第2話 疲労
社会人になって思う。
社会人は忙しい、というごく当たり前のことを。
毎日毎日業務に追われ、やっと仕事が片付いた後も、次やるべきことに対して思考のリソースを割かなければいけない。
私は元々器用な方でないし、なにかをやり出したら他のことが見えなくなる性質のため、社会人になって2、3年間は本当に仕事のことしか考えられなかった。
たまの休みにはずっと、ただひたすら眠っていた。
社会人5年目である今だって、やっと少しだけ余裕が出てきて、休日に学生の頃からの趣味である読書をするために図書館や書店に行くぐらいのことができるようになっただけだ。
本を読むのは今でも変わらず楽しい。
仕事のことなんか忘れて活字の列を追うのがどれだけ私の心を救ってくれているかは、本当に計り知れない。
しかし、図書館で本を手にして、活字の海を優雅に泳ぎながら思う。
私は今、いつでも孤独だな、と。
社会人になってからビジネスライクな、表面的な付き合いが一気に増えた。逆に、人と人との心の深いつながりを感じることがぐっと減った。
学生時代にあれだけ感情をむき出しにして議論したことや、目を輝かせて夢を語ったことが嘘みたいだ。
まあ、それも栓無き事。いつまでも学生気分ではいられない。
それが大人になるということなのだから。
私は1人でそう思って、自嘲した。
そして、今日はこれぐらいにして帰ろうか、と本から目を上げた。
その目線の先には、信じられない人物が映った。
学生時代の無二の親友、川崎祐介だった。
卒業してから親友と ケイキー @keikey
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