第5話 相性占い
あー眠い……現在時刻は9時30分。
普段は昼過ぎまで寝ている日曜日だというのに、今日はまあまあ早起きをしていた。
昨日は夜中までアニメなんか観てないで早く寝れば良かったと少し後悔している。
あまりに緊張して眠れないからついアニメを見てたら止まらなくなってしまったのだ。
ラブコメって途中でやめられないんだよなー。
やっぱり主人公がポニーテール美少女の高校生って反則だようん。
そんな事を考えていたら、緊張して眠れない原因である駅前公園にそろそろ着くらしい。
『陰キャの俺がまさか女の子と初めてのお出かけか……』
どうしてこんな事になったんだろうか……
ーーーー2日前
「ねえ快斗?RINE交換しようよ?」
「俺なんかとでいいのかよ?」
「私達の関係ならあたり前でしょ〜」
男友達の俺なんかと交換するだけでこんなにテンション高いって男の友達少ないのかな?
ぼっち歴の長い俺としては親近感湧いちゃうよ?
「俺友達いないから妹以外で交換するの初めてだ。だからやり方がサッパリわからん!」
「う、嘘でしょ?そんな事を自慢げに話していないで貸してみなさいよ!……マジで1件じゃないの。……ねえこれほんとに妹なのよね?」
目を細めてジト目でこちらを睨んでいる。
「妹だよ。ちなみにそんな目をしても俺のは老眼鏡じゃねーから貸せねーぞ?」
「私の視力はそんなに衰えてないわよ!おばちゃんか!少しお仕置きが必要みたいね!」
スマホをポチポチと神業のような早さで打っている。
女子高生の早打ちって都市伝説ではなかったのか……
「はい!アイポン返すね」
なにやら満足気にドヤ顔をしてくるので嫌な予感しかしない。
恐る恐る確認すると……どうやらアドレス交換は出来ているらしい……が!!
「なんでアイコンがミクちゃんじゃないんだよ!ってこれ佳純の写真じゃんか!可愛い写真だけど俺は2次元の……聞いてる?」
「可愛い…」
ダメだコイツ。
なにがあったかわかんねーけど完全に妄想の世界へトリップしてるな。
「もしもーし?おーい?おーいイカスミちゃん?」
「パスタじゃないし、黒くないし、食べられないし。あ、ちょっとなら食べてもいいけどね……」
最後の意味はよくわからんけど薬はやってないみたい。
「あ、それより快斗さ日曜日は駅前に10時待ち合わせしよっか?」
「急になんだよ。なにか用事でもあんの?」
「私達……もうあれじゃない?だから週末は一緒にいるものでしょ?」
いつから日本は友達と一緒に週末過ごすようになったんだ?知らないのひょっとして俺だけ?まるでハ◯ーポッターみたい。
それにリア充にはあたり前なのかもしれないけど陰キャには昼間の太陽はきついっす。
ドラキュラも……陰キャ?……影キャ?つまんねー。
「わかったよハーマ◯オニー」
「ハニーだなんて……」
いやいやいや!最初と最後しかあってないから!
文字数違い過ぎるから!
こうして付き合ってもいないのに初デートの火蓋が落とされるのであった。
RINEのアイコンはそのままに……
ーーーー現在
あれってやっぱり佳純……だよな?
待ち合わせである駅の噴水前には、ノースリーブの真っ白なワンピースに包まれた天使が立っていた。
透き通るような白い肌。背中に羽が見えるのは俺だけ?
しかし……こうして私服姿を遠くから見ていると、2次元にも劣らない美少女だ!?
まるで『ドキラブメモリー』のしおりん以上じゃんか!
オタクの……オタクとしての血が騒ぐ!!
『攻略したい!!』
そう思っていた矢先ーー
高校生らしきイケメンが声をかけている。
なんだよこのゲームってマルチプレイかよ?
……じゃねーだろ。早く助けに行かないと!
急いで佳純の元へと走って行くがーー
どうやら間に合わなかった。彼を助けることは出来なかった。呆然と真っ白な灰になってしまった彼に合掌。
「快斗!そんなに息を切らして……もしかして声をかけられて心配で助けに来てくれたの?」
「まあな。心配で(そこの彼が)」
「ありがとう。やっぱ優しいね」
「当たり前だろ」(その塩対応じゃ)
顔を赤く染め恥ずかしそうに俯きながらこちらを見る彼女は紛れもなくヒロインの顔をしている。
近くで見ると破壊力抜群でテレビの中のアイドルより可愛い。
ではまずは……あれ?
「なんでそんなにじっと見つめてくるの?恥ずかしいじゃない」
「いや選択肢のアイコンが出なくて」
「アイコン??」
しまった。あまりに現実離れしていたもんだからゲームの回答選択肢出るの待っちゃったよ。
じゃあここは当然ーー
「白いワンピースがとても似合ってて可愛いな」
『ドキメモ』の名セリフだ。
「や、やだ……」
c
なんだと!そんなリアクションルート見た事ないです。降参です。
やだって言ってるのに喜んでいるように見えるけど?
さっぱりわかんねー。リアルって難しい。
もうゲームの事はあてにならないから切り離そう。
「快斗も引き篭もりのわりにセンスいい服着てるじゃない?ほんとに自分でコーディネートしたの?」
そのジト目はやめてください。
上手く騙して選んでもらった妹コーデなんでいろいろ聞かれるとボロが出ちゃうから。
ここは話題を変えなくては、俺のガラスのハートが破れてしまう。
「待たせて悪かったな。じゃあ行くか?」
「まだ待ち合わせ15分前だよ。早く来てくれてありがとう。私は待ってみたかっただけだから大丈夫。よし!レッツゴー!」
うん出発はいいけどいったいどこに出かけるの?
全てお任せだからどこに連れていかれるか心配なんだけど。
女の子に予定を丸投げって我ながら情けない話だ。
「今日は有名な占い師のところへ行きます!それとカップ…スポット…」
最後は小声でよく聞き取れなかったけど、やっぱり占いか。ほんとぶれないやつだ
わざわざ休日に呼び出すから英会話教材でも買わされるのかと思ったよ。
* * *
目的地に到着したらしくふたりで電車を降りる。
どうやらそこは週末にもなるとカップルや家族連れで賑わう人気スポットらしい。
佳純の話ではその賑わいの奥に進むと占い好きにとっての聖地があるらしい。
高校球児にとっての甲子園がそれにあたり土を持って帰るのなら占いの聖地はなにを持って帰るのだろう。
「ほらこっちこっち!」
聖地が近付くに連れて佳純のテンションがさらに上がっていく。
「それだけたくさん占っているのに、今日は何を占ってもらうんだよ?」
「えl?今更それ聞く?それとも言わせたいの?ひょっとして快斗って……どドSなの?」
えええーー!なにを占うか聞いただけでドSになっちゃったよ。佳純がドMなだけじゃねーか?
手のシワとシワを合わせて幸せ……じゃなくて、手と手を合わせてモジモジしている。
「もう……ばか。わ、私達の相性に決まってるじゃない」
「なんだそんな事か。陰キャの俺とこれだけ喋れるんだから抜群に相性はいいに決まってるだろ」
「え?もう……ばか」
はいデジャブです。ばかって続けて2回も言われるとそうなのかもって思えてくるからまじで怖い。
顔が真っ赤になるほど怒ってても、ばかなんて人に言っちゃいけないんだよー。みんなも気をつけようね。
友達との相性まで調べるってどんだけ俺に興味あるんだよ。そんなに陰キャって珍しいの?まさか人体実験でもされるんだろうか?へそのゴマ占いとかあったりして。
「ここだよん。雰囲気あるでしょ?」
「雰囲気あるもなにもこれはやばいだろ?」
連れて行かれたのは古ぼけたお化け屋敷……に見えるほど寂れた建物だった。
中に入ると数カ所のブースに分かれている。
やっぱりお化け屋敷だろこれ。
その中の一角で一番奥のブースがどうやらお勧めの占い師のようだ。
「奥に行く程人気なんだよ。まだお昼前でオープンしたばかりだからすぐみてもらえそうでラッキーだね。緊張してきちゃった。あ、呼ばれるみたい」
「わっ!!」
「ぎゃああああーーー!!ってなになになに?」
「緊張してる相手を驚かせたら人はどれくらいビックリするか……みたいな?ここお化け屋敷みたいに雰囲気あったからつい誘惑に負けて……悪い」
緊張ほぐそうと思っただけなのにさすがに悪ノリしすぎた。反省……。でも生で初めてぎゃあって声聞いた。アニメみたいで新鮮だ。
「いまじゃないよね?タイミング絶対おかしいよね?」
涙ぐみながらウルウルした瞳で訴えてくる。
当たり前だよな。すまん。
「フォッフォッフォ。仲が良さそうでええのう。見たところふたりの将来でも占うかえ?」
婆さん占い師に化けたバルタン星人が声をかけてくる。
「あ、すいませんでした。このバカが調子にのって。将来だと聞く勇気が…それにまだ付き合いが短いので相性だけお願いします」
本日3度目のバカ頂きました。自業自得です。
「フガー!」
おう?ビックリしたー。え?今の返事だったの?
バルタン星人ってよりフランケン?
フランケンが高そうな水晶に手をかざしている。
すごく失礼ですいません。いい結果お願いします。
佳純はすごく不安そうな表情で見守っている。
「相性は……文句なしじゃ。気付けば勝手に事は進んでいくじゃろ」
「良かったーー!ね〜快斗!」
そ、そんな無防備な笑顔を俺にむけるな。
3次元美少女のそんな表情に慣れてないんだから効果抜群すぎて鼻血出ちゃうだろ。
「……ただし!お主の周りには常に女の影がある。これは……複数じゃのう。羨ましいのう」
なんて予言だよ。3次元でパラダイスだと!?(言ってない)
しかも最後予言じゃなくて感想入っちゃってるからそれ。プロにはダメなやつだからそれ。
「隠し事はせず全ての自分をさらけ出すのじゃ。こやつは全て受け止めるだろう。負けてはいかんぞ?以上じゃ」
こうして俺達の相性診断は終わった。
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