エピローグ
第40話 答え合わせ
育枝の顔から涙が零れる。
だけど表情は笑顔でとても嬉しそうだった。
「うん、ありがとう、そらにぃ。とても嬉しいよ……」
「なら俺と付き合って――」
「ゴメンね。だけど私そらにぃとは今は付き合えないの」
「え?」
「なんで……?」
「そんなの決まってるじゃん。これが今の私の本当の気持ちだからだよ!」
満面の笑みでそう答える育枝の涙はいつしか止まっており、微笑んでいた。
恋の神様ナイス!
やっぱり一途な乙女が最後は勝つんだね!
育枝は心の中で高らかに笑っていた。
白雪七海今から最大に後悔しろ! ここからが私の本当の逆転劇だよ。
当然それは本人だけの秘密である。
全てが終わり、今は四人だけが残っている教室。
水巻はそんな教室で落ち込む空哲とシクシクと涙を流して机に伏せる七海から離すようにして育枝を廊下に呼ぶ。
「そんな……もうやだ……なにも信じられない……」
空哲は今まで育枝は自分が大好きなのだろうと思っていた。だけどその言葉が嘘だったと知り、大変大きなショックを受けていた。
それに早く家に帰りたくてもショックが大き過ぎて帰る気力すら出ない。
まぁ、内心絶対に成功すると思っていただけにそれを裏切られた時の絶望感は半端ない。それも大勢の前で告白して振られたのだ……。これで元気でいろと言う方が無理な話しである。
「……七海が死んでるわね」
「ですね!」
育枝は嬉しそうに廊下でそう答える。
水巻は全てを知っていた。白雪がどうして今まで素直になれなかったのかを。それは今まで自分を好きになって来た人間は沢山いても、自分が好きになった人間はただ一人だったからであると。そして白雪はある事を利用して空哲の気を引こうとした。それは【奇跡の空】が大好きだと言う事だ。別人扱いして嫉妬させれば空哲の好意がそこに生まれるのではないかと古典的な方法だがそれを使っていた。そう白雪はピュア過ぎて中々素直になれなかったのだ。そして白雪は水巻に協力をして欲しいと言ってきた。そこから水巻も偶然を装い空哲と友達になった。これは言わば空哲&育枝VS白雪&水巻の勝負でもあったのだ。残念ながら勝者は一人になってしまったが。
(あの七海が住原君に好きになってもらいたいと願った。そしてキャラを作りわざわざ半年以上かけて特別扱いをしてきた……そう全てはこの日の為に……だけど負けた)
水巻はたった一人の人間の心を掴む為に他の男子とは心を殺して壁を作った七海の作戦は恐ろしいと思っていた。全てはシナリオ通りと本人は言っていたが、そこまで好きならストレートに告白をしろと当時思った。だけどそれは恥ずかしいのと空哲が私を好きだと言う確信がないと嫌だと言って断った。そして七海なりに確信を得た今日告白したわけだが、最後の最後で負けた。
そこで一つどうしても気になる事があった。
勝者は本当に目の前にいる妹(いくえ)なのかと言う事だ。
「もし良かったら教えてくれないかしら?」
「何をですか?」
「なんで住原君を振ったの。育枝ちゃんも住原君の事を本当は大好きだったんでしょ? てか今も大好きなんじゃないの」
「あら、やっぱりわかります?」
「えぇ。だから教えて欲しいの。育枝ちゃんは何故住原君を振ったのかを」
「それは簡単です。大好きだからこそ振ったんですよ」
「どう言う意味かしら?」
「私は元々そらにぃの恋人をしていました。だけどそれは白雪七海がそらにぃを異性として意識する為。簡単に言うと興味を惹くのが目的だったんです。だから本物の恋人ではなかった。だけど私はそれでも良かった。だって偽物でも恋人としていられる時間は幸せだったから」
「道理で熱の差があったわけね」
「はい。だから私考えたんです。これを利用しようって。私の目的はそらにぃから異性として見てもらう事、そして白雪七海がそらにぃを好きではないと言った事を後悔させることでした」
「だったら可笑しいわよ」
育枝は落ち着いていたが、それだと辻褄が合わない。
後悔をさせるのであれば、むしろ付き合った方が育枝としてはお得だ。
「可笑しくないですよ」
「どうしてそう言いきれるの?」
「明日から何が始まると知っていますか?」
「なにってGW(ゴールデンウィーク)……ってまさか!?」
すると育枝はにっこりと笑う。
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後書き
ここからが私の本当の逆転劇……とは一体どうゆう意味なのでしょう。
明日その答えが全て明かされそうですね。
後本日は最後のネタバレ防止と言う意味でも感想は返信しないかもしれません。
悪意があるわけでないので予めご了承ください。
明日で完結(予定)です。勿論頂いた、感想は全部読ませて頂きます。
おまけ
育枝の攻撃はまだ終わっていない……?
確かに別れてすぐの復縁……はあまり聞かないような……?
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