閑話 別れは新たな出会いのスタートライン

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※読者の皆様及び当企画参加者の各位へ

この話はあんかけ視点での

ジャパリパーク旅行記最新話

「りうきうで、『さよなら』なんて」

から繋がるエピソードとなっております。

まだあんかけ視点をご覧でない方はそちらを先にご覧ください。

尚、この回を持ってあんかけは当企画から脱退します。ご了承下さい。


それでは本編、どうぞっ!


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俺とフルルはシロナガスファミリーと別れ、

海岸近くの道を歩いていた。


「ところで何から食べにいく?」


「えっとね~」


「おーい!!」


「「んっ(ほぇっ)?」」


すると後ろからこちらを呼びながら

激走、疾走、大爆走と言わんばかりに猛スピードで走ってくる影があった。

水色のTシャツに短パンのランナーウェア、

それにあの特徴的な髪型と前髪の星模様、

あんかけちゃんと一緒に行動してる筈の

ロードランナーだ。


ロードランナーは俺たちに追い付くと、

アニメとかでよく見る光景のように、

『キキーッ!』と音を立てんばかりに、かかとをブレーキ代わりに俺達の目の前で急停止した。


「ロードランナーじゃんか、どうした?」


「あれ?あんかけは一緒じゃないの?」


「そのあんかけを継月に説得して欲しくて急いで来たんだよ!兎に角来てくれ!」


「ちょっと待てロードランナー。とりあえず

一旦落ち着ぃてええええええええ!!!」


何が何だか分からないままロードランナーに

あんかけちゃんの元へと強制連行させられる。


「あわわわ……、二人ともまってぇ~!」


フルルは自身の空腹も忘れ、二人の後を追うのだった。


(「の」のカットイン)


「おーい!あんかけー!」


「あっ……」


あんかけちゃんの元へと着いた。

道順やロードランナーの話的に、この娘も俺の

とこにくるつもりだったのかな……?


「あんかけ!継月を連れてきたぞ!」


「あぁ、急に走り出したと思ったらそういうことだったんだ……」


置き去りにしてしまったと思っていたフルルも

後を付いてきたみたいで俺たちに追い付いた。


「さぁ継月!早くあんかけを説得してくれ!」


いや……、説得しろって言われても、

まったく状況が分かんないし……


「ちょっ…まっ…流石に…息整え…させて…」


何より無理やり走らされて息が上がりまくってるから、今はちとキツい。


「あっ……なんか、ごめん……」


少しすると呼吸が落ち着いた、早速本題に入ろう


「それでロードランナー、あんかけちゃんを

説得してくれってどういうこと?」


「それが……あんかけのやつ、急にこの旅企画を抜けたい……って言い出して」


「待ってローラちゃん、そこからは私が話すから。……継月さん、実は」


あんかけちゃんは、

この旅企画をここで抜けたい旨と、

その理由、そして今後どうしていきたいか、

その全てを包み隠さず話してくれた。


「……そっか。それが、今の君の本心なんだね?」


「はい……」


なんだかんだでここまでやってきてたけど、

遂にこの時が来たのか……。


「なっ?継月だってまだあんかけと一緒に旅したいって思うだろ?だからさ!」


俺としては、正直引き留めたいしこのまま旅を続けたい……けど


「……いいんじゃないかな、それでも」


「……え?」


俺は、『別れる』選択をした。


「いやぁそっかぁ……。いつかこの日が来るだろうな~と何となく感じてはいたけど……」


「継ちゃんはこうなることが分かってたの?」


「まぁ、それなりにはね」


実際、彼女は時折ここでの自分に対して、

自問自答したり、活動の拠点を変えたりしていたし、そろそろ別の場所での活動をメインにしようとしてるのも知っていた。


「継月は、本当にそれでいいのかよ……?」


「本音を言うと……、ロードランナーと気持ちは一緒さ。違うって言えば嘘になる」


「だったら!」


ロードランナーの発言を手を前に出して首を横に振って遮り続ける。


「……けど、彼女自身が選んだ未来みちだ。

それを無理に引き止めたり、ましてや邪魔する権利は誰にもないさ。

それが、明らかに間違ってるから止めたり、

アドバイスをするとかってなら話は別だけど。それに博士も言ってたんだ、

『慣れないちほーでの暮らしは寿命を縮めるだけ』って。ジャパリパークここに居て辛くなるなら……、1度離れた方が彼女の為だ」


「……継月」


彼女にとって、これ以上ここで続けていく事が

精神的な苦痛を伴うというのなら、そうするのが一番いい……。

別に、ここで続けなければいけないわけでもないんだから。


「だからさ、せめて最後くらい笑顔でお別れしようよ。なっ」


フルルに視線を向けアイコンタクトをすると

フルルがうなずいた。

これがせめてもの、俺たちからの手向けだ。


「だからせめて俺は、

あんかけちゃんが新たな生活でスマイルになれるように!精一杯の声援を伝エール!」


「「はい!ライトじゃぁ~ないとっ!!」」


「「へっ?」」


「今のはね、スマイルと生活という意味の住まい、それに声援って意味のエールと伝えるのえるを掛けたダブルジョークだよ」


「だからフルル、ギャグの説明すんなって」


「…プッ、あはっ」


「はっ、ははっ」


しんみりとした空気も、今のギャグでどこへやら吹っ飛んでいったようだ。


「なぁ、じゃあせめて最後にこの四人でどっかで軽く食べないか?」


「いや……、多分ここでまた思い出を作るとあんかけちゃんがそれを思い出して辛くなるかもしれない。すぐに元の世界に送り返すよ。

ちょっと待ってて」


俺はスタッフ用の無線でミライさんへあんかけちゃんが急に体調を崩したので、大事を取ってこの旅行から抜ける旨と今から自分が送り返す事を伝えた。

ミライさんには前日にあんかけちゃんが自分と同じく平行世界から来た存在である事を伝えてあったからか、深く追及はせずに二つ返事で

了承してくれた。


「今、ミライさんから了解を貰った。他のみんなには俺とミライさんから伝えておくし、これで後腐れなく帰れるよ」


「ありがとうございます」


「帰りはあんかけのジャパリパークを経由するの?」


「いや、つい最近俺達の世界を経由してでも行けることが分かったんだ。そのルートでいく」


おまもりの力を使い、彼女の現実世界へ繋がるゲートを開く


「じゃああんかけちゃん、行こっか」


「はい……」


継月によって繋がれたゲート、

あとはあんかけがこのゲートをくぐり、

彼女自身の住む世界へと戻るだけだ。


「っ…」


しかし、あんかけは足が思うように進まなかった……。

自分の中では割り切ったつもりでも、

心の何処かではまだ後ろ髪を引かれる思いが

残っていたからだ。


「……おいあんかけ、どうした、ビビってんのか?」


あんかけがハッとし、声のした方を振り向く


「止めるんなら……今のうちだぜ……?」


ロードランナーはいつもの調子であんかけちゃんに挑発をかます。

だがその声は震え、目尻には涙を浮かべていた。

きっと、彼女なりのせめてもの後押しなのだろう。


あんかけはぎゅっとその拳を強く握り締めた


「……うん、そうだね。ありがとう、ローラちゃん」


「……!」


「……また会おうね」


「おっ、おう!またなっ!!」


あんかけがゲートをくぐり、継月もくぐると

ゲートは消えた。


「……なぁ、フルル?」


「んー?」


「良かった…んだよな…?これで…」


「うん」


「もう…泣いても…いい…かな…?」


「……うん、うん。よく頑張ったね、ロードランナー」


「……っ、あぁっ!」


堪えていた涙を嗚咽を漏らして泣き出した

ロードランナー、

そんな彼女の頭を、フルルは何も言わず、

ただ優しく撫で続けた。

リウキウの潮風はそんな二人を優しく包むように吹き抜けていったのだった……。








場所は移りあんかけの世界

あんかけの自宅のある住宅街。


「じゃあ、継月さん。今日はありがとうございました」


「あぁ」


「それじゃあ、私はこれで……」


「うん。さよなら、あんかけちゃん」


あんかけは踵を返し自宅に向かおうとする、


「あぁそうだ、ひとつ言い忘れてた」


「……?はい、なんでしょうか」


そんなあんかけを継月が今一度呼び止めた。


「俺さ、よく『またな』って言ってたけど、

あれ何でか分かる?」


「うーん?……いえ、全く」


「これは、昔読んだ漫画の話なんだけど、

『またな』を分けて『また』と『な』。

そして、またを漢字の『又』に、

なをカタカナの『ナ』にして組み合わせると、

『友』って字になるんだって」


「……そうなんですね」


「これからの君の活動、応援してるからさ。

いつかまた会えるといいね」


「はい、そうですね」


継月はあんかけに背を向け、ゲートを開くと

もう一度振り向いた。


「……だから、その時までまたな!恋蜘蛛こぐもちゃん!」


「……!はい!またどこかで!!」


二人はまた何処かで会おうと笑顔で約束を交わし、継月はゲートをくぐりパークへ、


そしてあんかけ、

……いや、もうここにいるのは『あんかけ』ではない。


継月といつかの再会の契りを交わした彼女の

名は『夜灯よるとも 恋蜘蛛こぐも

彼女は継月を見送ると、我が家への帰路へと

着く。

自らの選んだ新たな未来みち

その第一歩を、踏み出すその為に。






あんかけちゃんを無事に送り返し、

ゲートを通ってジャパリパークのリウキウエリアへと戻ってきた。


「ただいま」


「あっ、お帰り」


「お帰り~。あんかけは?」


「無事に送り返したよ。とりあえずフルル、

ロードランナー、歩こっか」


俺たち三人は当初向かう予定だった

琉球加帕里市へと向かう道に着いた。


「なぁ、継月」


「ん?」


「あいつ…また来てくれるよな?」


ロードランナーとしてはまた会いたいと思ってるみたいだ、……けど


「んー……、そればかりは彼女次第だからなぁ……。俺からは何とも」


「そっかぁ…」


「まぁでも」


彼女が俯かせた顔を上げる。


「ひょっとしたら、ふとした拍子にまたコロッとパークこっちに顔出すかもよ?

あの娘、気分屋なとこあるし」


確たる保証はないけどな、とは付け加えた

それでも、彼女には僅かでも希望の光が差したのか曇った顔が晴れやかになる。


「まぁ、こんなのは只の俺の我が儘っていうか願望ていうか……まぁそんな感じのもんだから、論理性も何もあったもんじゃないけど」


「そっか……、そうだよな!きっとまた会えるよな!うん!」


俺は元気を取り戻したロードランナーを見て、くしゃっと笑う。


「あっ、それより継ちゃん、時間大丈夫なの?」


「えーっと…」


フルルに時間の事を聞かれ、携帯で今の時刻を確認すると11:03くらいだった。


今が11:00過ぎ……、

ここから琉球加帕里市までが歩いて5分くらい、

そして琉球加帕里市からシーサー道場がゆっくり歩いても15分くらいだから……うん。


「ゆっくり向かっても、少しカフェで

お茶出来るくらいの余裕はあるな」


「じゃあ、気分転換ついでに三人で琉球加帕里市まで競争しようよ~」


「おっ!そいつはいいな!」


「おいおい二人ともこのロードランナー様に勝とうってのか?止めるんなら今のうちだせぇ~?」


「そっちこそ、負けて吠え面かくなよ?」


「なにを~!?よーし、そこまで言うならいっちょやってやろうじゃんか!」


「よっし決まりだな!」


「それじゃあ、位置について……」


三人でスタンディングスタートの体勢で構える。


「よーい……」


「「「どん!」」」


三人一斉に走り出した、

目指すゴールは琉球加帕里市

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