第11話 まゆ毛占いはまだ続く

 「あのさ…まゆ毛整えただけのはずがなんで前髪も短くなってるの?」


 「だって……前髪が邪魔で素敵な顔が…じゃなくてまゆ毛が見えないからつい出来心で……」


 「女子高生の間では素敵なまゆ毛の世界でもあるのか?」


 そんなものがあるなら『◯ツコの知らない世界』で紹介されるに違いない。

 まゆ毛コメンテーターは佳純か?

 アホな想像をして顔がニヤついているとーー


 「や、やだ…そんな表情されたら体の芯からゾクゾクするじゃない…」


 スコーン!ドM美少女に何かがクリティカルヒットしたらしい。


 「それで俺のまゆ毛は何タイプにしたんだよ?」


 「じゃじゃーん!これよこれ!」


 雑誌を指差す部分にはこう書かれている。

 なんでイラストの部分は手で隠すんだ?


 『内気なあなたも今日から社交的に!?新しい世界に羽ばたきましょう!』


 「…………」


 「どうしたのよ?」


 「この後、幸運のネックレスだの壺だの出てこないよな?」


 「言ってる意味が分からないわ」


 妹の手伝いで業界と多少関わりがある為、売れてくると近付いてくる連中の話をついしてしまった。怖い怖い……


 鏡を持ってきて改めてまゆ毛を確認する。

 人生の中でここまで心の中でまゆ毛を連呼するとは思ってもみなかった。


 「キリっとしてだいぶ細くて丁寧にやってくれたんだな?ありがとう。形が合ってるか雑誌で確認していいか?」


 「な、なに言ってるのよ!さっき効果は見せたしさらにカッコよくなったんだからいいじゃない!細かいと女の子に嫌われるわよ」


 なぜか急にキレる佳純はかなり怪しい。

 だけどゴマをすって誤魔化す為とはいえ、カッコよくなったと言われて照れ臭くなってしまいこれ以上追求する気にはなれなくなってしまった。


 最大の問題は前髪だ。

 どうやっても顔を隠す事が出来ない。瓶底眼鏡とマスクがあるものの花粉の時期も終わり眼鏡だけになってしまう。


 そして明日は……健康診断と体力測定があるのだ。

 持久走でマスクをする事は出来ないので嫌でも目の部分しか隠す事が出来ないのだ。


 「明日は流石に人と目が合うのは避けられないな」


 「そんなに素顔出したくないのはなんでなの?」


 「美雲と中学で無理矢理約束させらたのもあるけど……極度のコミュ障」


 「ミクちゃんはなんでそんな約束させたのかな?」


 「さっぱりわからん。おかげで陰キャ路線をまっしぐらだ。コミュ障の俺にはちょうどいいけど」


 「私とは最初からまともに話せるじゃない?」


 「あーなんでだろうな?学校で一番の美少女と一番の陰キャで笑えるよな?ポニーテールが似合うから特別って事で」


 それを聞いた佳純は力なくヘナヘナとベッドにもたれかかってこう言った。


 「あんたのそれ……きっと天然よね。美少女ゲーム恐るべしだわ」


 「なぜそこで美少女ゲーム?たしかに美少女の佳純も攻略したいとか考える事もあるけどゲームじゃあるまいし失礼だしな、わりー」


 そんな発言に佳純が顔を真っ赤にしてぷるぷると震え出しいる。

 ヤベ。ゲームを引き合いに出してさらに怒らせてしまった。これだから3次元は難しい。


 「ほ、他の女の子にはそんな言い方したらダメなんだからね!」


 そんな理不尽な。

 こうして初の同世代の女子部屋冒険は幕を閉じた。

 ちなみに佳純の母親にライン交換をさせられたのは言うまでもない。


 * * *



 快斗が帰ってからの佳純の様子はーー


 「きゃー!私の部屋に快斗を連れ込んじゃったわ!まだほんのり香りが漂ってる気がする!」


 ベッドに横たわりながら枕に顔を埋めて足をバタつかせている。


 「彼かなりいいじゃな〜い」


 「きゃっ!ちょっとママいつの間に部屋に忍び込んでるのよー!ビックリするでしょ!」


 気付けばベッドの横には顔をニヤつかせている母の姿が。


 「誰のアドバイスで部屋に男を連れ込めたと思ってるのよ?並くらいだったら追い返そうかと思っていたけど必要なかったわね」


 「快斗を牛丼みたいに言わないでよ。お肉でもお寿司でも特上も特上の最高級よ!」


 仲の良い親子は顔を見合わせて不敵に笑っている。


 「早くガッツリとハートを物にしなさいな」


 「わかってるよ・・・やっと理想の男の子と占い通り出会えたんだから」


 * * *


 快斗の方は・・・


 「さあ、どーゆー事か説明してもらおうかしら?」


 「えーと、まゆ毛を整えた拍子に前髪も短くなりました」


 まだまゆ毛の話をしなくてはいけないとは・・・

 ちなみに今は美雲の部屋で正座をさせられている。


 「へ~。しかもこの間の女の子の部屋までのこのこ付いて行って、まゆ毛と前髪を切られたと。しかも二人っきりの密室で」


 歯ぎしりをしながら俺の周りを行ったり来たりして、見下ろしてくる。

 正直まゆ毛と前髪でここまで怒られるとは思ってもみなかった。


 「約束を破ったんだから何でも言う事を聞いてくれるんだよね?」


 「ああ、確かに中学の時に約束したな」


 美雲は返事を聞くなり、にやりと表情を崩した。

 すごく嫌な予感がする・・・


 「ふふふ、これで私も我慢せずに明日から楽しみになるわ」


 「あの・・・俺はどうすれば・・・?」


 「追って連絡するわ」


 ここは俺の家でもあるはずなんだけど、この展開は刑事系?推理系?

 妹でもやっぱり現実の美少女の考えてる事はさっぱりわからない。


 明日から俺の人生が大きく動き出す気がする。。。

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