第23話 癒しのマスコットキャラクター
前書き
何とか間に合いました!!
ギリギリセーフ!
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――そして。
「あら、来てくれたの。おはよう住原空哲」
次の日の朝、俺が教室に顔を出し自分の席に座ると同時に隣の席のプロ作家にして現役女子高生にして学校一の美少女白雪七海がほほ笑みながら挨拶をしてきた。
「おはよう」
「良かった、私心配した」
「ゴメン、心配かけて」
俺は白雪にまず謝った。心配をかけた事そして自分が昔『奇跡の空』という名前で投稿活動をしていた事を言えずにいる事を。
本当なら自分が【奇跡の空】だと名乗るべきなのだろう。
だけど名乗った所で信じて貰えるかすらわからない。なにより信じて貰えても今の俺にはもうそれを証明できるだけの力はない。
だったら白雪に余計な期待をさせるぐらいないら黙って置いた方がいいのかもしれない。
「それで顔色悪いけど、本当は体調どうなの?」
「うん、まぁ……本調子ではないかな」
「彼女と喧嘩しただけで、なんともまぁわかりやすいわね」
「そうかな?」
あれ、今ほんの一瞬白雪がイラッとしたような気がする。
ダメだ……頭が回っていないせいか見間違いかもしれない。
「えぇ、私がイライラするぐらいにね。それに私のイライラはあくまで個人的な物だけど、普段なら気付くことにも気が回らないようじゃそりゃ心配にもなるわよ」
「あはは……。そんなに気回ってない?」
見間違いじゃなかったのか。
ここはスキンシップを取ろう。
せっかくあの白雪が話しかけて来てくれたんだ。こんなわかりやすい進展イベントそう何度も起こるもんじゃない。
そう決まったらまずは会話を続けることを意識してと。
「知りたい?」
「うん」
「ここは何処?」
「教室」
「なら教室には誰がいる?」
前言撤回!!!!!
そうだった! ここは教室!
つまり同じクラスの生徒がある意味隔離されたこの空間に集まるわけで、当然この場には俺と白雪以外にも沢山の人間がいるわけで。
気付くのが遅れた。
「すみはら~くん。僕達とあそびぃ~ませんか~」
「ちょっとトイレ行こうぜ!」
俺今日死ぬの……勘弁してくれよ。
全く朝から皆元気いいよな。こっちはまだ復活すらしてないってのに。
おい野球部その金属バットを何に使うつもりだ。それにボクシング部その顔でトイレはないだろう。一体何を企んでいる?
まぁ聞かなくてもわかるので、ここでは聞かない事にする。
女子達はこれってもしかして浮気? と言ってキャーキャー言ってこの状況を楽しんでいるし残りの男子達の多くは殺気を隠し切れていない。
俺はボッーとする頭を動かして、打開策を考えていると白雪が大きなため息を吐く。
「こら貴方達止めなさい。別に私と住原空哲がいつ何処で何を話しても貴方達には関係ないでしょ?」
うそだろ……?
あの白雪が傍観者ではなく俺に助け船を出してくれるのか。
よくよく考えればクラスでこうして本以外の事で積極的に話しかけてくるのも初めてだが、一体今日の白雪はどうしたって言うんだ。いつもある棘が今日はない。
あぁ、幸せだ。
好きな人にこうして大切にしてもらえるって何とも幸せなんだ。
今日学校に来てよかった。
「べつに……ただちょっと……な?」
「あぁ。少し住原と……」
「ちょっとなによ?」
「いや……」
「私が誰とお話ししてもいいでしょ?」
「それはいいけど……よりにもよって住原ってのが」
「は? よりにもよって? 喧嘩売ってるの?」
その時白雪が席を立ちあがって俺の顔を抱きしめる。周りから見れば護っているように見えるのだが。
その胸の柔らかな感触に、頬が緩んでしまう。そして白雪の腕に力が入るたびに制服越しでも確かに伝わるこの感触に俺はドキドキしてしまった。あぁ今なら何をされても許してしまいそうなぐらい幸せだった。
「そんな事はないぞ? ただ住原がズルいって言うか……」
「そうだ。なんで住原だけ良い思いさせないといけないんだよ……」
「は?」
「ヒェッ……」
「…………」
「病人に対してよくそんな事言えるわね。どう見ても顔色が悪い。友達が心配になったから話しかけた。それでズルい? そう思うなら貴方達も病人なればいいじゃない。私は心配しないけどそしたら仲の良い女子が心配してくれるかもしれないわよ。違う?」
「……すみませんでした」
「悪かった」
白雪の形相を見た、男子二人そして俺に殺気を出していた男子が一斉に俺から視線を外し何処かに行ってしまった。
「ばか、ニヤニヤしないで。私まで恥ずかしくなるから」
白雪は俺に耳打ちをしてから席に戻っていく。
よく見るとさっきとは変わり、頬を赤く染めてモジモジしている。
可笑しいな……。
いつもなら「は? 何してるの?」とか「勘違いする余裕はあるみたいね」とか言われる所なんだが本当に今日の白雪は何かが可笑しいかった。
「護ってくれてありがとうな」
「う、うん」
赤面した白雪も新鮮でやっぱり可愛いな。
何かずっと見ていられる癒しのマスコットキャラクターみたいだ。
あぁ~心が浄化されていく。
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