第13話 健康診断
身長 178センチ
体重 65キロ
バスト、ウエスト、ヒップは・・・ヒミツ
自分で言うのもなんだけど、少し高い身長に服の上からでは分からない細マッチョの容姿は陰キャとは無縁かもしれない。
普段はアニメやゲームに没頭している俺がなぜ筋肉質なのかって?
・・・陰キャはいじめられやすい。なのでアニメ1本、ゲーム30分するたびに様々な筋トレや格闘技をユーチューブで見て独学で鍛えているのだ。
「あなたで最後ね。次の女子がもう来てるみたいだし視力検査するわよ。眼鏡は度はいくつくらい?」
「入っていません」
「???伊達眼鏡で瓶底眼鏡なの?変わった子ね。まあいいわ、急いでるし度ナシなら外してくれる?」
他の男子生徒はすでに体力測定にむかっているので、しぶしぶ眼鏡を外す。
「まあまあまあ。・・・なるほどそーゆうことね。じゃあ右目から行くわよ」
検査の結果は、右目も左目も1.2で問題なかった。
「じゃあそこのクリアファイルを持って体育館へ行ってくれるかしら?あ、待って待って眼鏡忘れてるわよ」
あっぶねー。検査をしていて忘れるところだった。
そもそも度が入っていないから視覚が変わらないので、気付きにくいのも当然なのだ。
「2年1組女子入りまーす」
やば!女子がもう入ってきた。しかもこの甘えた猫なで声は「りあエンジョイ」の早乙女さんだろう。焦って手が滑り眼鏡を落としてしまった。
「はい!どう・・・・ぞ?」
「ありがとう」
お互いに眼鏡を拾おうと屈みこんだので、顔が至近距離で目が合ってしまった。
りあエンジョイに目をつけられるとクラスで生きていけないのでここは早く退散しよう。
しかし・・・【早乙女りあ】は俺の眼鏡を離してくれずじっと無表情で俺の顔を見ている。
佳純とはまったくタイプが違う美少女だ。
クリっとしたショートカットの茶色い髪に大きな目。
少し小さな身長もあいまって、その可愛さはひいき目なしで人気があるのも分かる。
「おはようぽんぽこ占い・・・出会い」
「は?」
なんでコイツも……占い?
「りあ〜何してんのさ?早く済ませよー」
間一髪で眼鏡をかけてすぐに保健室を出て行く。
「あ、快斗〜!って全力疾走?」
佳純らしき声が聞こえた気もするけど、話は後でしよう。
「あ、さっきのは……陰キャ鈴木にもう仕掛けてたの?」
「……え?今のが……鈴木?」
「何言ってるのよ〜!しっかりしてよ〜」
りあエンジョイ仲間のやりとりが保健室でされているとはもちろん俺は知らない。
体育館へと移動するとーー
「◯◯くん頑張ってー!」
「◯◯先輩ファイト!!」
……え、何これ?
体力測定って普通は淡々と計測するんじゃないの?
「あーやってるやってる」
「なんだ?ジミーちゃんか?」
「誰がゴリラみたいな芸人よ!」
振り返ると身体検査を終えた佳純達が入ってきた。
話を聞くとどうやらうちの学校は文武両道を掲げているので、運動部の新たな人材発掘のために体力測定を行なっているらしい。
「去年は何してたのよ?」
「美雲の恋愛ゲームに声優として参加したから忙しくてさぼった。ちなみに家庭の事情って事になってる」
「……ふーん。とにかく表向きは学校の人材発掘イベントだけど、生徒からは別名『ランク付けイベント』って呼ばれているわ」
ああ……なるほど。
俺が入学してそうそうにカースト最下層にいる理由が分かった。
去年はこの大イベントに参加していないからだ。データがなければ当然だけど、外見で査定される。
俺は美雲の恋愛シュミレーションゲームで、他の男性声優がミクの相手役をするのが許せなくて依頼を引き受けたのだ。
ソフトが大ヒットしたので良い稼ぎになったものの、世間に俺の声が広く出回ってしまった。
ちなみになぜランクや順位が分かるのか?
どうやら生徒会とは別の団体があると言う黒い噂があるけど、誰も実態を掴めていない。
恐らくその団体が学校内アプリを立ち上げており、そこでランクが公表されているのだ。
……これラブコメだったよね!?
「いったい誰に何を独り言を言ってるのよ?とにかく……今日の占いであなたは生まれ変わるチャンスなのよ!しっかりしてよね」
「占いって……おはようぽんぽこ占い?」
「モーニングコンコン占いよ!よりにもよって他局のぽんぽこ占いとは……喧嘩売ってるの?」
いやそんなのどうでもいいです。狸と狐の違いなだけじゃん。
しかしキノコ占いで学習している俺は同じ間違えなど起こすはずはなかった。
「そうだよな?やっぱり狐だよな?」
狐と聞いた途端に怪訝そうな顔で俺を睨んでくる。
「コンコンってキツツキに決まってるじゃない。ボキャブラリーが足りないわ」
そんな事も分からないの?と言わんばかりに腕組みをしている。普通はぽんぽこって狸だよな?コンコンって言ったら狐じゃん。どうやら世の中は理不尽に出来ているらしい。
「とにかく……快斗も手を抜いちゃダメよ?今年はなんだか嫌な予感がするの」
……今朝そういや美雲がおかしな事を言っていた。
今年は目立ちたくないとか言ったらダメとかなんとか。散々陰キャでいろと言っていたのに、昨日の夜から真剣な顔で話してきたのだ。
「まあ頑張ってみるよ。じゃあここからは男女同時で問題ないみたいだし一緒に回るか?」
「……うん」
なんだか不安そうな表情を浮かべているのでちょっと提案してみたけど、どうやら佳純はなにか知っているのかも知れない。
「じゃあまずはあそこから行きましょう」
俺たちは佳純の指差す一際歓声が大きい人だかりへと近づいて行った。
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