第24話 お仕置き
「じゃあまずは何に乗ろうか?」
「もちろんジェットコースター!!」
朝から佳純の機嫌が怪しかったけど、どうやらいつも通りのようで少し安心した。
きっといきなりヒロインのひとりを演じることになってプレッシャーで苛立っていたのだ。
人気のアトラクションだから少し列ができているので、学校の話や次の占いの事を話していると・・・なんだかやけに視線が多いことに気付く。
ああ、みんな佳純を見ているんだ。最近はいつも一緒にいるから当たり前のように思っていたけど、美少女だから当然だ。学校では少し気難しい面も見せて避ける生徒も多いけど、いまは無防備な笑顔を俺に向けて楽しそうに話をしているからみんな見惚れているようだ。
「ちょっと!?聞いてるの?」
褒めたそばからジト目で睨んでくるあたりは、こいつらしい。
「わりーわりー、(みんなが)見惚れちゃっててつい」
「な!?」
事実を述べただけなのに、拗ねてしまったのか頬を膨らませて俯いてしまった。
現実世界の女の子はやっぱり難しい・・・
ようやく順番がやって来たのでコースターに乗り込もうとした時だった。
港町にある遊園地とゆうこともあり、海風がさっと通りすぎる。
「あっ!?」
「きゃ!?」
・・・・ピンク。しかもフロントにリボン付き。
・・・もちろん不可抗力だ。断じて俺のせいではない。
最近の女子高生はとにかくスカートが短い。
佳純のスカートもミニとはいかなくてもある程度は短いのだが、とにかくスタイルが良くて足もかなり長いためにジェットコースターに乗り込む際には細心の注意が必要なのだ。
・・・がしかし今回は風のいたずらだろう。腰を下ろして膝をあげた瞬間にヒラリとめくれてしまったのだ。
「・・・・見た?まあ今日はシンプルにイチゴが付いてるだけだからいいけど」
「み、見てない。え?リボンだった気が・・あっ!?」
謀られた!柄ならともかくポイントの細かいとこまで見てる証拠じゃんか。
ここは素直にあやま・・・うわ!?
いきなりなにすんだよ!!・・・ってジェットコースターが発車したのか。
まだ顔を真っ赤にして恥ずかしがってるみたいだし、ここはちょっと柄にもなくて似合わないけど・・
「ふぇ!?」
「楽しもうぜ!!」
手を握ってその手を空に向かって高々と上げる。
「ひゃっほーう!」
リア充じゃあるまいしかなり恥ずかしい。
でも横を見ると、
「きゃー!ーあはは!」
これは正解だったようだ。
そして一番高い位置から真下のトンネルに向かって急降下していく。
あれ?急降下?
・・・・手上げててまずくない?
「きゃあああ。見ちゃだめーー!!」
地球には重力がある。それに逆らう事など人類に許されるはずがないだろう。
・・・その結果・・・片手の自由を奪われた佳純はさらに俺によって辱めを受ける結果となった。
誰かが言った。「地球は青い」
しかし今日の俺は・・「ピンク」とだけ答えておこう。
・・・まずいまずいまずい。これじゃさらに俺が覗きたい変態にしかみえないじゃんか!?
見方によっては精巧な罠にかけたようにもみえる。
降りてからの佳純は無言だった。それが余計に・・・怖い。
「・・・せ。責任とってよね・・」
「うぇ!?」
唐突に放たれたその言葉におもわず変な声が出てしまった。
アニメでもラノベでもよく耳にするその言葉は・・・
いやいやいやいや、さすがに結婚してってのはないだろう。
たぶん恥ずかしくてもう同じ下着は身に着けられないから、代わりの買ってよねって意味だ。
でも・・・考えれば考えるほどそれもちょっとおかしい。いや・・・かなりおかしい。
どうやら俺の頭もパンクしているようだ。
「せ、責任って?」
「しゃ、謝罪よ!謝罪を要求するわ!あの観覧車の中で」
「か、観覧車で?それだけでいいの?」
「条件付きでね!?」
あ、すごく悪い顔になってる。嫌な予感しかしない。
でも・・・怖いし断れない。学校で破廉恥野郎なんて言いふらされたら陰キャどころではない。
「はい・・・」
観覧車に乗る頃には、夕日が綺麗な時間になっている。
海面が夕日に照らされてきらきらと輝いている。
こんないい景色で謝罪するの?もったいなくない?
しかも・・・条件がえぐい。
陰キャの俺にリア充を演じろってなんだよ?
ゲームでヒロインを落とすように口説く事って!?もはや俺にとっては拷問に近い。
ここは『恋愛パラダイスシティ』のオラオラ系主人公【ヒロユキ】くんのキャラ設定で真似をするしかない。
ストーリーは先週見たアニメしか最近のは覚えてないのでいいだろう。なにかひっかかるけど・・・
「メグミこっち座りなよ」
「誰よそれ?佳純だけど」
いきなりミスった。アニメのキャラ名で呼んじゃったよ。超睨んでるし火に油を注いでしまった。
ここは癒し系の【マサト】くんで仕切り直して全力だ。
「・・・佳純、そっちに座ってもいいかな?」
「・・・別にいいけど」
まだ怒ってるな。でも癒し系なら。
隣に座った俺は眼鏡をはずす。
「目になにか入っちゃったよ。見てくれないか?」
「え!?ちょっと・・・急に・・・やだ・・・」
ま、まずいぞ?さらに嫌がられてる。それなら・・
ドン!?
「ふわぇ!?」
佳純の背中の観覧車の窓に、窓ドンを食らわせる。
「ほら、・・・もっとよく見て取って欲しいな」
か、顔が近い。マサトくんはこれを素でやるんだから神だな、アニメだけど。
「あうぅ・・」・・・・もう少しか?
「目に入っていたのは可愛い君だったよ」
「はぅ!?」
佳純もキャラになりきってるのか?ノリノリじゃないか。
それなら・・・俺は黙って夕日を指さすと、条件反射で佳純はつられてそちらを向いた。
・・・う!?これは恥ずかしいが・・やるしかない!俺に力を!ヒロユキくん!
ん?ヒロユキ?
後ろを向く佳純を両手で抱きしめて、耳元で小さく囁いた。
「・・・お前は俺のもんだ佳純。わかったな?」
「・・・はい」
そしてヒロユキくん得意の耳たぶに『カプリ』と甘噛みを・・・ああああ!!やっぱり途中からヒロユキくんになっちゃった。
マサトくんのように頭を撫でるだけが・・・あ、いい香りがしてくる・・・気が遠くなってきた・・・
佳純は一瞬ビクンと飛び跳ねたけどやけに静かだけど・・・大丈夫か・・・
・・・その後ふたりは家に帰るまで記憶があまりなかったらしい。
これがお仕置きだったのかは、佳純にしかわからないのであった。
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