第19話 テストの結果
「ちょ、ちょっと待って!!」
「もう観念しろ。結果はもう出てるんだから、それ以上でもそれ以下でもないだろ」
そう言って俺が佳純の手を引っ張りテスト結果が貼りだされている掲示板へと近づいていく。
ん?ようやく静かになったか。俯きながら俺の後を無言でついてくる。
掲示板の前では多くの人だかりが出来ている。
中には涙を流しているものさえいるので、まるで入試の合格発表だ。
「・・・たしか50位以内が発表されて、10位以内には花が飾られてるんだっけ?」
入試の次は選挙の当選発表か?まったく学校の意図が分からないが優遇されるならなんでも受け入れよう。
2年の掲示板の前にようやく到着し、佳純と一緒に結果を見る。
1位 市川 佳純
2位 ・・ ・・
3位 ・・ ・・
4位 ・・ ・・
・
・
・
10位 鈴木 快斗
「お?やったな!俺もかろうじて10位に入ってるな。ラッキー!」
「よかったーーーーー!!ふたりとも10位以内に入れたよー!」
喜びのあまり涙目で勢いよく抱き着いてくる。
まだ多くの生徒がいる掲示板の前だというのに・・・
そんな目立つ状況でちょっと気になる声が聞こえてきた。
「なー?10位の鈴木って誰よ?」
「ひょっとして噂の転校生かしら?」
・・・はい。苗字は有名な鈴木ですが、影が薄いわたしです。佳純と抱き合ってても気付かれない陰の薄さです。
出来ればこのまま誰も気付かないでください。目立ちたくないので。するとここで校内放送が入る。
『 2年の鈴木快斗くん、校長室までお願いします。校長室までお願いします』
「え!?俺?」
「あんたいったい何やったのよ?あ、占いか」
当たり前のように日課に占いをぶち込んでくる佳純だが、最近は欠かさずテレビで占いを見ているので反論出来なかった。だって気になるんだもん。俺は乙女か。
ちなみに今日の朝の占い結果は、新しい事への挑戦だった。
校長室へ入るとタイトなスーツに身を包まれ知的な眼鏡をかけた美人の女性と、反対側には頭をハゲ散らかしている校長先生がソファーに座っている。
俺はこの人を知っている。もちろんハゲではない方だ。(校長先生ごめんなさい)
「おーきたか、もう話はほぼ済んだところだよ。ご家族と事務所の方から出ていた芸能活動の申請の件だけど、今回の試験結果で承認がおりたよ。早速マネージャーが挨拶にきてくれてね」
「はぁ!?」
このハゲは何を言ってるんだ?
この美人はなんで嬉しそうに俺にウインクしてるんだ?
……ご家族?……美雲のやつ勝手に……
「早速ですが今日の午後から仕事が入っておりますので、早退届をよろしくお願いします」
「ちょ、ちょっとそんな急に!?聞いてないんだけど?」
「今申し上げました。これからスケジュール調整と打ち合わせがあるので後ほどお迎えに伺いますので、自己紹介はその時に。では失礼させていただきます」
あまりにも突然の出来事のため、頭が回らず教室へとトボトボ戻る事にした。芸能活動をするにしてもどんな仕事なのかまったく聞かされてないので不安しかない。
美雲に急いでラインを送ると、『ニカ!』と笑うスタンプが送られてきただけで詳細を教えてはくれそうにない。
* * * *
教室に戻るなり佳純がなにやらニヤニヤしている。なにか話したい事や聞きたいこと聞いて欲しいことがありそうだけど、「別に」と言ってはいるものの落ち着きがない。
かまって欲しくてたまらない犬のようだ。
そんな様子だからつい無意識に頭を撫でてしまった。だってペットみたいなんだもん。
「ふにゅ!?」
……人生で……リアルでは聞いた事もない声を出した。ゲームと同じそれは演出ではなかったのか?やはり3次元は奥が深いです。
昼休みに入るまですっかりおとなしくなった佳純は、午前中の授業が終わると同時に物凄い勢いで教室を出て行った。
午後にいなくなる事言いそびれてしまったな……後でメッセージを送っておくか。
俺自身もそんなに時間に余裕がなかったので、とりあえず迎えが来るという校門へ向かう。
校門の前には大きな黒のボックスカーが1台止まっていた。運転席から降りてきたのは朝の校長室で見かけた芸能事務所の綺麗なお姉さんである。
「快斗くんお疲れ様。さあ後ろに乗ってちょうだい。詳しい話は車の中でするわ」
車のスライドドアが開くと同時に乗り込むと、なにやら柔らかい感触が……」
「だ、だめ…ここじゃ……」
俺は佳純の胸を事もあろうに鷲掴みにしてしまっていたのだ。どうなってるの!?
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