに私にもなにか摘まませてよね♪
手合わせの後だからお腹空いちゃってさ」
「ビャッコ姉まで……。わかったよ」
俺はミライさんと澄禾にロードランナーと
フルルを連れて先にアケノへ行って貰うように
お願いし、華に頼んで拠点の台所を借りての
調理へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※この一周は、順番が
継月→平城山→タコ→ペロ→けもさん→風庭
の順になります。ご了承下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます