第14話 好印象と育枝の作戦

前書き


 投稿10日目。フォロワーさんがかなり増えてる。

 ありがとうございます。


 ようやくPVが落ち着いて、ランキングも落ち着たって感じです。

 執筆のやる気意地の為、目標決めました。

 まず作品ファンの方からレビューを1件書いて頂く&ファンの方を1000人に増やすで行こうと思います。気長に応援よろしくお願いします。

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「うぅ~疲れたぁ。なにあの女、私がそらにぃに近づいただけであの視線ありえない!」


 俺達が使う教室とは別の棟に作られた図書室。

 図書室に行くと、いつも通り人はあまりいなかった。俺は早速図書委員の仕事の一つである返却された本を種類別に分類してそれを元合った場所に戻す仕事を始めた。

 ここの図書室は何を隠そう、とても広いのだ。進学校と言う事もあり、調べ物ならそこら辺の図書館に行くよりここに来た方が確実に調べる事が出来ると校内で言われるぐらいに調べ物には適している。特に試験前などは参考書目当てに沢山の生徒が来るので、その時図書委員は例年多忙になる。沢山の本を貸し出ししたり返却処理したり、整理したり、傷んでいる物は買い替えを検討したりと。


「それでこれからそらにぃとしてはどうしたい?」

「どうしたいって?」


 俺は手を動かしながら答える。

 幸い今日は量が少なくすぐに終わりそうなので急ぐ必要はないのだが、別に会話ぐらいなら何の支障もない。それに相手は育枝だ。同じ家に二人で住んでいる以上、今更隠し事や変に気を使う事もない。


「できれば白雪と仲良くなりたいとは思っている」

「だったら私がいないところで話しかけてみれば?」

「でも話題がないんだよな、話題が。それによくよく考えて見ると、俺から話しかけた事って一度もないし、いつも本の話ししかしてないから……」

「ふ~ん。本のお話しか。確かに白雪七海に自分から話しかけには行きにくいよね。私もここに来てすぐに噂聞いたけど男子の友達いないんだってね。何でも他人にそこまで興味がなくて後は本の事で忙しいとかで。もう少し異性とも仲良くしてくれたらそらにぃも話しかけに行きやすいのにね」


 育枝の言う通りだった。

 現に今日もクラスでも人気者の男子生徒が一人撃沈していた。

 授業中もどうやったらまずは白雪の興味を引けるか色々と考えていたが、結局これと言った妙案は出てこなかった。

 唯一効果が合ったとすれば、さっきの育枝との修羅場だ。

 昨日自分は異性として見ていないと宣告した相手にいきなり彼女が出来たという事実は流石の白雪でも無視できないらしい。と言う事から今有効な手段は育枝と言う存在を上手く扱っていくしかないわけだが……。


「まぁな。それより育枝?」

「もう少し白雪と仲良く――」

「絶対に無理! 私のそらにぃを嫌いな人と仲良くは出来ない!」

「嫌いって育枝……俺はそこまで言われてないぞ?」

「私より白雪七海の味方なの?」

「……違う。俺は育枝の味方だよ」

「一瞬迷ったね?」

「すみません」

「うん。別に良いよ。ただ困った顔見たかっただけだし」

「……おい!」

「ゴメン、ゴメン。てか声のトーンで冗談って気づいてよね、そらにぃ」


 俺としては白雪と育枝が仲良くしてくれた方が話題に困らないのだが、どうやら育枝は白雪七海を毛嫌いしているらしい。俺とは違い、とても友好的で周りに友達が多い育枝がここまで人を嫌うとは珍しい事もあるもんだ。


「それで具体的にはどうやって白雪七海の気を引くの? 多分私が彼女宣言したからあの様子からして今は嫌でも気にしていると思うけど」


 俺はその言葉に納得した。

 原稿に集中していた白雪があそこまで俺の彼女――義妹に自分からそれも読者でもファンでもない育枝に最初から敵意を向けるとは白雪の中で何かあるのだろう。


「となると、育枝の話題でいくか……」

「もしするなら気を付けたほうが良いと思うよ」

「なんで?」

「あの様子からして私嫌われていると思う。もしそらにぃが私の話しを内容を選ばず白雪七海にしたら逆に嫌われるかもしれない」


 これはいけるかも、と思ったが好きな人との話題作りって案外難しいもんだな。一番いいのは共通の友達を通して仲良くなるとかがいい事は知っているが残念ながら俺と白雪の間に共通の友達、知人、知り合いと言った人はいない。


「いっその事諦めて、私と本当の恋人にでもなる?」

 俺の周りをクルクルと周りながら育枝が上目遣いをしてくる。


「……いやそれはダメだろ?」

「え~別にいいじゃん」

「よくない」

「なんで?」

「それは兄妹だからだろ」

「じゃあ、昨日妹のおっぱいを触って赤面したそらにぃは変態でシスコンってこと?」


 俺は顔を真っ赤にして答える。

 今もあの柔らかい感触を指先が覚えているせいで、余計に恥ずかしくなってしまった。


「ち、違う!」

「なら友達に聞いてみようかな……?」

 そう言うとポケットからスマートフォンを取り出しチラッと俺をチラチラと見ながらいじり始めた。


「り、理由は育枝が可愛い女の子だからだ」

「ったく素直じゃないな~。最初からその言葉を待ってたんだよ?」

「ッ!?」

「なら私はそらにぃから見て可愛い彼女ってこと?」

「う、うん」


 義理とは言え、妹に何てことを言っているのだろう。

 周りから見たら。

 理由はどうあれ重度のシスコンみたいじゃないか……。



「本当に?」

「う、うん」

「ならキスして?」


 どう見ても育枝の顔が笑ってる。

 さては俺をからかって楽しんでるな……。


「そ、それは……」


 ぼそぼそ言う俺に。


「え? 聞こえない~。別に言葉じゃなくて今この場で実践でいいんだよ?」


 あ~もう全部育枝の冗談だって顔を見ればわかるのに上手く言葉が出てこない。

 義妹に言葉で振り回れている義兄ってマジで色々と情けない……。


 冗談でもそんな事をしたら俺の残りの高校生活が間違いなく終わる。

 何より一番傷つくのは俺じゃなくてきっと育枝だと思う。

 だから俺は誘惑に耐え、言葉を紡ぐ。


「俺は白雪が好きなんだ。そんな曖昧な気持ちでキスしたら育枝を傷つけてしまう。だからできない、ごめん」

「ふ~ん。そらにぃって一途なんだね。でも女の尻を追いかけてすぐに乗り換える男子に比べたらかなりの好印象だよ。だからいつかは私だけを……」

「育枝?」

「ううん、なんでもないよ」


 後ろで手を組んで、上目遣いのまま笑顔で言ってくる育枝に不覚にも少しドキッとしてしまった。


 その後、育枝も図書委員の仕事を手伝ってくれた。何でも真面目な話しがあるとかで早く二人きりになりたいらしい。なにより家に帰ってからではなく今すぐ話したいらしい。



 俺は受付に不在票を設置して育枝と一緒に図書員が裏で作業する時に使う部屋へと移動する。そのまま狭い作業部屋で俺と育枝は向かい合って座る。ここは意外に壁が厚くて外に声が漏れる事はない。確か作業の音が外に漏れて図書室の静かな雰囲気を壊さないようにと配慮して作られたからだったと思う。


「それで急にどうしたの?」

「正直に教えて。白雪七海の事どう思っているの?」


 育枝の表情はさっきとは大きく変わりとても真剣な表情だった。


「一言で言うなら好き。まずは仲良くなりたいと思っている」

「なる程。だったら私と本の話題で話しかけてみたら?」

「と、言うと?」

「妹……じゃなくてさっきみたいに彼女とは仲良くして欲しいとか後は本の感想を言うとかかな」

「でも彼女アピールはマズいと思うけど? それって逆に諦めろって言ってるものじゃないか?」

「ばか! 逆よ逆。いい? 昨日白雪七海も言っていたけど、唯一の男友達に彼女が突然出来たのよ。それも早くも一年生男子に三人から告白された、この私が告白したって事になってるのよ? そんなの無視できるわけないじゃない。唯一の異性の友達が取られたと思ってきっと今頃慌てているはずよ。そこを見逃してどうするのよ」


 なんだと?

 始業式終わりまでにもう三人だと!?

 俺は驚いてしまった。それは男避けが欲しいと思うのは当然だと思った。彼氏ができてしまえば少なくとも告白を全て阻止する事は出来なくてもする相手を減らすと言うメリットがある。流石育枝だ。恋愛に関しては最早最強な気がする。


「いい? 少なくとも今白雪七海の頭の中ではそらにぃを異性として認識しているのは間違いない。これはチャンスなんだよ、チャンス!」

「そうか!」

「だから敢えて私と白雪七海を比較するの。そこで全部はダメ! ほんの少しでいいから白雪七海の方が良い的な事を言うの。すると相手はどう思う?」

「もしかしたら、脈があるかも?」

「そう。そらにぃが白雪七海にされた事をそのままやり返すの! それで少しずつ白雪七海の心を掴んでいけば立場は逆転。最後はそらにぃが付き合うか付き合わないかを決めるってわけ。どうこの作戦?」

「さすが育枝、頭いいな!」


 俺の気持ちを育枝はしっかりと理解してくれている。少し育枝の復讐心が見え隠れするやり方ではあるが流石は自慢の妹と言えよう。

 だけど浮かれる俺に対して育枝はまだ真剣な表情のままだった。


「だけどこれには問題点が二つある」

「え? 問題点だと……この完璧な作戦に!?」

「一つ目は、この作戦にはリスクがあること。白雪七海にアピールしていく過程で露骨にそれをすると、私とは遊びで付き合っていて本命は白雪七海であると周りが認識してしまい、ただでさえ難攻不落の城が更に強化されてしまうこと。つまり周囲の目を気にして白雪七海がそらにぃに対して警戒心を強める可能性がある。そうなるとそらにぃじゃもうどうしようも出来なくなるしそうなると脈も完全になくなる。つまり正真正銘のカウンターによる脈なし状態になってしまうこと。だからするのは慎重にしないとダメな事」


 確かに。自分の彼女ではなく他の異性を褒め過ぎるのはあまり良くない。恋人より好きな異性って言われても言われた本人はかなり困ると思う。だってその時点で浮気性があるって自分で告白をしているようなものだ。故に途中でバレたら俺の評価は一気にガタ落ちする。

 だけど、リスクなしに仲良くなれるとは思っていない。


「そこは上手くやる。あの白雪を正面から落とそうなんて正直思っていない。普通のやり方じゃ振り向いてもくれないから」

「わかった。ならもう一つの問題点だけど――」

「うん」

「これは時間との問題。あまりダラダラしても白雪七海の本業が忙しくなって学校に来れなくなったら終わりと言う事。きっとその時には私の存在は今より強くないわ。長くてもGW(ゴールデンウィーク)と言う休み期間前までには決着をつけておきたいってこと。私と言う存在はあくまで一時的にこそ効果を最大に発揮できる言わば外部的要因の一つに過ぎない」


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