第13話 初恋相手VS彼女

前書き


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「おい、住原?」




「えっ? なに?」




 なんだろう、この感じ。嫌な予感しかないが。


 俺は仕方がなくここは隣の席で原稿とにらめっこをしている白雪に助けて貰おうとチラッと視線を送ってみたがやはり俺の相手をする余裕もないらしい。




「お前、彼女いたの?」




 クラスの男子の一人が俺に質問をしてきた。




「うん。昨日告白された」




「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」」



 クラスの皆が驚いた。

 そして。



「ほら、あっち見ろ。可愛い彼女が待ってるぞ」




 ――なるほど。


 姿が全く見えず声も聞こえなかったから全然気付かなかった。




 俺はこの時ようやくこの男子生徒が何を言いたいのかを理解した。


 クラスの前に来た可愛い一年生とは育枝の事だったと。流石自慢の妹だ。まさか付き合って二日目にして学校中に噂になりそうな雰囲気に俺はある意味感心していた。やはり可愛い、童顔、巨乳、低身長は最強だな。




 と思った瞬間――ゾクッ!?




 隣から信じられない程の無言の圧を感じてしまった。


 今ので絶対周囲の温度が二度は下がった。




「ヒェッ……」




 何と言うか例えるなら草原でライオンの群れに囲まれしまった草食動物のような気分だった。さっきまで集中していたはずの原稿から今は俺だけをしっかりと見ている白雪。可笑しい、何故か怒っているようにしか見えない。傍観者をきめていたはずなのに、今は目の前にいる獲物だけを見ている肉食動物のような目で俺を見ている。




 これは育枝の作戦通りなのか、それとも違う何かなのか……。


 そう思っていると。




「あっ、そらにぃお待たせ~。なら今から図書室に行って委員会の仕事しよ?」




 更にもう一つ別のライオンの群れが来てしまった。


 俺が育枝を見ると誰が見ても満面の笑みで可愛いんのだが、目だけが笑っていない。


 そして育枝の視線の先には白雪がいた。


 肉食動物が一匹の草食動物を取り合うかのようにバチバチと俺を挟んで目に見えない火花を飛ばし合っている。




「初めまして、育枝って言います。それで私に何か用ですか?」




「初めまして、白雪七海よ。特にないわよ」




 この場からさり気なく逃げるようにして静かに席から立ち上がった俺の腕に抱き着いてくる育枝。


 そして逃がさんと言わんばかりに力を入れてくる。


 周囲を見渡せば一部の男子による殺意のボルテージが一気にスパークしていることは最早語るまでもない。だが今は育枝がいる以上安全なのだが、育枝と別れた時が俺の命日なるような予感がしなくもないのも事実。だが今はそれどころではないのだ。




「そうですか。それにしてもそらにぃのクラスには口が悪い白雪七海がいたんだね」




 そう言って更に俺の腕を自分の身体の方へと引き寄せる育枝の胸の谷間にスッポリと腕がハマる。本来であればとても嬉しい事なのだが、今は全然嬉しくなかった。生きた心地がしないのだ。




「言いたい事はそれだけ? 貴女昨日も住原空哲と一緒に図書室にいたけどどういう関係なの?」


「恋人です。私の初恋の相手で初めての彼氏です」


「そう……。でも少なくとも今はでしょ?」


「それはどうゆう意味ですか?」




 なんか妙に育枝の奴、熱が入っているな。


 それに見る限りだが、白雪も。


 でも白雪の場合は熱と言うよりかはどちらかと言うと育枝に対する対抗心な気がしなくもないが。


 後さり気なく俺を巻き込んで二人でバチバチしないで欲しい。


 まだ昨日の今日で心はボロボロのまま。せめてバチバチするぐらいならもっと俺に優しい言葉を言って欲しかったりするのだが。




「さぁね。少しは自分で考えなさい、もう高校生でしょ?」




 それにしても珍しい事もあるもんだな。


 普段なら絶対に無視しそうな白雪が育枝の挑発に乗るなんて。




「わかりました。ではこれで失礼します」




 育枝はそのまま俺の腕をホールドしたまま図書室へと向かう。


 俺は移動途中すれ違う男子生徒の驚きの視線や羨ましそうな視線や軽蔑を含んだ視線の数々を受けながら育枝と一緒に移動した。




 途中すれ違った、ある先生からは「あら、若いっていいわね」と言われた。

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