めんそーれ!りうきう!

モーター音を響かせ海の上を走るジャパリクルーザー、

そんなクルーザーに揺られながらも後ろを見ると、参加者がそれぞれ思い思いの時間を時間を過ごしていた。


「一先ず滑り出しは順調って所でしょうか」


「ええ。スザク姉があの話をぶっこんだ時は ヒヤッとしましたけど……」


フルルはさっきからしおりを見ている……、

各エリアで食べる物でも決めているのかな。

俺も其々のエリアで行くとこは概ね決まってるし、用が終わったらフルルの食べ歩きに付き合ってやるか。


「それにしても、ミライさん……」


「はい?」


俺は改めてフルルが見ているしおりを見る。


「しおり……もうちょい内容纏められませんでした……?」


旅のしおりは結構なページ数で、

それこそコンビニ辺りで見かける旅行雑誌の

北海道から沖縄までをほぼそのまま纏めたん

じゃないかって思うくらいの厚みがあった。

もうしおりって言っていいのか?これ……。


「各エリアの入れたい情報が多すぎて…。

これでも結構絞ったほうなんですよ?」


「だから編集は俺がやるって言ったのに…」


「いえいえ!元々私が提案した事なんですし、継月さんのお手を煩わせる訳にはいきませんよ。

ただでさえ継月さんには園長としての仕事や、フルルさんとの時間もあるんですし」


「俺がやったことって、当選者の選定とフィールドワークでの情報収集と、フレンズへの参加の是非の確認くらいじゃないですか。

全部、ミライさんを手伝う形になっちゃったし」


「それでも寧ろ充分過ぎるくらいなんですけどね……」


「モウスグ、リウキウエリアダヨ。皆、

下船ノ準備ヲシテネ」


ラッキービーストからアナウンスが入り、

各メンバーが下船の準備に入る。


「おっと。フルル、そろそろ着くって。

一旦しおりを仕舞って」


「はぁ~い」


フルルからしおりを受け取ってバックに仕舞い、到着を待った。


🛥️三


AM9:30~リウキウエリア ホンベ港~


「「こんにちはちゅーがなびら!」」


ホンベ港へと接岸したフェリーを降りた俺達をレフティ姉とライト姉が出迎えてくれた。


「みなさん紹介しますね。このリウキウエリアの守護けもののシーサーレフティさんとシーサーライトさんです」


シーサー ライト???


「皆よく来たね!」


シーサー レフティ???


いらっしゃいめんそーれ、歓迎するわ」


俺は一行を代表して二人と握手をかわす。


こんにちははいさいレフティ姉、ライト姉」


こんにちははいたい、継月」


「今日はよろしくね」


「こちらこそ、いっぱい楽しんでいってね」


「じゃあ二人とも、挨拶をお願い」


挨拶も済ませて、俺がみんなの所へ戻ったのを確認した二人はこちらへ視線を向ける。


「改めてこんにちは、ここの守護けものを

任されてるシーサーライトと」


「シーサーレフティよ」


「ここリウキウエリアには、本土で言うところの沖縄に生息するフレンズが多くいるんだ。

近くのビーチでリウキウの海を肌で感じたり、今回特別にオープン前の水族館を解放してるからそこを見学するもの良いかもな」


「あとは、このリウキウにしかない食べ物もあるからそれを食べて回るっていうのも手よ」


ふとライト姉が一瞬視線を反らすとアイコンタクトを送ってきた。

きっとアードウルフの事を察したんだろう、

首肯で返すと、ライト姉が次の語りに入る。


「そうそう。そういえばリウキウには『いちゃりばちょーでー』って言葉があるんだ」


いちゃりばちょーでー……

あぁなるほど、それでいくんだね。


「いちゃりばちょーでー…って、なに継ちゃん?」


「『出会った人とは兄弟のように仲良くしようね』って意味だよ」


「じゃあ私たちフレンズと一緒だね!」


「そうそう!つまり!」


「リウキウで繋がる、人とフレンズの!」


俺はライト姉の方へ走って横に立ち、


「「大きな輪!」」


腕を合わせて二人で大きな輪っかを作る、


「「はい!ライトじゃー…ないと!」」


そしてビシッと指差しポーズを決めた。


・・・・・。ポン,ポン,ポン,ポン,ポン,チーン‥


俺たちのギャグでみんなが固まってる中、

フルルが俺たちの方へ来て、

俺とライト姉の真ん中に立つ。


「いまのは、繋がりという意味の大きな輪と、

リウキウの別の言い方の沖縄を掛けたホットなジョークだよ~」


「「だぁー!ギャグを説明しないでー!」」


ドッと笑いが起こる。

レフティ姉は苦笑いをし、タコ君は「なにやってんのこの二人」とでも言いたそうな顔をしていた

……けど、アードウルフの表情が柔らかくなった。

一応、作戦は成功だ。


「うんうん!やっぱり笑顔が一番!私たちからの挨拶は以上だ!それじゃあ、リウキウを楽しんでね!」




「では、シーサーのお二方からの挨拶も終わった所で、ここからは自由行動になりまーす。12:00に昼食を取りますので、11:50までにシーサー道場に集まってきてくださいね~。では、解散!」


ミライさんの一言で各メンバーはそれぞれの

目的地へと向かい始めた。


「俺たちも行こっか」


「うん」


「じゃあレフティ姉、ライト姉、またあとで」


「ええ、またあとでね」


「継月達も思うようにリウキウを楽しんできて!」


「行こっ、継ちゃん」


「あぁ」


俺たちも、予め決めていた目的地をフルルに

伝え、まずそこに向かうことにした。

視界の端でアードウルフがミライさんと話していたけど……、

まぁミライさんの事だ、きっとうまくやってくれるだろう。


(「の」のカットイン)


ホンベ港から少し離れた海岸に来ていた。

俺がここに来たのは、一先ず顔を出しておきたいフレンズがいたからだ。


「いつもならこの辺にいる筈なんだけど…」


「誰か目的のフレンズがいるの?」


「まぁね。……おっ?」


辺りを見回しながら歩いていると、二人のフレンズが目に入った。

早速目的のフレンズを見つけて、足を早める。


「おーい!」


イッカククジラ偶蹄目イッカク科イッカク属


シナウスイロイルカクジラ偶蹄目マイルカ科ウスイロイルカ属


「んっ?」


「あら、園長さんじゃないですか~」


見つけたのはイッカク姉とナルカ姉ことシナウスイロイルカの二人だ。


「いやナルカ姉、普通に継月って呼んでくれていいんだけど…まだプライベートの範疇だし」


「あらそうですか~。……まぁ、フルルさんもご一緒なんですねぇ」


「うん」


ここリウキウでも出張ライブをしたことがあるし、何ならナルカ姉達もステージに立った事があるから二人はもうすっかり仲良しだ。


「久しぶりだね、イッカク姉」


「あぁ、久しぶり。それにしても珍しいな、

二人がここに来るだなんて」


「あっ、もしかして以前言ってた旅企画でですか?」


「まぁね」


「旅企画?」


そういえば、打ち合わせで来たときはイッカク姉さん居なかったっけ。


「パークの外から何人かゲストを招いて、

俺とミライさんの引率の元、パークの各地を

回ってるんだ。

その為に各エリアで現状出来る事を調べていたし」


「そんな事が行われていたのか」


「イッカクさん、ちょうど継月と入れ違いで

ここに戻ってきましたから、知らないのも無理はないですね~」


周囲を見回すとあと三人いない、

多分近くにはいるのだろうけど……。


「そういやドルカとシャチは?」


「二人なら今はアシカさんと一緒にカントー

エリア辺りに居ます」


どうやらナルカ姉の話によれば、

俺達がリウキウへの現地調査を行った後日、 家族旅行をした所、二人はどこか懐かしさを

感じたらしく、カントーエリアに留まったのだそうだ。


「そっかぁ」


じゃあ、カントーにいったら二人にも顔見せにいくとしようかな。


「それと……義母かあさんは?」


「おかーさんでしたら…」


義母さんの行方を聞くとザッパーン!と海面から水柱が立つと共に、


「ここですよお~~~♪」


と間延びしたような声がナルカ姉の代わりに答える。

この声こそ俺が聞いたら義母さんの声

……なのだけれど


「ほわぁ~」


「おわわわわわわっ!?」


打ち上げられた大量の水は滝の如く近くの岸にいた俺たちに容赦なく降り注いだ。

フルルとイッカク姉、ナルカ姉は防水性の強い毛皮な為、この程度なんてことは無いが、

一番もろに喰らった俺の服はそんなことあるわけないから全身びしょ濡れだ。

デバイスが防水性で助かった……。


「あらあら~」


「また派手な登場の仕方したな…」


「継ちゃん大丈夫~?」


「もう……、いきなりはびっくりするって。シロナガスクジラ」


シロナガスクジラ鯨偶蹄目ナガスクジラ科ナガスクジラ属


「うふふっ♪ごめんなさいねえ~。近くまで戻ってきたら継月ちゃんの声が聞こえたものだから~♪」


「だからってゆっくり上がってくれば……」


義母さんは水面から上がるとこちらに歩み寄り優しく包みこむような抱擁をしてきた。


「だって継月ちゃんが久しぶりに会いに来てくれたんだもの、嬉しくないわけないでしょう?」


義母さんはニコニコと満面の笑みを浮かべながら更に抱き寄せてくる。


「久しぶりって、1ヶ月前にもこっちに現地調査しに来た時顔出したじゃん!」


「あらあら、まだ1ヶ月しか経ってなかったのね~」


義母さんが俺を離して距離を取る。


「ところで今日はどうしたのかしら~?」


「こないだ言ってた旅企画で来てるんだよ。

今は各自で自由行動中」


「それじゃあ、前に言ってた継月ちゃんのお友達も来てるのね~」


きっとあんかけちゃんのことだ。

彼女は特にシャチがお気に入りだから

世話話程度に話したことがある。


「うん。まぁ、その子が好きなシャチには

ここに来ても会えないみたいだけど…」


「じゃあその子が来たら歓迎してあげなくてはいけませんねぇ」


「まぁ程々に頼むよ。今回ロードランナーと

一緒に行動してる女の子がそうだから」


「継ちゃーん。フルル、お腹空いた~」


おっと、そろそろうちのお嬢の腹の虫が訴えてきたか。


「じゃあ、加帕里ジャパリ市でリウキウの料理でも食べて回ろっか」


「うん♪」


「じゃあみんな、またね」


「えぇ」


「またな」


「気をつけるのよ~♪」


シロナガス一家と別れ、次の目的地へと向かう。


「このあとお昼もあるんだから、あんまり食べ過ぎちゃダメだぞ?」


「わかってる~」


次の目的地は琉球加帕里市。

フルルの要望通り、リウキウの食を堪能しよう。


「ところで継ちゃん、ずぶ濡れのままだけど

大丈夫?」


「この暑さならすぐに乾くでしょ。……多分」


とはいえあれだけ被ったとなると、

海水が蒸発して出来る塩で服がごわつくのは

間違いなさそうだ。

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